虚の世界

さて、改めまして、「虚の世界」について書きます。
「虚」という言葉にどれほど馴染みがあるでしょうか?
武術の世界においては「虚実」は大切な事として教わります。私も子供の頃から、一応、考えてきました。
ただ、そのレベルはあまりに低く、そして、同じように考えていたからこそ、同じところで人とぶつかってしまいました。

虚は誤解を恐れず、一言でいえばフェイントのようなものです。
上を打つ、と見せかけて下を打ったり、戦う、と見せかけて仲よくなったり。
「思いもしない」からこそ、相手に「隙(スキ)」が出来ます。
「隙」を疲れてしまえば、相手は戦う気持ちを無くします。言っている事は簡単ですが、簡単すぎたり、当たり前すぎるのか、いつの間にか、わかった気になり、忘れてしまいます。

そして、これは世の中の変化とも関係がしてきます。
命がけだったものが、試合となり、また試合が興行となって、隙を付き合う駆け引きではなく、力と力がリアルにぶつかる様子が求められるようになりました。
達人同士が隙を付き合い、剣を交える事なく、負けました、と言って勝負が決まる戦いを観客は許しません(笑)。

段々と、隙は世の中から消えていきました。

さて、そんな「隙」が見えたのは今年の初め、1月4日だったはず・・・と思いましたが、稽古ノートを読み返してみると、「隙」を初めて言葉にしているのは1月11日でした。
勘違いかな?と思うも、もう、あやふやです。
そして、こんなあやふやさこそ、「隙」なんだなぁ、と改めて感じました。

自分は自分の行動をちゃんと把握している、と思い込むところにこそ、「隙」は生まれます。
まぁ、問題は気づいた日にちよりも、中身です。「隙」とは何か、そして、その「隙」をどう感じ、得て、生かしていくかを書いていきます。



武術、武道の世界では隙だらけだぞ!と言われながら指導を受ける様子はよくあります。サッカーのようなスポーツだって、左サイドが空いている、みたいに使われているかもしれません。

しかし、ほんとだ!隙だった!とはなかなか自覚できません。

現代は「実力」の時代です。多くのものが金を出せば手に入ります。昔ならみんな同じレベルであったものが、お金持ちが現れ、超お金持ちになり、欲しいものは力ずくで奪い取れるようになりました。
戦いも同じです。
拳や剣だけの戦いから、もう、世の中は武器になり、それがネットになって、大勢で一人を叩く、というものになりました。わざわざ隙を探すよりも、より強い武器、より人を集め戦う事を求めます。
そして、勝ったならば、勝者の言葉で、勝者の歴史を作ります。

どんな世界にも「やり方」はありますから、いいコンサルタントはちょっとでも楽になるように、その業界の「隙」を教えてくれるかもしれませんが、だんだんと観念的になり、言葉遊びが強くなります。

身体を探る事のメリットは、残されてきている言葉に、なるほどそうか!と実感が持て、納得をする事が出来る、という点です。
今見つけた「虚の世界」、そして、そこに入り込むための「隙」は実生活、それも現代のようなネットの世界が拡がる時代には必須なもの。
隙を手掛かりにする事で、身体の働きから、心の働きを探る際に懸け橋になりそうです。

「隙だらけだぞ!」の話に戻ります。
隙だらけだぞ、と言いつつ、その隙はなかなか感じれません。
隙以上に相手が持つ力、権威が目立ちます。
たいていの場合、隙を指摘する側は指導者です。指導者なのだから、もうすでに、「実力」はこちらよりも上。そもそも学ぶ側に「隙」を探る意欲が湧きません。ついつい、わかりやすい実力を求めてしまいます。

隙は虚の世界に入る入口です。
虚の世界がある、とわかれば、それはあらゆる場面、瞬間に存在する、とわかります。
これは「無意識」とも関係がありそうです。
意識が出来ていないからこそ、隙になるからです。
そして、その隙をつきさえして、虚の世界に入ればそれまでの苦労や困難が一気に変わる、とわかれば、心は救われます。

私が見つけた隙は剣の振り下ろしです。
相手が私に剣を振り下ろしてきます。この時、私の目は剣にくぎ付けです。だって、当たったら痛いし、剣だとすれば、死んでしまう、そう考えたなら、もう意識は剣に向くしかありません。
この時にだって、「隙」はあったのです。ただ、怖くて身体が先に緊張をしてしまい、隙を探すどころではなかった、という事です。

もしかしたら、ゲームや、実際に肉体が傷つかない仕事などの場面においてでなら、自然と隙を見つけている人もいるかもしれません。いや、多くの人がそれをそれこそ、無意識でやっているのでしょう。
しかし、私は臆病で、失敗を過度に恐れる性格を育ててしまいました(笑)。
こうして言葉にする際にも、こんな事を書いて大丈夫か?とまず、自分への心配が先に来ます。そして、その心配が身体を緊張させます。隙をつく余裕なんて生まれるはずがありません。

しかし、違ったのです。
「隙」はあらゆる場面に存在をしています。
存在しているなら、まず、それを見つけ、そこに行く、と決めなくてはいけません。思い切ってやってみたなら何とかなる、では結果は運任せ。ゲームや失敗の許される仕事であれば、何度かの失敗を繰り返して肌でタイミングを合わす事も出来ますが、命は一つです。そんなやり方では、イザという時に困ります。

武術は一つの命をどうするか、が土台となった学びです。一度の失敗は全ての終わり、と考えます。
剣の振り下ろしから見つかる「隙」は実に確かなもの。わかってしまえば、なぜ、それが見えなかったのだ、と思うものです。
まず、見つけ、隙を狙う。その後、うまくその隙をつけるかどうかは身体次第となりますが、狙う段階においては身体の大小、力の有無は問われません。

まず、狙う。
触覚ではなく、視覚に主役をわたせるかどうか、それが大切になります。

やっぱり、一つの記事では終わりそうにありません(笑)。
また続きを書きます。

不定期稽古

3月、つくば、東京稽古が決まりました。下記のとおりです。
よろしければご参加ください。
私の稽古はどこの稽古も、覚える基本もなければ、技もありません。
体力的な問題もありません。身体がある、という事を経験し、楽しんでもらい、日常生活を観察と共に過ごしてもらう事をしてくれたらなぁ、と思っています。

「つくば稽古」
日時:2024/3/3(日)13:00-20:00
参加費:10000円(当日払い)
会場:つくばカピオ リフレッシュルーム
住所:茨城県つくば市竹園1-10-1 

「東京ロングヒーリング」
日時:2024/3/5(火)10:00-17:00
参加費:24,000円(当日払い) 最大人数6名
会場:大岡山西住区センター
住所:目黒区平町一丁目15番12号

「東京夜稽古」
日時:2024/3/5(火)18:00-21:00
会場:大岡山西住区センター
住所:目黒区平町一丁目15番12号
参加費:参加費10000円(当日払い)
同日10-17時にある「東京ロングヒーリング」に参加の方は5000円

共に詳細、申し込みはウェブサイトから。
http://www.karadalab.com/



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