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物寂しい秘境の乗り継ぎ駅【秘境駅訪問記 No.49】

皆さまこんにちは。
ご覧いただきありがとうございます。
かるたびと と申します。
関東在住の大学3年生で、大学では競技かるたを嗜んでいます。大会に出場すべく、あるいはただの電車好きが高じて、日本全国様々に旅に出ています。
今回は【秘境駅訪問記 No.49】。北海道にある、とある秘境駅を訪問した際の記録をお届けします。


この「秘境駅訪問記」は、秘境駅訪問家の牛山隆信さんが年度ごとに作成している「秘境駅ランキング」を用いて、ランキング圏内の秘境駅を全て自分の足で訪問して記録を残そう!という目的で作り始めたものです。
牛山隆信さんのサイトはこちらから。


「秘境駅訪問記」の全容を見たい!という大変ありがたい方はこちらから、マガジンでご覧いただけます。



駅情報

駅名:東鹿越(ひがししかごえ)
所在地:北海道空知郡南富良野町

秘境駅ランキング:49位(2023年度)
路線:根室本線
1日平均乗降者数:データなし
(2022年度 乗車人員の1日平均:24人)

←富良野 新得・帯広→

近くの駅:
・富良野…5駅隣。ラベンダーが有名なあの町。
・新得…3駅隣。札幌と道東方面を結ぶ特急が全て停車する。
・帯広…10駅隣。B級グルメの豚丼、お土産で有名な六花亭の本社がある。

この駅を一言で表すと:
物寂しい秘境の乗り継ぎ駅



訪問記

訪問日:2023年3月2日(木)

JR北海道・JR東日本など、北海道から関東甲信越まで各地の列車が7日間乗り放題となる「北海道&東日本パス」を使い、行きは空路・帰りは陸路での6泊7日旅を敢行した、大学2年の春休み。
2日目、宿泊地・小樽を出発し、当時あと1か月で一部廃線となる予定だった留萌本線に乗車した私は、次なる宿泊地・帯広に向けて着々と近づいていました。


※注
2024年3月現在、ダイヤ改正により、過去私が実際に乗車した列車とは行先・発車時刻等が異なります。


根室本線 普通 東鹿越行き
15:38 滝川→東鹿越 17:32

途中駅・野花南にて
初春の西日とホームの積雪。

北方領土を除いた北海道の最東端・根室市の中心駅・根室を終点に持つ、約440キロ以上の長大路線である根室本線。その起点駅である、北海道の中部日本海寄りにある滝川市の中心駅・滝川から普通列車に揺られること約2時間。終点・東鹿越に到着です。

「いくとら」は「幾寅」と書く。

東鹿越の所在は北海道空知郡「南富良野町」。富良野と言えばラベンダー…はやはり有名ですが、実は一口に富良野と言ってもかなり広く。南富良野町から北に向かっていくと、富良野市・中富良野町・上富良野町と富良野祭りなのです。ラベンダーが有名な地域は広く、南富良野町ではかなやま湖のラベンダー園が有名なようです。

地図再掲。
ラベンダー園を発見!

3月初旬の北海道とあって、東京人からすればまだまだしっかり雪があり、日も陰って気温も氷点下に突入といったところです。
さて、かなやま湖の近くに位置する東鹿越駅ですが、一言で表すなら「物寂しい秘境の乗り継ぎ駅」。物寂しさを感じさせるのは、駅舎やその周辺だけとは限りません。

大きくない木造駅舎。
奥には1面2線のホームがある。
乗ってきた普通列車。
当然のキハ40系、ワンマン運転。

秘境駅とされるように、この駅の周囲には集落らしいものはなかなか見当たりません。元来、列車の乗り継ぎ駅になるような駅ではなかったのです。それどころか、2016年にはJR北海道から自治体に対し、駅を廃止する意向が伝えられていたとか。
しかし同年、ここ東鹿越駅、ひいては根室本線の未来を左右する大きな出来事が起こります。



