ドラマ・映画感想文(10)『ブルックリンでオペラを(原題:SHE CAME TO ME)』

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作品の面白さ:7点(/10点)
制作年:2023年(日本公開は2024年)
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/BrooklynOpera/
 
※多少ネタバレを含みますので、ご注意ください。
 
 ヒューマントラストシネマ有楽町にて。スクリーン1(大きい方)だったが、客席はけっこう埋まっていた。私も、左は映画通っぽいおじさん、右は若い女性に挟まれながら鑑賞した。
 
それにしても、この映画館は、ポップコーンを食べながら観る人が少ないと思う。勝手な想像だが、生粋の映画ファンが多く、上映中は集中して観たいということではないか。「いや、ポップコーンを食べながら観ることこそ正しい鑑賞方法だ」という主張もあるかもしれないが…。
 
作品の感想としては、普通に面白かった。
 
ポスターと予告編を見る限り、気軽に楽しめそうなコメディ映画の予感がしたが、実際にはコメディ感は薄かった。その代わり、各登場人物のゴチャゴチャした関係が最後にスッキリとハッピーエンドで収まるのは、いかにも映画っぽくて上々の後味。けっこう意外な結末。
 
アン・ハサウェイが美人だった。当たり前に。もっと出演シーンが多いと良かったが、劇場でのフォーマルな装いから、精神科医としての出で立ち、ラフなかっこうまで、どれも絵になる。
 
そのアン・ハサウェイは、レベッカ・ミラー監督から示された脚本に惚れ込み、プロデューサー役も買って出たとのこと。そこから制作資金を集めるのに数年かかる間、脚本を練り上げていったという。(プログラムより)
 
しかし、そのアン・ハサウェイ以上に、本作ではマリサ・トメイ演じる船長が重要なキャラクター。影の主役とも言うべきか。作中のセリフにもあるとおり“船の油のにおいが漂う”、ハッキリ言うと小汚いおばちゃん。しかし、恋愛依存症で、主人公のスティーブン(ピーター・ディンクレイジ)を誘惑する妖しさを持つなど、二面性ある女性を好演している。いや、二面性どころか、船長として頼もしくカッコいいシーンもあるから、言うなれば三面性か。なんとなく、『天空の城ラピュタ』のドーラ船長を思い出した。マリサ・トメイは還暦が近いようだが、とても見えない。
 
本作のもうひとつのウリはブライス・デスナーが手掛ける音楽で、そちらの方面に素養のある方にとっては、聴きどころ満載のよう。詳しいことは、プログラムに解説が書かれている。
 
そのプログラムには、大九明子監督によるレビューが載っていて、読むと気づかされることが多い。画面のアスペクト比の使い分けについては、時折切り替わっていることくらいは観ていて気づいたが、「なるほど、そういう使い分けの意図があったのか」と。なお、アスペクト比については、小柳帝氏の寄稿でも触れられている。(ちなみに、大九監督の作品は、『甘いお酒でうがい』『初情事まであと1時間「ビフォア」』等)
 
この他、監督のインタビューも載っているが、「本作のメッセージは何ですか?」というド直球の質問にも答えている。ゆえに、このプログラムひとつあれば作品の核心に迫ることが容易にできるが、それを抜きにしても、頭を使わずのんびり眺めてちょうどいい娯楽映画。それこそ、ポップコーンを食べながら楽しく観るのが、この作品に対しては正しい鑑賞態度かもしれない。

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