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長男と次男 19

補欠合格発表

いよいよ予行練習の日。
「今の僕なら行ける気がする」と言った長男。
最寄り駅まで車で長男を送ることになった。
車から降りる時はいつものように静かに
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
駅の階段に向かう長男の姿。
何年振りだろう、この時間に見送るのは。

11時、補欠合格発表のサイトに向かう。
昨年は補欠から合格者は出なかった。
緊張する。
サイトにアクセス……

「合格」

ああ・・・、本当に良かった。
長男が「行きたい!」と自ら言い、
行きたいがゆえに緊張しながら臨んだ入試。
指1本引っ掛かっていた長男は
なんとか合格を掴み取ることができた。

長男は再び帰宅の電車の中で「合格」を知る。
「!?!?、!!!!!」
LINEの文字には、彼の感情が爆発。
帰宅後、信じられない気持ちだった長男と
念のため一緒に合格発表サイトを確認する。
やっとしみじみ、
「受かったんだ・・・」
いつもギリギリ、ヒリヒリさせる長男。
卒業式前日に進路も決定したのだった。


テンション下降の真相

年明け以降、テンションが下がっていた次男。
実は私は長男に、少し相談をしていた。
長男も次男の下降気味のメンタルに気付いていた。

私は、2回不登校時期があったお兄ちゃんが
高校卒業も決まったことに対し、
次男も勇気をもらえるのではないかと思っていた。
が、長男からするとそれは甘い考えだったようだ。

僕が卒業して、合格して、
それを目の当たりにした次男の勇気が出るわけなんてない。
これまでは「お兄ちゃんも同じ」と思ってたのが
兄だけが前に進んでしまったら、
「次は自分の番か!」
って、プレッシャー掛かるに決まってる。
2回も不登校でこじらせていた兄が前進していくんだから、
そりゃ焦るしかないでしょ。

長男は次男の感情を一番わかっていた

・・・衝撃だった。
親としては、元不登校の人がしっかり成長し
生活していると知ると安心できる場合が多いと思う。

だから、私は勝手に子供達も
そういう感覚になるもんだとばかり思い込んでいた。
でもそれはある意味、親の勝手な思い込み。
子供にとっては真逆になる可能性が高いのだ。

あのね。
結構しんどい人生だった人が
それを跳ね返して、大学にも行って・・・ってのは
自分自身と比較した時、かなりプレッシャーよ。
僕にとってはその対象が、実は母さんだった。
でも僕の場合は、言うても親だから、まだ距離がある。
次男からすればその対象が兄となったら、そりゃキツイよ。

私は長男の気持ちもわかっていなかった…

・・・二重に衝撃だった。
長男について、私が一番の理解者だと自負していたのに
私がまさかプレッシャーになっていたとは。
確かに、虚弱体質、母子家庭、受験期に家族が病気、
他にももりもりにいろいろあった中で
理系に進み、大学院まで出てしまった私。
・・・そうだったんだ。
母の妙なハングリー精神みたいなものが
子供にとっては間接的に重荷になることもある
んだ。
ショック…というのとは別の感情。
人間というものの複雑さを、私は冷静に感じていた。
そしてやはり
親は子供のすべてを理解していると思ってはならない
と、改めて強く感じた。

一応補足すると、長男曰く、
だからって母が味方じゃないとは
全く思っていないらしい。
(そりゃそうよ、そんなん言われたら倒れる💦)

ただ、これがきっかけで、受験が終わった長男に
次男のことを相談することが増えた。
次男のことを一番気に掛けているのは
恐らく長男だったのだと思う。

合格が決まった日、
「お兄ちゃんすごいね。ほんとに頑張ったね」
と言う次男を、長男がぎゅーっと抱き締めて

「次男がいてくれたからお兄ちゃん頑張れた。
いっぱい応援してくれたもんな」

と伝えていた。

私は気付かないフリをして
こっそりふたりのやりとりを聞いていた。
私へのご褒美として・・・


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