2016年8月、北海道には相次いで台風が接近。そのうちの1つである台風10号がもたらした大雨によって土砂崩れ・河川の氾濫などが大量発生し、東鹿越駅を含む富良野駅-音別駅の200キロ以上の区間で列車が不通となってしまいました。
その後、数日~数ヵ月をかけて多くの区間が復旧していきましたが、ついに復旧しなかった区間がありました。それが、東鹿越駅-新得駅の区間なのです。

復旧「しなかった」と書きましたが、この区間に列車が走ることはもうありません。それどころか、ここ東鹿越駅は間もなくその役目を終えようとしています。
来たる2024年4月1日、根室本線 富良野-新得間は列車営業を終了し、廃止となります。それと同時に、東鹿越駅は廃駅となるのです。


私が訪問した当時は、東鹿越を発着する列車の時刻に合わせ、この区間にある駅を結ぶ代行バスが運行されていました。その乗り継ぎ時間はたった5分、駅周りを探索する余裕は全くありませんでした…

駅自体のお話はここでひと段落ですが、お分かりのようにこの駅のお話は代行バスとの結びつきが非常に強いのです。
ということで、少しその後のお話も綴っておきます。

根室本線 代行バス 新得行き
17:37 東鹿越→新得 18:46

東鹿越-新得間の地図。
途中駅は幾寅・落合の2駅のみ
バスの中から撮影。
1駅目、幾寅駅に到着…?

バスに揺られること10分ほどで、幌舞(ほろまい)なる駅に到着。そんな駅は存在しない…のですが、ある世界線では存在している駅、とでも言うのでしょうか。

ここ幾寅駅ではかつて、映画「鉄道員(ぽっぽや)」の撮影が行われていました。映画内でのこの駅の名前が「幌舞」だったというわけです。バスの中から見るだけでも分かる立派な木造駅舎ですが…ここに列車がやってこないのが残念ですね。

東鹿越-新得間の地図を再掲。
今度は、落合-新得の区間に関するお話。

ところで。地図を再度ご覧いただくと、代行バスはおおよそ国道38号に沿って運転されていくこと、落合-新得間は線路と大きく異なる場所を走行することが分かります。実はこの区間、かつては国道38号側に線路が敷かれており、現在の線路はいわば「新線」にあたるのです。

旧線・新線とも、この区間には狩勝(かりかち)峠という険しい峠があります。かつてトンネルの掘削技術が今日ほど発達していなかった頃、旧線は峠の山あいに沿って急斜面を上っていくルートを採っていました。峠を上り切ってトンネルを抜けると、一面に十勝平野が広がっていたそう。列車から絶景を見渡せる「日本三大車窓」の一つにも数えられていました。



地図を見返してみると、国道38号線沿いの地図にも「狩勝峠展望台」の文字がありますね。
そして同時に、新線の落合駅側の線路はかなりの距離が不自然なほどの直線形になっています。技術の発達により全長5キロを超える「新狩勝トンネル」が開通したことで、新線の供用開始と共に旧線は廃線に。それ以降、列車からその絶景を楽しむことはできなくなってしまいました。



ところが、災害による不通区間を結ぶ代行バスの誕生によって、偶然にもこの絶景を再び望むことができる公共交通機関が新たに生まれたのです。
この区間は、根室本線の部分廃線以降もバスが運行するとのこと。もちろん自家用車を使ってでも、絶景を楽しむ機会はありそうです。

…と言いつつ、時刻は既に夜6時半過ぎ。真っ暗な十勝平野を映そうにも反射でバス内しか映らず、絶景は断念となってしまったのでした。。また訪れてみたいものです。

新得駅にて、折り返し待ち中?
峠越え運転、ありがとうございました。

さて、いかがでしたでしょうか。
廃駅の危機を一度は災害により乗り越え、突然乗り継ぎ駅になったかと思えば、その災害の被害が一因となって廃駅となってしまう。エピソードにも物寂しさを感じさせる、そんな秘境駅でしたね。

この「秘境駅訪問記」では、過去に私が実際に訪れた秘境駅に関して、その訪問記録を書き残しています。
まだまだ書く予定の駅がわんさかありますので、ご興味を持っていただけた方はぜひフォロー、スキ等していただけると嬉しいです!
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それでは、ご覧いただきありがとうございました。
またお次の機会に。

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