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ウィリアム・ワイザー「祝祭と狂乱の日々 1920年代パリ」

かつて私にも美術鑑賞という趣味があり、大学時代からちょくちょく美術展に通ってました。

なんとなく見てみたいという好奇心と、美術展に行く行為自体に対する好事家的な喜びで通っていた気がします。
分からない作品もたくさんありましたが、いまだによく分からないという作品に出くわします。
美術館という建物も好きだったように思います。

それで、きちんと美術について縦横(歴史とグローバルな見識)を学びたいと思っていました。

そのきっかけになったのが、1988年の名古屋市美術館の開館記念展「20世紀絵画の展開」を観覧したことです。

20世紀に限っていたのですが、東西のさまざまな絵画作品が網羅されていました。図録を購入し、しっかり読み込みました。

この展覧会での出典作品はやはり国内からのものが多かったこともあり、図録を見ているうちに

「日本中の美術館でこれらの作品をもう一度見てみたい」

と思いました。

そんなことできるわけがないと思っていましたが、その後、仕事の関係で全国を飛び回ることになったことをさいわいに、出張の際は時間を作り、美術館を見て回りました。

見たいと考えていた作品はもちろんのこと、展示しているたくさんの著名な作品もしっかり見ることができました。

札幌では三岸好太郎美術館「飛ぶ蝶」を、倉敷では大原美術館で「釈迦十大弟子」を、宮城県美術館では佐藤忠良「帽子・夏」とカンディンスキーのコレクション、岩手県立美術館では舟越保武の「ダミアン神父」(長崎市で舟越の「26聖人殉教者像」を)、神奈川県立近代美術館では松本竣介の「立てる像」を……キリがないです。

ついでと言ってはなんですが、イサム・ノグチ「ブラック・スライド・マントラ」を札幌大通り公園で見てきました、というか滑ってきました(笑)

前置きが長すぎました。
言いたいのはあるひとつの物事が行動を大きく広げていくということです。

自分の中に、自分の興味や関心に対する扉みたいなものがあって、そこを開くと一気に自分が見たい、知りたい、やってみたい、と思う世界が広がるようです。

それは出会いやイベント参加などで経験することが多いと思いますが、本もその中の一つだと思います。
というより、最も大きな効果を見せるものかもしれないですね。

この作品「祝祭と狂乱の日々 1920年代パリ」は1920年代というパリが最高に輝いていた時代のドキュメンタリーというより、スケッチです。

その頃のパリには芸術家、小説家、思想家、科学者やその卵たちが濃密に集まっていました。

その人たちがその後の各界で素晴らしい(恐るべき)活躍をしていきますので、それを知っている現代の我々からすると、その人たちもなんだか色々やっていたんだなあと少し感慨深いです。

意外な人同士のつながりが分かったり、ピークを過ぎた人の没落して行く様子も知り、人間ドラマを楽しむこともできました。

ヘミングウェイは元気だし、フィッツジェラルドは豪華、サティの最期は残念でしたね……。

そして、この本で興味を抱いた人々を、この後僕は一生をかけて追いかけていくことになりました。
僕の人生の片面における興味関心の方向性を示してくれた作品だとも言えます。

またおさらいで読んでみたいですね。

ということで、本日はパリ祭、です。

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