見出し画像

会社で組織をつくるのは何のため?

 私は小さな会社を親から引き継いだ後継者。一応、経営者という体で仕事をしています。
 さて、ビジネスの世界では一人でやってるフリーランサーみたいな人って、会社の社長という立場の人と比べるとちょっと下に見られがちな気がします。まあ確かに事業の継続性を考えると、従業員を雇って仕組み化したほうが安定しそうです。そして、事業の規模も大きくできるので効率も上がりそう。
 けど一方で、社員とリーダーの関係って本当に難しい。よくあるのはリーダーが変わると社員が一斉退職する、なんて話も当たり前のように起こります。継続性のために人をいれるのに、継続性が担保されない。なんじゃそれ?って感じですね。

 じゃあ、いったい、会社として組織をつくるのは何のためなんでしょうか。自分が迷子になりそうなので、思考を文章にしてみたいと思います。参考文献はほぼドラッカーです。


社員が一斉に退職!? ~私の経験~

組織を「維持」することの難しさ

 今から10年ほど前、私が親の会社を継いで間もないころ、社員が一斉に退職した、という事件が起こりました。私にとってはまさに青天の霹靂。理由を尋ねると、「仕事が忙しい」とか「給与が安い」とかいうわけです。確かに、残業をしてました。ただ、それを改善しようと、一人一人ヒアリングして、改善案を考えようといっても全く乗り気ではない様子。私も何をどうやっていいかわからず、諦めていたように思います。
 その後いろいろと調べてみると、世間の社員の退職理由はホンネレベルでは「上司などとの人間関係の問題」が圧倒的なんだとか。振り返ってみると、私は社員とはお金と契約でつながった関係としか見てませんでした。そりゃ、向こうも私や会社に対して、そんな思いになりますよね。
 結果として、「(こんなに頑張っているのに)評価されていない」と感じて、辞めていったんだろうな、と推察しています。

あの時の悪夢再び

 そんな経験を糧に、社員との人としてのつながりを持つよう気を付けてきたつもりではあります。ただ、気持ちは色んなところに行きます。今後の会社の事や、今の自分の事を考えていると、気持ちがさまようこともあります。それでもあの大失態から10年、みんな同じメンバーで頑張ってきてくれました。ただ、ある経営方針の転換で、また一斉退職の話が浮上してきました。
 今回は以前とは少し違う感じではあります。私の打ち出した経営方針の転換で、彼らも自分の今後10年の人生を考え直したようです。敵対的な退職ではない、と信じております。
 が、それでも会社は大変です。ベテランが複数辞めていくと引き継ぎが困難。この間に組織を大きくしていったらよかったのかもしれませんが、それはそれで大変です。
 組織はこのような伸び縮み、新陳代謝を繰り返すわけですが、果たしてその先にはいったい何があるのでしょうか。

大企業に見る組織維持の難しさ

組織が大きくなると間接部門が力を持つ

 私がそこそこ近くで見ることができる大企業の組織に保険会社の組織があります。彼らの世界は明確なピラミッドがあります。ある意味、上に対しての絶対服従的な空気はけっこう強固なものがあります。それは一つは、人事権に裏打ちされたものだと思います。あとは、周囲の監視というか、社内における「世間体」みたいなものが醸成される。そこに、忖度のスパイスが加味されて、組織は次第に「誰も望んでいない方向」へ意志を持ち始めたりします。
 そこでいろんな非効率が起こります。ビッフェスタイルの懇親会で、上司にたくさん料理をとってき過ぎて、ビッフェの食べ物が不足するという事態がよく発生します。そういう事が、眼に見えない仕事の進め方なんかに起こるわけです。誰も過剰な食べ物を望んでいないけど、みんなが上司に忖度するから、そこに過剰にいろんなものが集まる。
 そうやって、結構な時間とコストを浪費しています。あるあるなのが「仕事やってますよー」的な無駄な会議の数々。効果がないのに、業務報告をあげるために行うアリバイ作り的勉強会などなど。彼らは顧客と向き合う時間以上に、上司に忖度する時間を大事にする空気の中で育っているように思います。顧客本位と言いながら、社内会議が優先という事にあまり疑問を感じないようです。
 そのような風土が、信じられないような不祥事を生み出したりするわけです。

社員のための会社?

