ホームドクター見参
やあやあ、こんにちは。
名を「かすぞう」と申す。
元はかすみだが、間宮林蔵好きで忍者ハットリくんことハットリカンゾウが大好きなのであやからせてもらったでござる。ニンニン。ちなみにチンチンジャラジャラの液晶に映るハットリ君に貢いだこともあるでござるよ。ししまるー!!
さてさて、少し私の「おしごと」の話をしよう。
『ホームドクター』をご存知だろうか?まあ、かかりつけの信頼できるお医者さんって感じだろうか。その『ホームドクター』とやら、これを一任しておる。医師でも薬剤師でもないが、蓄積された経験と探求魂と分析力でなかなか優れた人材であろうと自負しているのは、折りこみ済みの図々しさも手伝ってのことだ。
担当しているのはもちろん住処を共にする3人である。
オットン・・・頭痛持ち。片耳失聴。耳鳴りは24時間消えない。鎮痛剤を手放せないが、服薬しすぎることを懸念して調整する日々。
タロクン・・・どでかい病気を2度経験しているため大学病院にて検査継続中。2年前から頭痛持ち。鎮痛剤は効かないため耐えるのみのスタイル。
ハナタン・・・重度食物アレルギー、他に動物・ハウスダストアレルギーもあるマルチアレルギーっ子。軽度のアトピー持ち。
オットンは大人だし、タロクンも突発的に起きる頭痛に耐える他ないため、通常のおしごとは「ハナタンのアレルギー管理」である。
つい3日程前のこと、ハナタンに牛の乳を処方した。ティースプーン一杯にも満たないほどの量だった。けれどハナタンの体には最大の許容量である。
一瞬、迷った。胸騒ぎがした。それでも飲ませた。
結果、アナフィラキシーを起こした。
喉が痒い・・・そういうことは常だから、「アレジオン飲もう。きっとおさまるよ」と声をかけるも胸に爆音が響く。
マズイ・・・マズイ・・・ヤッパリヤメトキャヨカッタ・・・
ハナタンの症状はどんどん増える。咳が止まらない。目が痒い。おなかにポツンと出始めた。サラサラの鼻水が垂れる。
ヤッチャッタ。ドコカデワカッテイタノニ・・・
そう、今日は飲ませないほうが良い気がしていたんだ。冷静になればそのはずで、お昼に卵料理を食べて喉が痒いからと早めに毎日飲むアレジオンを服薬していた。その時点で彼女の体には負荷がかかっていた。
ティースプーン一杯も直接ではなく、ジュースに薄めて少しずつの摂取をしなければならなかった。
わかっていたのに判断を間違える。
焦ったからだ。
来週、5ccの負荷試験がある。
前日、8歳の誕生日を迎えた。
少しでも多く、少しでも早く、少しでも少しでも。そんな私の勝手な願いでハナタンの体を痛めつける。
宙を見つめる。
私のせいだ、そんな自責の念に駆られている暇はない。
病院に行くタイミングを逃さないよう感覚を研ぎ澄ませる。
夜間救急に駆け込んだことは何度もあるが、だいたいかなりの時間を待たされ、小児でもアレルギーでもないドクターか、すごくお若いドクターに症状を聞かれ、様子を見ましょうという流れになる。
意識ははっきりある。咳の音もいつもと同じ。
でも一歩間違えたら大変なことになる。
どうする?どうする?小さな変化も見逃してはならない。
そのうち、咳が少しずつ収まりだす。鼻水も止まりだした。笑顔も出てきた。もう大丈夫。
症状が出た時は無制限で見られるYouTubeを消して、ハナタンといっしょにベッドに入る。
「ハナタン・・・ごめんね。ママのジャッジミスだ」
「だいじょうぶだよー」
「ママのバカバカバカーっ!おバカめっ!」
「ママがバカじゃないよー!ギュウニュウのオバカー!」
涙をこらえながら笑う。ハナタンはすっかり元気になって真夜中なのに大声で笑う。いつものようにギュウギュウ抱きしめ合う。
こっそりハナタンの体にごめんねとメッセージを送りながらも、『もう少しなんとかならんか?』と本心が入り混じる。
そして今朝。タロクンの部屋のドアを開ける。
タロクンの姿勢がうつ伏せで頭を少し抱えている。
「眠いだけ」VS「頭痛」
後者がWINNER。
そろそろくると思っていた、ここ最近のタロクンの頭痛はどうやら3週間から1ヶ月のスパンだ。オットンと違って気圧より温度差の方が反応しやすいが、それより周期的に訪れていると思われる。
タロクンの体は、タロクンの「生きる」に必要なことに対して自動的に調整をかけている気がする。あわせて、メンタルが強靭なのにメンタルが繊細なので、フィジカルでバランスを取ろうとしているように見える。
必要以上に落ち込まない。
そう自分に言い聞かせ、学校へ連絡する。サイト入力になったからずっと気持ちが楽だ。2年前、1日もおさまらなかった頭痛に苦しんでいた頃は、忙しそうな職員室に「遅刻で行くかもしれません」「やっぱりおやすみさせます」と電話することが本当に気が重かった。
その他の項目に「頭痛」と入力する。持病と書かないのはかすかな抵抗だ。
台風が来てるってことはオットンもやられているんだろう。まだ起きてこない。でもオットンは大人なので特に何もしない。
仕事がいつもハードモードなのでウルトラハードになった時だけ「甘いもの食べたら?」としつこく声をかけ、おかずの品数を倍増する。小鉢好きなオットンのために、和食バイキングか!ってほどの常備菜を作り、炒め物も揚げ物も煮物も用意する。
オットンはたぶんそれが一番嬉しい。
さあさあ、今日も今日とて「かすぞう」が参る。
この頭の中にスパコンも真っ青のデータが蓄積されている。
たった3人分だけど。
数字だけじゃない、計測不可能な「肌感覚」が超優秀なカスコンだ。
読んでくださってありがとうございました。
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