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先行公開!『新しい投手指導の教科書』の「はじめに」が全文読める!

令和に入り、育成年代の肩ヒジを守るために投球数制限が導入されました。
高校野球は「1週間500球以内」、小学生や中学生は地区によって違いはあるが「1日100球以内」と定められています。

しかし、現場の指導者からは、「複数の投手を育てるのは簡単ではない」「エースが下がった瞬間から、試合が壊れてしまう」という声が聞こえてくる。 複数の好投手がいるのは、もともと能力の高い 選手がいる学校(チーム)だけであるのが現状です。

どうすれば、複数投手を育成できるのか。

本書では、育成・指導のスペシャリスト・川村卓が、科学的なコーチング、年代にあわせた指導論を育成のポイントから練習方法まで、さまざまな角度で解説していきます。

今回は発売に先立って、本書の「はじめに」を公開!著者である川村卓さんからのメッセージ、ぜひお読みください!!

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■商品情報

書名:新しい投手指導の教科書 
           複数投手を育成し継投で勝つ新時代の「投手育成術」
著者:川村卓(かわむら・たかし)
発売日:2022年4月20日
ISBN:978-4-86255-629-5
判型・ページ数:A5判・272P
定価:1,980円(税込)


■はじめに

今後のチーム作りに必要な「野手兼投手」の育成

みなさん、こんにちは。筑波大学体育系で教員をしている川村卓です。

野球部の監督として日本一を目指すとともに、筑波大学体育系准教授としてコーチング学や野球方法論の研究に取り組んでいます。大学院では「野球コーチング論研究室」を受け持ち、学生野球の指導者から元プロ野球選手まで幅広い方々と指導法について意見を交わしています。

 じつは、このあいさつで入るのは2019年7月発売の『新しい少年野球の教科書 科学的コーチングで身につく野球技術』に次いで2度目になりますが、覚えている方はいらっしゃるでしょうか。おかげさまで、前著は少年野球の指導者や保護者の方々から好評をいただき、実際に現場の指導にも活用されていると聞きます。

 「子どもと大人の体は違う」「発育発達に合わせた体系的な指導方法が必要」をメインテーマに、投手・守備・打撃のコーチング法をご紹介いたしました。今回の書籍は、それに次ぐ第二弾『新しい投手指導の教科書 これからの野球に必要な「野手兼投手」の育成術』となります。何が新しいかと言うと……、サブタイトルにもある通り、特に「野手兼投手の育成」に焦点を当てているところです。チームにエース級の投手が複数いるのが理想ですが、野球人口が減ってきている今、現実的にはなかなか難しいことだと思います。どの世代にも共通して、エースの負担を減らしていくために、1イニングでも抑えてくれる「野手兼投手の育成」がこれからの野球に求められていくと考えています。

 私は、2019年4月に日本高野連が発足した『投手の障害予防に関する有識者会議』のメンバーのひとりとして、投手の体を守るための議論を進めてきました。2020年のセンバツから「1週間500球以内」の投球数制限が、高野連として初めて設けられ、大きな話題を呼びました。また、小学生のカテゴリーでは、全日本軟式野球連盟が2019年2月に「1日70球以内」の投球数制限を発表しています。中学生の軟式野球、硬式野球も、それぞれの連盟で投球数制限が定められ、エースひとりで何試合も投げ抜くことは非現実的な話になっています。

 正直なところ、「どのくらいの球数を投げたら、ヒジや肩に悪影響を及ぼす」という明確な数字を導き出すのは難しいですが、投げ過ぎることが投球障害のリスク増につながることは間違いありません。試合で登板できる投手が増えれば増えるほど、一人ひとりの負担が軽減され、投球障害のリスクを下げられると考えていいでしょう。

「ボールを投げる」と考えたとき、野球には「投球」(ピッチング)と「送球」(スローイング)の2種類があります。簡単に定義づけをすると、投手が打者に投げるのが「投球」であり、野手が味方に向かって投げるのが「送球」。投手が自らゴロをさばいて、一塁手にボールを投げるのは「送球」となるため、投手だけは「投球」と「送球」の両方をこなすことになります。

細かいことですが、投手が捕手にワンバウンドのボールなどを投げ、走者が進塁したときには「暴投」が記録されます。一方で、野手が各塁への送球をミスして、走者( もしくは打者走者)が進塁したときには「悪送球」が記録されます( 記録上は失策)。たまに混同してしまっている方がいますが、こうした野球用語を見ても、「投球」と「送球」を区別して考えていることがわかると思います。

 では、「投球」と「送球」の技術的な違いはどこにあるのでしょうか?

 この違いを知ることが、野手兼投手を育てていく大きなポイントになっていきます。同じようにボールを投げているように見えるかもしれませんが、求められる技術や体の動きには大きな違いがあります。野手が野手のままマウンドに上がってしまうと、打者にとっては打ちやすいボールに見えてしまうでしょう。あくまでも野手がメインなので、完全に投手の投げ方に寄せるのは難しいですが、少しでも投手の動きに近づけていくことがチームを助ける活躍につながっていくはずです。ここが本書の肝となるところです。

 第1章で、「投球」と「送球」の違いを細かく解説し、第2章以降で、一流投手が実践しているメカニズム、投手に近づくための考え方やドリルなどを、写真や動画とともに紹介しています。本格的な投手育成にも、役立つ情報を掲載しています。さらに、巻頭インタビューとして筑波大大学院OBでもあり、元福岡ソフトバンクホークス監督の工藤公康さんに投手育成のポイントをお話しいただきました。最高峰のプロ野球を経験し、科学的なコーチングも勉強されている工藤さんならではの視点が詰まっています。

 投手を経験することは、カウントや状況による投手心理を自ら体感できるだけでなく、周りの仲間に対する思いやりも生まれてくるものです。「こんな声をかけてくれて、気持ちが楽になった」と感じる経験をすれば、自分が野手に回ったときにどんなタイミングで声をかければいいかもわかってくるはずです。野手兼投手を増やしていくことは、選手の視野を広げ、結果的にチーム力の向上にもつながっていくと考えています。ぜひ、現場の指導に活用いただければ幸いです。

筑波大体育系准教授 川村卓

■著者プロフィール

川村 卓 かわむら・たかし

筑波大学体育系准教授、筑波大学硬式野球部監督。
1970年、北海道江別市生まれ。札幌開成高校の主将、外野手として甲子園に出場経験を持つ。筑波大大学院体育研究科修了後、北海道で高校教員として4年半勤務。2000年から筑波大体育科学系講師を務め、その後、同硬式野球部監督に就任する。野球方法論、コーチング学が専門で、大学院では野球コーチング論研究室を開設している。動作解析、一流選手の特徴など、科学的なアプローチにより分析するスポーツ科学の第一人者であり、年代別の指導方法の確立に取り組む。2019年4月に日本高野連が発足した『投手の障害予防に関する有識者会議』メンバー。野球コーチング論研究室では、工藤公康氏、吉井理人氏、仁志敏久氏など多くの元プロ野球選手が学んでいる。

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