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『列』中村文則(講談社)を読んで

『列』、最近買った本で、面白かったー 

本屋さんでこの『列』を手にとった時、一緒にいた夫が「うすっ」と私の心を読んだのかと思う声を出した。ページ数があまりない。
「うすいね。薄いわりには高いかな?」
値段は1400円だ。ページ数が多くて安いとなんだか得をした気持ちになって、薄いとちょっともったいないかなぁと思ってしまう。
「まー 買おうか」
今日は買うと決めたのだから、買うんだと気合を入れてレジに持っていった。
図書館で予約を入れていたのだけど、借りられる順番は5,6番目だった。2か月はかかるだろうか。
待ってられなくなったので買うことにした。
予約という”列”から離れた。
購入し自分の手にすると、予約に並んでいた列を抜ける悔しさと、列に並んでいる人より早く読める嬉しさが混じり合った。

『列』は、現代社会で誰もが「列」に並び、少しでも他人より先に進もうとする現象を描いている。友達の数、年収、学歴、子どもの成功など、誰もが何かの列に並んでいる。はたして、列の先には何があるのだろ? 最後には本当に幸せになれるのだろか。。と考えさせる小説だ。

一度読んだだけでは、この『列』という小説の面白みに辿り着けてなさそうなので、これから何度も読んで自分の中でい深めていきたいなと思う。

本自体の厚みは薄いけど内容はとっても分厚いので、1400円というのは安すぎるなぁと読んだ後は考えが変わった。

そして、何よりこの本があって助かったーと感じている。

私は何かを知り合いに得意気に話してしまうことがある。
例えば、「旅行に行ったよー」とか、「こんなことしたよ。」とか。
その時は気がつかないのだけど、「あー私、自慢してたな」と家に帰ったあと気がつき、イヤーな気持ちになる。
純粋に誰かに教えてあげたいという気持ちではないような気がするのだ。
ちょっとした幸せアピールをしたいのかもしれない。

でも、そんなことをしても幸せになれない。
わけも分からず「列」に並び、順番が先に進んでも何もない。
そのことが心の底から分かるような小説だった。

最近、みんなで幸せにならなければ決して自分も幸せになれないとしみじみ思う。『列』を読んだあとは、特に。


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