【詩】どんぐり
約束どおり、あらわれた君は
あの頃と、おなじ表情で
変わらない仕草で、笑っていた
同じ庭の、同じ樹で育ったどんぐりが
ちがう森に撒かれて、芽吹き
葉を繁らせ、花を咲かせ、実らせた
あの頃と、おなじ声色で
知らせあう、あれからの想いの丈を
うなずき合い、なぐさめ合って
口走る、長い時間の断片は
ちがう森の、ちがう風に吹かれても
ちがわない実りを、枝に残して
同じ庭の樹の、どんぐり同士
変わらない手触りを、確かめあい
いつとも知れない、次を約束している
互いの、枯れはじめた枝をみつめて
©2023 Hiroshi Kasumi
お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。