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お化けのピアニスト〜陰陽師も大変だ〜

「誰もいない音楽室からピアノの音が聞こえるんです…」

まぁ害はないですよとなだめつつも、生徒が気持ち悪がっていると言うので、しぶしぶ教育が絡んでいるし超破格の安値で引き受けることになった。

音楽室のある3階に上がると、世にも奇妙な物語のテーマ?が聞こえてきた。

そのチョイス合ってる?

逆に変やって。

「鍵は閉めてあるんですよ」

よっぽどお化けみたいに色白黒髪の先生は必要以上に意味かしげにそう言う。(意味かしげとはオリジナルの言葉ではあるが)

先生が音楽室の鍵を開けてガラガラと開けるとお化けがくっきりといた。

いわゆるお化け。

マリオのテレサみたいな、ねないこだれだの絵本みたいな、ああいうお化け。

両手をうらめしや~ってしてて、そのうらめしやの手で鍵盤を叩いている。

あのデフォルトのお化けは元はピアニストのお化けがモデルなのではとそこで感じてしまうほど、うらめしやの両手とピアノ演奏のシンクロニシティ、ピースがガッチリハマった感じ、気持ちよかった。

「まぁ、害はないですよ」

「先生には見えてるんですか?」

先生?あー俺のことかと、先生に先生と言われる不思議を体感しながら、世にも奇妙なの旋律に…あ、え、旋律と戦慄が掛かってたりする?お化けがピアノを弾くことの戦慄と旋律が掛かってたりするのか?まぁたぶん先生に先生と言われたことで言葉に敏感になっているだけなので気を取り直して、

「害はないので、あといつもこの曲なんですか?」

「はい、いつもこの曲です、それが害です」

「あぁ、(先に言ってくださいよ)」

先に言ってくださいよ、は声には出さず、お化けの肩?をポンポンと叩いて、

「陰陽師の者ですけど、この曲がちょっと気持ち悪いってことなので、ショパンとかベートーヴェンとか?僕はちょっと詳しくないのであれですけど、クラシック的な方でお願いできたらと…どうでしょうか?」

お化けはこくりと頷いて、ショパンかベートーヴェンかあたりのに変更してくれた。

「先生、ありがとうございます」

「いえいえ、ただこれあの、お化けがいる限りピアノは使えないですけど」

「あ、しばらくピアノを使う生徒も行事もないのでまぁ、いいですよ。だって追い払うってなったら追加料金とか掛かりますでしょう?」

「いえ、追い払うまでのつもりで料金をいただいてますので…」

「あ、じゃあ、いくらか戻ってくる感じですかね?」

「いえ、あのー、教育が絡んでるご依頼でしたので、そもそも破格のお値段でご提案させてもらったので、お戻しするってなると厳しいですね…」

「あー、じゃあもう追い払ってもらった方が得ってことですかね?」

「得ぅ…まぁ、そうなりますねお値段は変わらないんで」

「そっかそっか……」

「…」

「…」

「…」

「…あのこれって、後日のお返事でも大丈夫ですか?」

「いえ、そうですね、また出張となりますと、その分のご料金が掛かっ」

「そうですよねそうですよねそうですよねぇ、はいはいはい、いやあのぉ、ドビュッシーが別にずっと流れててもいいかなーって感じだったんですけど、はい、いま決めちゃった方がいい感じですもん…ね?」

「はい、料金かわらずで追い払うとなると、そうですね」

「あ、じゃあお願いします」

「はい、えぇええい!!」

パリーン!

お化けが校庭側の窓を突き破って逃げていった。

ドビュッシーが止まる。

初めての完全な静寂。

「は!?窓を突き破るとか聞いてないんですけど!?」

「え、でも、追い払えましたので…」

「弁償してもらいますから!」

「そんなぁ」

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