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「礼儀作法を科学する」マナー講師が派遣社員になったらどうなるか③

「礼儀作法を科学する」礼儀作法・マナー講師の葛西美雪です。

前回のつづきです。

礼儀作法とマナー講師として長年活動する中で
「ビジネスマナーが本当に役に立つのか検証したい。」と6年間大手企業の派遣社員を渡り歩きました。

こちらは2つ目の会社のお話となります。
さて、引き続きビジネスマナー講師が派遣社員になったら、という形式でお届けしてまいります!

1, 派遣先選定

次の会社は、M社長で有名な、英語が社内共通語のIT企業にしました。
こちらも、頭の中の自由度が高いであろう
「申請者の個人情報照合」という業務。時給1500円。

英語に不安があったものの
システムや社内文書以外、英会話が必要でなく
なによりお昼ご飯がビュッフェ形式です!楽しみでなりません。

私は決意しました。
論文が完成するまでは、体力を温存させながら昼間働き
(その間も、頭の中は論文の事を考えている)
そして、家族が寝静まった後に作業を行えばいいと。

(【注釈】しかし、居心地が良すぎて論文完成後も居座り、部署移動もありつつ5年位お世話になってしまいました。)
 
初日はまとめて15名ほど配属され、システムや一連の業務内容をレクチャーされてから業務スタート。
仕事内容は、PC上で申請者の申請内容と、提出された個人情報を照合するという、シンプルな業務でした。

派遣社員が作業をし、社員はそれをモニタリングする、というもので、1日の作業数を管理されます。真面目にやっている分には問題ありません。

終日無言の仕事となり、入退社時のご挨拶をする以外
周囲の方々とあまり話をすることもなかったのですが、私にとっては好都合でした。

2, 無言仕事でも、コミュニケーション能力は見抜ける

作業は、渡された膨大なマニュアルを見ながら進めます。
しかし、このマニュアルの情報が古かったり、
説明に矛盾している点がありました。
様々な方が上書きしてきたデータなので、よくある事です。

1日無言で作業をしますが、
不明点やマニュアルに矛盾があれば、
社員の方に声をかけて確認してもらいます。
これらを社員の方のタイミングを見極め、笑顔で丁寧に伺うのです。

でも、分からないことを分からないままにしてしまう方もいらっしゃいます。
「自分がこの仕事をしなくても誰かがやるだろう」と思ってしまう非積極的な方もいるんだな、と当時は感じていましたが、
今思えば、「社員への声のかけ方もわからない」「聞き方に不安がある」「極力、社員と関わりたくない」という方もいたのかもしれない、と思います。

いずれにしても、
・分からないことがあったら知っている人に聞ける能力
・その際には、相手が分かりやすいように説明する能力
・相手の状況を鑑み、タイミングよく声を掛けられる能力

これらの能力があれば、仕事のスピードは格段に速くなります。
「コミュニケーション能力の有無」の根幹はこのことなのです。つまり、「周囲を巻き込んで問題を解決する能力」の有無が問われるのです。

3, 配属1週間後:部長に呼び出されビジネスマナーについて語り合う

コミュニケーション能力とは何ぞや、に傾いてしまいましたが話を戻します。

業務はずっと無言状態でも、
不明点、マニュアルにない事例は積極的に確認し
その後、周囲に情報を共有している働き方が認められたのか
部長に呼びだされ、面談することになりました。

正直、想定の範囲内です。

今まで、マナー講師として様々な会社に赴き、
社員研修を行ってまいりましたので
会社の求める人物像の金型はどのようなものか分かっており、
実際、その通りに動けます。

会社の求める人材通りに働いていれば、
たとえ無言であっても、鼻が利く人は分かるのです。

部長との面談時には派遣社員としてではなく、
ビジネスマナー講師として色々と話をしました。

こちらの大きな企業であっても、
結局、隣同士・小さなチームでのコミュニケーション
そしてお客様のお声を十分に伺えるか、は重要事項です。

部長としては気が付いているが、なかなか教育まで手がまわらない、
社員同士言いづらい面もある、ということでした。

派遣業務以外で声をかけてもらい
現場のお話をプロとして話し込んだことは、よい思い出です。

4, 配属1ヶ月後:急な役員面談、役員秘書を勧められる

この業務は3ヵ月の短期派遣だったので、
そろそろ退職の日も見えてきました。
すると、また別の社員の方からちょっと時間ある?
と言われ会議室に案内されました。

待っていると、男性二人が入ってきて、「それでは経歴をお願いします」と突然言われ、私としては、事前に何も聞かされておらず躊躇するしかありません。

しどろもどろに何とか経歴を話し終え、面談をすすめると
どうやら秘書を探している役員の方のようでした。
このことは、仕事への向き合い方について考えるきっかけになりました。

自己アピールしようもない、無言で業務をする仕事であっても
仕事の丁寧さや積極性は十分にアピールでき、認めてもらえるんだ、
と確認できる出来事となりました。

5, 検証結果:ビジネスマナーは大いに役に立つ

結局、大手IT企業の役員秘書は魅力的だったのですが、
論文作成が最優先課題であると選択し、役員秘書の話はお断りしました。
役員秘書になってしまったら、殺伐した日々になり
論文作成を後回しにしてしまうことが目に見えていたからです。

さて、ビジネスマナーは役に立つか、の問いに関して
二社目の検証は以下の通りです。

①無言の業務であってもコミュニケーション能力に差は出る。
 ・分からないことがあったら知っている人に聞く能力があるか
 ・その際には、相手が分かりやすいように説明する能力があるか
 ・相手の状況を鑑み、タイミングよく声を掛けられる能力があるか
 ・自分の得た知識を、自然に周囲にシェアできるか

②マナーは、人を惹きつける対応が身に付く
 ・話し方は、その人が生きてきた歴史を表現する。
  正しい話し方を習得するだけで、
  あなたの人生が素晴らしものと思わせます。
 ・第一印象である、姿勢・口調や表情・身振り手振り・服装・清潔感で
  あなたの性格をジャッジされる。
 ・受け答えの真摯さは、生活態度・芯があるか・人生観を表す。
 ・話さずとも、佇まいだけで人を惹きつけることができる。

③ビジネスマナーの金型はどこへいっても有効
 ・ビジネスマナーを体現していると、どこへ行っても「しっかりとした人」と認定される。
 ・特にベテランの方々には安心感と信頼感を与えることができる。
 ・一度ビジネスマナーを理解・習得すると、あとはTPOに応じて調整するのみ。

二社目のこちらの会社は、大学通学が無い時期になったらお世話になるというスタンスで、各グループの人事部を渡り歩き、結局5年ほど勤務しました。

心遣いのできる方々ばかりで、大切にしていただいていると感じた5年間。
大切にしてもらえるから、私も最大限の力を発揮しました。

心遣いができる者同士がチームを組むと、
課題解決が素早く、目標達成まで勢いよく取り組めます。

ビジネスマナーは組織にとっても最大の手段・武器となるのです。

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