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ペパーミントキャンディー


#映画感想文

非常に存在感のある映画である。構成も素晴らしい。ある男の20年間をシーンごとに時系列を遡りながら展開していくのだが、シーンとシーンの間に必ず、電車の車窓から見える風景を逆再生した映像を挟んでいる。田舎のあまり人通りのない景色を観せて行くのでそれが逆再生だと最初わからなかった。走行している車が逆走していたり、散っていくはずの葉が木の枝に吸い込まれるようにくっつくのを観て、逆再生だとわかる。
ストーリーの内容は思わずこちらも鬱になりそうなほど凄惨である。
主人公の男は初登場時からすでに人生のどん底まで落ちぶれていて頭のネジが外れてしまっているのだが、彼が何故そうなるに至ったかをどんどん過去に遡るにしたがって彼の心の奥底までもが明らかにされていく。

この映画の最後のシーンに関して、ネタバレとならないよう詳細は避けるが、私が思い出したのはカナダ出身のシンガーソングライター、アラニス・モリセットのヒット曲『Ironic』である。



遅刻してる時に限って渋滞に巻き込まれるし
一服しようと思ったら「禁煙」って出ているの
1本で構わないから「ナイフ」が欲しいと思ってるの「スプーン」ばっかり山ほどあって
理想の相手に出会っても
そいつにはもう美人の妻がいるんだ
それって皮肉なことじゃない?
みんなだってそう思うでしょ?


人生は選択の連続だが選択の先の結果については常に確証されていない。自分で予測がつくこともあるが勘違いや思い違いである事もよくある。また周囲がアドバイスをしてくれることもあるが的外れだったり責任は自分が取らなければいけない。
映画では光州事件が扱われているが、この様に選択の余地がなく避けられない出来事も発生する。受け入れられない事も吞み込んで、一生背負って生きていかなければいけない事もあるのだ。

なるべく選択を誤らないように、また選択した事を他人のせいにしないように生きていきたいものである。


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