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協働するなら論理脳を働かせよう

一言でいうと

「損をしたくない」という思いはけっこう強い

活用シーン

人間の本性

内容

公共財供給ゲームというのがあるそうです。
何人かでテーブルにつき、それぞれ数ドルずつ受け取る。
そして共同体の壺にいくらでも好きなだけお金を入れてよいと言われる。
その後、壺のお金は実験者が二倍にしてそれを全員で等分する。

具体的に説明するとこんな感じ。
人が10人いて、みんなが2ドルもらったとすると、全員が全額壺に入れれば壺の中身は20ドルとなります。それが二倍になって40ドル。これを10人で分かち合うので、みんなが4ドルずつもらえる。

これを見ると、みんなが全額壺に入れると予想されそうだが、現実は違う。このゲームは誰か一人が所持金のごく一部しか壺に入れなければ(あるいはまったく壺にお金を入れなければ)その人はほかの人より儲かる。

たとえば、一人を除く全員が2ドル入れたとすると、壺の中身は18ドルになる。倍になって36ドル。すると、全員に3.6ドルずつ返ってくる。(壺に1ドルも入れていない人にも)

この実験を始めると、誰が正直に入れているかみんなに見えるからしばらくは壺のお金はどんどん増えていく。しかしある時点まで来ると今度は減り始める。試しに入れるお金を減らす人が出てくるからだ。するとみんなカモにされるのは嫌だから、その行動がみんなに広まっていき、しまいにはシステムが完全に機能しなくなる。

『思考のトラップ 脳があなたをダマす48のやり方』
デイヴィッド・マクレイニー (著),

この実験、何が言いたいかというと「全員の協力で成り立つ公共財供給ゲームは、一人がずるを始めるとすべてが崩れ始める」というところにポイントがあるように思います。

人間、お互い協力しあって何かを成し遂げようという思いは誰しも少なからずあると思います。しかし、その中で誰かがズルを働くと、そのずるに加担したくないとかいう思いもあるのでしょうが、そもそも「損をしたくない」という、比較的脳の原始的な部分(爬虫類脳)が反応を始めるようです。

この「損をする」恐怖との戦いというのはもはや理論ではなくて、本能の領域です。投資の世界で出てくる心理学用語の1つに、プロスペクト理論というものがあります。プロスペクト理論をすごーーーくかみ砕いた話をすると、「人は損をするときに過剰に反応しやすい」という行動パターンがあります。

それを体感できる問題があります。次の二つの問題を考えてください。

以下のどちらのくじを買いますか?
A:100%の確率で90万円当たるくじ
B:90%の確率で100万円当たるくじ
以下のどちらの可能性を選びますか?
C:100%の確率で90万円失う
D:90%の確率で100万円失う

前の問いだと、たぶんAを選び、あとの問いはDを選んだ人が多いのではないでしょうか?しかし実際のところ、前の問いの期待値はA、Bともに90万円。後の問いのリスクはC、Dともにマイナス90万円。論理的に考えれば、どちらも同じなのです。

AとBも、CとDも確率上は同じことなのですが、もらえるほうは確実性を重視し、失う方はわずか(たった10%)であったとしても回避する可能性にかけようとします。


ここから考えられることは、人は損をしないためなら、けっこうな犠牲を払うし、非合理的な選択をすることもある、という事です。損をしないために犠牲を払うっていうのも変な感じですけどね(苦笑)

公共財供給ゲームの話に戻ると、誰かが流れを変えなければ、この仕組みがうまくいかないのがわかっていても、変えられないことが多い。それはこの「本能の脳」の判断にほとんどの人が従うからです。


ただ、それも全く抗えないわけではありません。この「損をしたくない」と激しく主張する脳を黙らせることもできないでもありません。それは、一歩立ちどまって、論理的に考える。自分の頭で考える、という事を癖づけると可能になることがあるわけです。

だれかが「このままではいけない」という事に気付き、模範を示すことで、そこにフォロワーがついてきたりもするでしょう。そのはじめの1人にあなたがなることができれば、世の中は少し変わっていくのかもしれません。

ええ、他人事じゃなくて、私も努力したいと思います。(半分ヤケ)



ワタシ、こんな本書いてる人です(^^)/

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