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2023年1万ページ読書記録(年間ベスト10)

2023年大晦日。年の瀬に切羽詰まって今年のまとめを。
今年は1万2千ページ読了。ゆっくり読書を楽しめました。
選書が冴えた今年のベスト10の発表。

まずは、今年読んだ本の一覧を

2023年の読本一覧

続いて読書ページ数の遷移。のんびり読書を楽しんだ印象。
IDGs本を執筆し6月に出版後、IDGs関連のイベントにお呼ばれすることも増え、読書時間も少なかったかもしれないですね。

そんな中、今年読んでよかった書籍をご紹介。

生きがいについて 神谷美恵子 

NHKの100分de名著で取り上げられ読みたいと思っていた書籍。
NHKの100分de名著では批評家の若松英輔さんが解説され、何度も見返した、とても良い番組回だった。
精神科医の神谷美恵子さんは、ハンセン病の診療所に勤め、そこで出会った患者さんとのふれあいの中で考え続けた”生きがい”についてが丁寧にまとめてある。
ikigaiという単語は海外にも知られつつあり、IDGsとikigaiの関係をフレーミングしている方もいた。この書籍の影響が海外にまで及んでいることを嬉しく思った。
著者が7年をかけて書き上げた本書。
巻末の執筆期間中の手記もまた感慨深い。

この本に出会った時、それが読むべきタイミング。生きがいという言葉に何か引っ掛かるものがある方には、希望の書となるだろう。


「脳はなぜ「心」を作ったのか「私」の謎を解く受動意識仮説」前野隆司

「自己」とは何かを理解する上で参考文献として読んでみた。意識をニューラルネットワークにより生まれるものとした考え方は理解しやすく、納得感もある内容だった。一方、田坂広志さんの「死は存在しない」では、原始的な量子自体にも意識が存在しているのではないかとする仮説も紹介している。まだまだ今後の展開がありそうな領域である。
Zen2.0で前野先生とご一緒させていただきました。年明けにWell-Being学会の分科会でもIDGsを紹介させていただく予定も持ち上がっています。

「2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望」落合陽一

SDGsとデジタルの潮流がわかる一冊。
世界を4つのデジタルイデオロギーでまとめている点がわかりやすい。
・規制や枠組みを推進する「ヨーロピアンデジタル」
・シリコンバレーを中心にしたテクノロジーで推進する「アメリカンデジタル」
・国家単位で世界の工場化を進める「チャイニーズデジタル」
・紙幣よりもデジタル決済が先に進むような一足飛びのデジタル化を進めるアフリカなどの「サードウェーブデジタル」
アメリカンデジタルを牽引しているシリコンバレーの思想的バックグラウンドが、バイオリージョナリズムやヒッピー文化にもつながりがあるというのも納得感があり見通しがよくなった。

経営リーダーのための社会システム論

至善館大学院の講義録。
社会学者の宮台真司教授と至善館大学院 野田智義学長の対談による講義が一冊にまとめられた本書。
社会システム論を分かりやすく解説しながら、今の世の中がどのように生み出されているか、視点を提示してくれる本書。
映像作品や映画などの教材紹介も参考作品が社会問題を示した重いドキュメンタリー映像で考えさせてくれる一冊。
この本は久々に個人的ヒットで読んでよかったと思える書籍だったので、ぜひお勧めしたい。

「茶と美」柳宗悦

月例茶会の担当を手伝わせていただいたこともあり、にわかに盛り上がった茶の湯への熱で読んだ書籍。名著と呼び声が高いだけあり、学びが多い。
茶道具や茶室などが哲学思想の域での解説がなされ、茶碗にしても、数寄屋にしても歴史、成り立ち、考え方に新たな視点を授けてもらい、茶の湯に止まらない視点の提供で視野が拡がった気がする。
民藝の提唱者、柳宗悦が見た世界観。普段使いの中から生まれて高麗から渡ってきた大井戸茶碗が至高とし、楽茶碗から抹茶碗の凋落が始まったと語る柳宗悦。美をどう感じるか示唆を与えてくれる。

成長の限界

システム思考の生みの親、MITのジェイ・フォレスターに師事したドネラ・メドウズの手になる人類への警告の書。
「成長の限界」がプラネタリー・バウンダリーやドーナツ経済学、SDGs、IDGsへつ繋がっていることを考えると、この書は古典的に読んでおくべき書籍だろう。
人口動態、食料、経済、環境などシステムダイナミクスを用いたシミュレーションで予測した未来は悲観的な結果ばかり。
1972年に本書がレクイエム・シナリオを示してくれた意義は大きい。

「中空構造日本の深層」河合隼雄

NHKの100分de名著シリーズの100分de日本人という特番で紹介されていた本書。とても興味深い内容だったので読んでみた。中根千枝さんの「タテ社会の人間関係」と合わせて読むとおおよそ日本社会や日本人の特徴が理解できるような気がする。
本書では、日本の古事記などの神話を読み解き日本人の精神性を解明しようとしている。特に面白いのは、日本の神話には真ん中に、ほとんど登場しない神様が存在し、この構造がなんども出てくるという内容である。
一例で紹介すると、天照、スサノオ、ツクヨミという3神が登場するが、ツクヨミは太陰暦を使用していた当時、重要な神であるはずなのに全く登場しないという。
著者の河合隼雄はこの3神いて真ん中に無に近い神が存在することに日本人の精神性を読み解き、中空構造と名付けている。
中空構造をもつ日本人の精神性は、主張する引っ張るタイプのリーダーは長続きせず、調整タイプのリーダーの方が長続きする傾向にあるという。
とても面白い考察で頷ける人も多いのではないだろうか。
一方、西洋をはじめとする国々では、合と反から止揚する、陰極まりて陽となるような弁証法運動や二極対立からうみだしていく構造や精神性を持っているという。
この話題は、書き始めると止まらなくなるため、この辺りで留めておく。

「深呼吸の必要」長田弘

年末の本屋で手に取ってみたところ、ゆっくり読みたいと思い購入した書籍。
おとなになったタイミングを「あのときかもしれない」とゆっくり思い返しながら読んだ。
自身の半生を振り返りながら帰省のお供として最適な書籍だった。

『野生の思考』 2016年12月 (100分 de 名著)

「はじめての構造主義」橋爪大三郎

NHKの100分de名著シリーズで紹介があったレヴィ=ストロースの「野生の思考」を見て感激し、解説書を購入。解説書そのものというよりも、100分de名著の本編とセットで今年一番影響を受けた内容。
これからの針路を考えるにあたって、どこに立ち返れば良いか?構造主義や野生の思考が大きな指針を与えてくれる。知ることができてよかった書籍。
これからいろんな場面で紹介したい内容でもある。
「はじめての構造主義」もレヴィ=ストロースをわかりやすく解説してくれた書籍として推薦したい。

読書マップ全体

知識としてのインプットは継続的に行うとして、2024年はインプットに満足せず実践と実行の年として探求していきたい。

以上、2023年の読書記録でした。読んでいただきありがとうございました。

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