第52首 天空の花を

※このノートでは、春の和歌をご紹介します。各和歌のイメージを記した【イメージ】のあとに、【ちょこっと古語解説】というパートを設け、和歌中の古語を簡単に説明しています。なお、【イメージ】は、現代語訳そのものではありませんので、その点、ご了承ください。

【第52首】
 葛城や 高間の山の さくら花 雲ゐのよそに 見てや過ぎなむ
《かづらきや たかまのやまの さくらばな くもいのよそに みてやすぎなん》
(千載和歌集/藤原顕輔《ふじわらのあきすけ》)

【イメージ】
 葛城の山々の一つ、高間の山。
 その山の頂を白く染める桜の花。
 空高くにあるから関係ない、と遠くから見るだけで通り過ぎる、
 そんなことができようか、いや山へと登り、間近に見ずにはいられない。

【ちょこっと古語解説】
葛城……今の奈良県北葛城郡。葛城山の東側一帯の地。
高間の山……奈良県にある金剛山の異称。
雲ゐ《い》……雲のあるところ、の意から、「大空、天上」を表す。
よそに……元の形は「よそなり」で、「無関係だ、無関心だ」ほどの訳。
……反語を表す助詞。反語とは、「~だろうか、いや~ではない」という、疑問の形を借りた否定的表現。
なむ……「な」は元の形は「ぬ」で確述を表す助動詞。確述とは、何かが起こることを「確」実であると「述」べる、用法。「必ず~、きっと~」ほどの訳。「む」は、意志を表す助動詞。全体で「必ず~しよう」ほどの訳。

※コメント無用に願います。

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