 もう少し今風の会社を見てみます。たとえば、Googlleといった最新テクノロジーを担う企業は、社員をとても大事にします。自由な社風、社内に様々な設備が整い、働く環境は素晴らしい。これらは、社員が最大級のパフォーマンスを生み出すためで、それが会社の業績に直結することがわかっているからやっているのでしょう。
 ただ果たして、これほどまでの最先端テクノロジーを扱わない企業に、そこまでの社員優遇が必要なのでしょうか?
 このような社員との関係性を考えるにおいて、「それは誰のため?」という考えに立ち返ってみることが、今大事なのかもしれません。

 「企業の目的の定義は一つしかない。それは、顧客を創造することである」これは、かの経営学者ドラッカー氏の言う企業の目的です。これは売る相手を見つけるという意味ではなくて、新しい価値観を世に問う、という意味だと私は捉えています。これをベースに考えていくと、どうも会社は社会のためにある物、と理解できそうです。
 さらに、ドラッカー氏の言う経営者の役割を引いてみると…
トップマネジメントは何を"専管"とするかを考えなければならない。
全体を見ることができ、全体に責任をもつ者だけが行うことのできる意思決定である。
第一に、事業の決定、組織としての価値観の決定である。
第二に、資金配分の決定である。
第三に、人材配置の決定である

 これらをもう少しわかりやすい言葉で言うならば、
①企業は社会をより良くするためにあり
②経営者は事業の決定(「誰に・何を・どのように提供するか」を決めること)を行う
③経営者はリソースをどこに分配するかを決める
という事が会社をつくり育てる中での経営者の役割のようです。

 少し話がそれてしまいましたが、社員を活かすというのは、会社経営の中では、会社を前に進める手段と言えそうです。

組織ありきではなく社会ありき

組織マネジメントも大事なんですが……

 実は組織の話を起点にしても、ドラッカーに倣うと企業の目的に立ち返ってしまいます。けどそれが実は大事で、企業の目的があって、それを達成する手段が組織ってことですね。そして、「草創期の企業は一人の人間の延長である。しかし、一人のトップマネジメントからトップマネジメントチームへの移行がなければ、企業は成長どころか存続もできない」という事のようです。
 会社の社員に何度も逃げられると、まさに砂浜に砂の城を作るかのような感覚。寄せては返す波に伴い人は消えていく。これをどうしたものかと思うわけです。そしてそれが、「事業の決定」に際して行われると相当凹んでしまいますね。
 いろんな複雑な思いはあるとして、ここでいったん結論めいた話をすると、

①企業は社会をより良くするためにあり
②経営者は事業の決定(「誰に・何を・どのように提供するか」を決めること)を行う
③経営者はリソースをどこに分配するかを決める
④経営者は(①②を達成するため)組織をつくる

という感じになるのでしょうか。

ミクロな視点で見たときの企業の役割

 社会に対して、企業は何かしらの価値提供を行うという前提があります。一方で、足元を見たときにそこに集う人たちが成長する場を提供する、という考え方があるようにも思います。人が自分の個性を活かして、社会に最大限の価値提供を行うという視点です。
 そういった観点からすると、企業は社員がそのパフォーマンスを最大化させるような仕掛けが必要になります。それはすなわち、社員の成長に寄与するという事になります。これは結果として、という事なのかもしれません。
 そういう意味ではやはり、ドラッカー氏はこんなことを言ってるそうです。

「組織とは、個として、あるいは社会の一員として、貢献の機会と自己実現を得るための手段である」

ドラッカー氏の視点で見たときの会社で組織をつくる目的

 という事で、すべてドラッカー氏の引用をもとに、会社で組織を作る目的を見ていった結果、私的超訳三段論法で考えるとこうなります。

 社会により良い価値を提供するために、(それを達成することができる)組織をつくる、という事。

 いやーーー、すっきり! ……なわけないですよね。なんだかきれいすぎます。じゃあ、経営者って何が喜びなの?って話じゃないですか。

 ただ文脈を見ていくと、「貢献」こそが人の喜びである、という考えが基底にあるような気がします。またきれいごと的な話にはなりますが、人への貢献って自分の喜びになります。経営者は、社会への貢献、社員への貢献がその喜びである、というのが表向きの結論っぽく感じます。

 ただ、人のために働くってのが大好きな人ならともかく、そうでない人が大半でしょう。けど、人の役に立った時、ちょっぴりうれしいな、と思った経験がある人も大半。じゃあ、その機会が増えると、私たちは幸せに一歩近づけるのかもしれません。
 経営者っていうのは、社会に対して、そして社員に対して、貢献することで喜びを得る、っていうのがそのベネフィットなのではないでしょうか。さらにその中でも最上級なのが、
「人は自分のすべての能力を使い切りたい」
という思いを実現させる手伝いができるといいのかもしれません。

 社員一人一人の奥に秘めた「想い」を引き出し、
「想い」が社員の「才能」を引き出し、
「才能」が社会の「まだ見えぬ価値」を引き出し、
「まだ見えぬ価値」が会社の繁栄を生み出す。

 そんな設計をする事が経営者のミッションなのかもしれません。社員の想いを引き出す会社を作り、事業を作る。そのためには、まずは自分がワクワクする事業でなければならないと思うのです。その立ち位置を確認することから始めたいものですね。



ちなみに私はこんな本書いている人です。


頂いたサポートは、日本の二代目経営者のこれからの活躍を支援するために使わせていただきます。