夫婦のかたち
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結婚して26年半過ぎて、初めての出来事があった。
昨日夫が
「君は明日休みか?
ケーキ屋に連れて行く」
と、私が仕事に行く前にぶっきらぼうに言った。
マジで?!
本当に?
…と思いながら…
有休を取っていた今日の午後、本当に連れて行ってくれた😶
え?歩いて行くの?
と速足のうちの人に遅れない様に後ろを付いて歩いた先は、ごく近所だった。
いつの間にこんな店が出来ていたのか知らなかった!
ケーキ屋と言っていたけれど、着いてみたらカフェだった☕️
うちの人とカフェなんて、初めてだ😶
記憶にあるのは…
初めて会った日…というのは、お見合いだったんだけど。
海辺にあるリゾートホテルの喫茶店で注文する様に勧められ、注文したショートケーキが喉を通らない程緊張した覚えがあるきり。
家では話しかけても無視し、ほぼ全く会話をしてくれない日も多い。
そんな夫と二人でカフェなんか大丈夫か?!と…
結婚して26年以上経つのに少し緊張したけど。
かかっている音楽も雰囲気も心地良い店でリラックス。
「LINEに送った、誰か知らない人が撮った息子の写真見た?
知らないところで頑張ってるんだね」
と話を振りながら。
(息子は陸上選手。
先日、駅伝でアンカー優勝した。
ゴールテープを切る写真を誰か撮っていないかとネット検索していたら…
あちらこちらで選手を撮影している、ある方のSNS記事に何度も息子が写っているのを発見した)
春からの新しい仕事について話をする。
(4月から転職することになった。
特殊学級の子供達をサポートする仕事に)
「何があるか分からんで」
と、珍しく思い出話をしてくれた。
「幼稚園の時、動物園に行ったらゴリラがウンチを投げて。
斜め前にいた女の子に命中したよ。
オレ、もう少しで危ないところだった」
と、人の不幸を喜ぶ様子に、相変わらずだと思いながら…
その時を思い出したのかおかしそうに笑う笑顔が珍しくて、私も笑った。
頼んだバナナタルトのバナナには、カラメルがかかっていた。
飲み物は私はチャイを頼んだが、珈琲を頼んだうちの人によると、
馴染みの無い味の珈琲だったらしい。
帰り道の空を澄んだ気持ちで見上げながら
「初めてだったね、結婚してカフェに行くの」
私がそう話しかけると横で頷いた。
夜は気分良く、晩ご飯を作りながら…
今日の午前中、音楽を学びに行っていた、声楽家の先生の家で歌った自分の声の録音を聴いていると…
「君が歌ってるのか?
…恥ずかしいと思わんのか?」
と、いかにもみっとも無いと言いたげな、しかめっ面で言い二階へ去って行った。
…数日前に読んだ99才の方の新聞投稿を思い出した。
〈農家にくわの持ち方も知らないまま嫁ぎ。
面識の無い夫はマニラへ出稼ぎに。
戦時中で夫はそのまま行方不明に。
農業に精を出し、一段落して実家に戻っている時期に夫が突然迎えに来た。
12キロの峠道を付いて歩いた帰り道、急に立ち止まった夫が野花を一輪手折り、髪に押してくれた。
以後70年、2人で休みなく働いた〉
という様な話。
普段は得に仲良くも無いけれど、こんなささやかな思い出が、ぽつりとあるのを支えに、たぶんこれからも生活は続いていく。
文章が誰かの心に響いて、それが対価になって、それを元手にさらに経験を積んで文章など色々な表現で還元出来たらと思い続けています。 サポートお待ちしております♪