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【詩】十三夜

中空に、ふくれる月が
蒼い、紅い、日暮れの闇に
白々と、浮かんでいる
鳥の、黒い翼が横切れば
かがやける、金盤の鏡となり
褥のよどみを、照らしだす

今宵の、月のまなざしは
何を、なぐさめているのだろうか
夕べに沈んだ、人影は
何を、あきらめているのだろうか

まだ満ち足りぬ、かがやきは
憂いもなく、黙ったまま
解き放つ、銀のしずくの鈴の音を
惜しみなく、降りそそぐ

栗の実の、剥き出しの色艶が
弾けた毬に、身もだえして
早るまどろみを、ひきとめている

©2023  Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。