商談をしていたら自分の仕事がよくわからなくなった

9月27日。今日の商談は面白かった。

とあるデザイン会社の社長。

20歳の頃に仲間3人で立ち上げたユニットを、20年経った今でも3人のままで続けている。

プロジェクトごとにフリーのクリエイターと組むことはあっても、

3人の体制を20年間変えていないというだけで驚きだ。

この先を見てもらえば分かるが、接していて心から気持ちが良いと思える人あたり、その人間性は「好きではない人と一緒にいると具合が悪く気持ちが悪くなってしまう」という天才宇宙開発エンジニア?(肩書がよくわからないけどすごい人)が快くマネジメントを任せる存在となるほどだ。(どれほどか伝わるだろうか)

バンドのメンバーの大部分も「音楽性の違い」を元に、本意にも不本意にも去っていくが、

当然「会社」という存在の中での人間の入れ替わりも本来的に激しいはずである。

たった3人のバランスを20年間続ける、その力にまず尊敬。

しかし手掛けている仕事というととんでもなく幅広く、それは昔から今という時間軸で見ても現在手掛けているものを横軸で見ていってもそうだ。

ガラケー全盛期、ピロピロとしか鳴りようのない着メロしか私たちが知らなかった頃(私が中学生だった頃の話だが、残念ながら私の両親はデジタルデバイスへの理解が無く、ガラケーさえ手にしたのは高校生になってからだった。とはいえギャル系のクラスメートがガラケーimodeを駆使して着メロを買っていたり前略プロフをせっせと更新していたのは、振り返ればあの時代を象徴するデジタルデバイスの流れだったと思う)、MP3もまだ出始めの頃に「音楽専用携帯」というものを開発、デザイン、宣伝広告していたという。

実物を見せられないのが残念だが、その先進的なデザインは現在見ても全く古くはなく、素直に「かっこいい」と感じるものだった。

その先見の明にアドマイヤー。

さらに私にとって興味深かったのは、知り合いのアーティストのミュージックビデオの話。

インディーズで予算もないあるアーティストにミュージックビデオの撮影を頼まれて破格で制作しました、ついでにマネジメントも請け負ってます。という話としてしまえばそれまで。けれどもここに数日前に別のデザイン会社から聞いた「新しいスタイルの広告ビジネスモデル」があった。

つまり、受託のデザインである限り、デザインの制作にかかった費用をもらってそれで終了。その費用はある程度の金額にならざるを得ないが、デザイン会社側はクライアントのその後のビジネスに対して責任を持たない。

しかしこの受託のデザイン制作は現実として年々予算が縮小、価格は下げられる傾向にある。数値化できないデザインというものであるが故、料金が下がっても単純に手を抜くことはできず、結果それが負の連鎖に繋がってします。

そこで出てくるのが、「広告という投資」という考え方である。デザイン会社は通常の委託時よりも安いイニシャルコストでクリエイティブを制作する代わりに、クライアントの売上に対するフィーをもらう。自社のデザインした商品が売れれば売れた分だけ、お金が入ってくる仕組みだ。

今回のミュージックビデオの話も同様。単にミュージックビデオを撮影しようとすれば数百万の予算がかかるところを数十万円で請け負う、さらには当アーティストのマネジメントまで請け負ったこのデザイン会社は、当然このアーティストが売れれば自社の利益になる。

「広告のビジネスモデルを変える」という会社に対して、アーティストマネジメントという既存のビジネスをデザイン制作に持ち込むことで結果的に同じモデルができあがる。このデザイン会社社長は何ら気張ることなく(逆にそれ以前に行った会社は「ビジネスモデルを変えるぞ!」といういい意味での「気張り」「意気込み」が感じられた)それをやってのける。

海外で「これはアート作品だ」として評価を得たミュージックビデオ、というクリエイティブとしても一つの成功をおさめる中で、さらに驚きなのが冒頭チラ見せした宇宙開発プロジェクト?の件である。(正式名を入れると出てきてしまうのでこんな感じのプロジェクトだとわかってほしい)

ある1人のエンジニアには一つの信念があった。

「多くの人に宇宙を見せなくてはならない。」

なぜか?と聞くと彼はこう答えた。

「世界を見る目が変わるから。」

何となくわかる。が、どう変わるのだろうか。

「宇宙から見た地球を見れば、どれだけそれが大切にしなければならないものか、実感できる。多くの人に、宇宙から見た地球の姿を見せなくてはならない。」

それをどうやって実現する?

「開発の技術がある。カメラを宇宙空間に飛ばして、撮影する。」

これを聞いた社長は、ビジネスの感覚も、社会の厳しさも知らないこのエンジニアを守らなくてはならないと思った。

幸い、若い頃に会社を創業していた。世の中にはビジネスというお面を被せて悪いことを考える人間が多く存在する。無垢な存在は最も餌食となりやすい。

信じられない大きさの可能性を秘めた才能と哲学を持った人間を、どう守りどう見せていくか。そして信念の実現と社会への還元に繋げるためにはどんなビジネスを作り出すべきか。

これはデザインの仕事と同じだった。クライアントのむき出しのものものを、どう肉付けして世の中に届けてあげるか、それがデザインの仕事。このエンジニアのマネジメントも同じように考えればやることはそぐわない。

こんな考え方で仕事を新たに新たに生み出していく人もいるのだなあと、書きながらもまた尊敬の念が湧いてきます。

さらには、社長自身の娘に歌ってもらった歌を、クライアントのムービーに使ってみたり、エンジニアと一緒にロケットを見に行ったり、などこれまたある意味プライベートなことも含めて、とにかく自由に仕事をしているとにこやかに語ってくれた。

新しいビジネスをすんなりと自分たちの考え方につなげて始められること。

つまりは自分のやっている仕事の固定概念を持つことなくやわらかく捉え、自然な応用ができているということだろう。

広告営業とはつまり何なのか。

媒体を売ること、ではなくクライアントのビジネス拡大に繋がるようなコンテンツを作って提供すること、コンテンツを作るだけではなくもっと広い意味でのプランニングや企画行うこと、ビジネスの相談相手になること、ものづくりをすること。

…なのか?

よく分からなくなってきたところで今日の商談をおしまいにする。

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