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「日本刀の装い展」を見て【前編】刀編

現在刀剣博物館にて「日本刀の装い 豊かなる刀装・刀装具と名刀展」が行われています。
結論から言うと刀は重文や国宝のみ15振の名品が並び、刀装や刀装具も特別重要指定品含む個人蔵の名品も多く並んでいて見応えがありました。
また目貫や、柄、鎺などの製作方法が工程ごとに分かりやすく展示されており、またそれらを製作する道具にまで言及された展示で非常に内容の濃い良い展示に思いました。

その為、前編では刀について、中編では刀装、後編では刀装具について見てきた感想を書こうと思います。


・刀

全部で以下の15振が展示されていましたがその内訳が凄く、3振が国宝、12振が重要文化財です。
しかも刀剣博物館所蔵の物を除くと7点が個人蔵となり、普段目にする機会が殆どない物になります。
それが撮影可という事もあり、改めて凄さを感じます。
ここでは特に個人的に気になった6振について書きます。

No.22 延吉

拵については次回触れる予定ですが、金具をこれだけ精巧に作れるのはやはり古い物の1つの特徴である気が個人的にはします。

まず特質すべきは刀身の保存状態ではないだろうか。
生ぶ茎で銘も鮮明に残っており、刃も減らずにたっぷりと残っている。
700年以上前の鎌倉時代の物でこれだけ健全な事は奇跡に近いと個人的には思っている。しかも地鉄もたしか大肌の出ている箇所が無く延吉の非常に高い技術が見て取れる作に感じた。

勿論研ぎにも見え方は左右されるのだろうが、映りの出方や匂口の深さの様子など、刀が健全な時の見え方などは非常に勉強になる気がした。
全ての物では無いが研ぎ減ってくると大肌が出たり刃が飛び焼きの様になったり、匂口が固くなったりするものを割と見る気もする。
やはりそれは異となる見え方をしていた。
それにしても後水尾天皇の御料とは…これだけ保存状態が良い事も納得。



No.23 正恒

地斑映りが鮮明
南北朝期の現存希少な拵。非常に素晴らしい拵でこれは次回のブログで触れます。

この正恒は今回展示されている刀の中で個人的に1番好み。
古備前というと身幅の細いものをつい想像してしまうが、こちらの太刀は身幅が広くがっしりしていて、いかにも物切れしそうな印象が感じられた。
刀身には所々打ち合ったような誉れ疵が見て取れ、刀身全体に入った地斑映りがまたこの太刀の武勇に拍車をかけている気がする。
拵も南北朝期の物が付帯しており、図譜で見ていたものだけに現物を見れて興奮。あまりに素晴らしすぎるのでこちらは次回ブログにまとめます。

この太刀が戦で使われているのは間違いないと思いますが、それでも尚これだけ健全なのは驚くところで、使われた時代はほんの一時代で後は権力の象徴、大名の宝物として大切に伝承されてきたものなのだろう。

また、古い鉄ハバキがそのまま付いている、目釘孔1という点も貴重な資料かと。



No.24 福岡一文字

細身の優美な姿
躍動感ある丁子

一見すると則宗のように古い時代の古一文字に見えるような細身かつ腰反りの高い姿をしている。
しかし刃文は既に吉房を代表とするような福岡一文字らしい躍動感ある丁子を焼いていて覇気がある。(則宗だと刃は直刃調、小のたれで大人しい)
山鳥毛の伝来元である上杉家のものらしいが、上杉家伝来の物は生ぶ作が多い。(山鳥毛は区を上げているようにも見えて個人的には完全な生ぶでは無いのではないかと思っていますがはてさて)


No.29 国行(来)

写真がこの上なく少ないのが悔やまれるが、とてもとても良かった。
きっと見惚れて写真を撮り忘れたのだと思う。
確か10㎝ほど摺上げていたような記憶がある。
茎尻も同じく10㎝位短くしているのだろう。
来国行は一説によると綾小路定利と親交があった刀工とされているが、個人的には同じ京の刀工であってこうした小丁子の作風が綾小路と通じるものがあるからではないかと感じたり。


No.30 兼永

生ぶ茎で在銘。
国永と共に平安時代の五条派を代表する兼永の作。
なぜこのような作が現存しているのか不思議でならない。
先の龍門延吉もあれだけの状態で残っているのが奇跡であるが、こちらも奇跡である。
非常に古雅な姿と刃文、肌立った地鉄をしているが、鉄を見ると実に潤っており下品さを一切感じない。
新刀以降で出来の悪い刀だと肌ががさついているとそのがさつきがライトを当てる事で更に強調され悪目立ちして下品に感じるのだが、古名刀はライトを当てると鉄の潤いに肌が沈むというか上品に見えてくるのが不思議で非常に面白い。


No35 長曽祢興里入道乕徹

虎徹の中では希少な重要文化財指定のもの。
キャプションを読むと「本工屈指の名品」とある。
そう言われるだけあり地鉄と刃文の冴えが素晴らしく、これだけ整った地鉄を作る点にも驚かされる。
虎徹の出来は幅があると言われるが、この作がひとまず虎徹の中でもトップに位置する出来との事なので、よく見て頭に入れておきたいと思う。


次回は個人的にも興奮しまくりであった「中編:刀装」について見てきた感想を書こうと思います。

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それでは皆様良き御刀ライフを~!

中編:刀装↓

後編:刀装具↓

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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