実の姉妹じゃないことを突然明かされ困惑する姉妹百合

「実は貴方たち、本当の姉妹じゃないの」
 その日、両親から告げられた内容は本当に衝撃的だった。
「私たち夫婦はずっと子どもが出来なくて、それでも子どもを育てる夢を諦めきれなくて佳奈を養子に貰ったの。そのすぐ後に詩乃を妊娠してることが分かったわ」
 母は今まで黙っていた後ろめたさからか、とても申し訳なさそうだった。
「真実を告げるのがこんなに遅くなってごめんなさい。でも、これだけは分かってほしいのだけれど、佳奈も詩乃も、二人とも大切な私たちの娘だと思っているし、お父さんも私もそう接してきたつもりよ。血は繋がっていないかもしれないけど、私たちは家族だわ」
「うん。私もそこは疑ってないよ。お父さんもお母さんも、私の本当の両親だし、詩乃だって間違いなく私の妹だって断言できる。それだけの愛を受け取ってきたもの」
「佳奈!」
 母は感極まって姉を抱きしめる。口下手な父も顔を背けて眉間を押さえている。それは涙脆いくせに泣くのをいつも我慢する父のよくやる仕草だった。そのうち母は私も一緒に抱きしめて、「二人とも私の自慢の娘よ」と言いながら泣き始めてしまった。姉もつられて泣きだしたので、私は父に目配せしてティッシュを取ってもらおうとしたが、やはり父も涙を堪えているので、仕方なく姉の頭を撫でて落ち着くのを待つことにした。
 確かに血が繋がっていないことは衝撃だったし、それを知っても家族としての絆に一片の綻びも無いのは私にとっても感動的に思えた。しかし、このとき私の頭を占めていたのはそのどちらでも無かった。
 
 では何を考えていたか。それはずばり、姉とエッチするとき「お姉ちゃんなのに血の繋がった妹の指で感じちゃうの?」とかノリノリで言葉責めしてしまっていたという事実だった‼︎端的に言って恥ずかしい‼︎なんだよ!血が繋がってないのかよ‼︎じゃあ私の台詞クッソ滑稽じゃないか。てか私たち初エッチから既に近親の背徳をスパイスにしてたんだが!前提がひっくり返されてしまった今、一体どういうエッチすればいいのか全然見当つかないんだが‼︎
 そう、私は彼女を姉としてとても愛している。ただ、その愛し方は過分に性的なものであった。
 
「というわけで、あの、どうしよっか。お姉ちゃん」
「詩乃ちゃんあの感動のシーンでそんなこと考えてたの?詩乃ちゃんってやっぱ妙なところでアホっぽいよね」
 夜に二人きりになったときに恥を忍んで聞いてみれば、姉はちょっと呆れたような目で私を見てきたのだった。解せぬ。アンタもノリノリで感じてたじゃん。
「別にそんなに変わらないと思うけど。だって血は繋がってないけど、私と詩乃が姉妹であることに変わりはないし。お母さんもそう言ってたじゃん」
「それはそうだけど…」
「というより、私は詩乃が別れたがったらどうしようかなってちょっと心配だったんだけど…」
「私が?なんで?」
「いや、もしかしたら詩乃は血の繋がった姉にしか欲情出来ない特殊性癖者の可能性が…」
「いやそんなこと無いから。私が好きになったのは、佳奈お姉ちゃん、貴方だからなの。他の人だったら、家族のハードルを超えてアタックなんてしなかったから」
「詩乃…」
 いや、なんか感動した空気出してるけど、貴方自分が性的に好かれてること私が自覚するより早く見抜いて、めちゃくちゃ煽ってきましたよね?私その所為で寝不足になってニキビ出来たのめっちゃ落ち込んだんだが?自覚してからも同性の、しかも実の姉が恋愛対象と知ってめちゃくちゃ葛藤したんだが?まあ結局姉の誘惑にあっさり負けたんですけど。
「えーじゃあ折角だし、赤の他人エッチする?」
 姉は可愛らしい上目遣いでそう言ってきた。ちなみに私の上目遣い好き性癖も当然、姉の上目遣いを何度も食らううちに植え付けられたものであった。
「何?赤の他人エッチって?可愛く言っても意味不明なんだけど」
「だから、私たちは本当は姉妹じゃない?だけど今日は他人のつもりでエッチするの。学校の先輩後輩とか、出会い系で見つけた相手とか。なんでもいいよ、詩乃ちゃんが好きなやつで。ガールミーツガールな、普通の恋愛イメージプレイだよ!」
 出会い系は普通の恋愛ではない。
「それとも、詩乃ちゃんがお姉ちゃんやってみる?詩乃お姉ちゃん、お姉ちゃんに欲情しちゃういけない妹にお仕置きして?なんて」
 アリかナシかで言えば、アリ寄りのアリだった。だがここで素直に認めては妹が廃る。妹より妹が上手い姉などあってはならないのだ。
「なにそれ。お姉ちゃん妹歴無いのに急に妹は無理があるでしょ。見てるこっちが恥ずかしいわ」
「いや絶対刺さってたでしょ今のは。めっちゃ顔にやけてるじゃん」
「うるさい!お姉ちゃんがやったらなんでも可愛くなるに決まってるでしょ!」
 私はチョロかった。
 私たち姉妹の夜は更けていく。今日も長い夜になるだろう。それは血が繋がっていようがいまいが関係無かった。ただ昨日と変わらない私たちがいる、それだけのことだった。
 
「ところで、私たちが付き合ってるの、お父さんとお母さんにはいつ言おっか?」
「いや、多分お母さんには薄々バレてるよ。詩乃ちゃん隠すの下手じゃん」
「え?」

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