第53首 花の捧げ物

※このノートでは、春の和歌をご紹介します。各和歌のイメージを記した【イメージ】のあとに、【ちょこっと古語解説】というパートを設け、和歌中の古語を簡単に説明しています。なお、【イメージ】は、現代語訳そのものではありませんので、その点、ご了承ください。

【第53首】
 神垣の 三室の山は 春来てぞ 花の白木綿 かけて見えける
《かみがきの みむろのやまは はるきてぞ はなのしらゆう かけてみえける》
(千載和歌集/藤原清輔《ふじわらのきよすけ》)

【イメージ】
 三室の山に春が来た。
 花が咲き誇り、山が清新な色に染まる。
 まるで木々に白木綿がかかっているかのようだ。
 そうだ、桜をお供え物として神に捧げよう。

【ちょこっと古語解説】
神垣《かみがき》の……神が鎮座する場所という意味から「みむろ」(=貴人の住まい)を導き、また、「みむろの山」を導く、枕詞《まくらことば》となる。枕詞とは、ある語を導くために置かれる言葉であり、それ自体は訳されない。
三室の山……元々は、今の奈良県桜井市三輪にある山、三輪山《みわやま》を指したが、後に今の奈良県生駒郡斑鳩《いかるが》町にある神奈備山《かんなびやま》を指すようになった。
白木綿《しらゆう》……木綿とはこうぞの樹皮をはぎ、その繊維を蒸して水にさらし、細く裂いて糸状にしたもので、神事で、幣帛《へいはく》(=神にささげるお供えもの)として、さかきの木などに掛ける。

※コメント無用に願います。

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