見出し画像

日本刀鑑賞と服装

正装はフォーマルとも言いますが、上から順にフォーマル、セミフォーマル、インフォーマル、スマートカジュアル、と呼ばれています。
男性で言えばフォーマルはモーニングコートや燕尾服などがこれにあたり、いわゆる普通のスーツ姿はインフォーマル、ジャケットにパンツスタイルはスマートカジュアルに分類されるかと思います。違ったらすみません。

以前「日本刀鑑定の全国大会」や「清麿会」に参加した時のこと。
服装の指定は有りませんでしたが、殆どの方が襟付きシャツにジャケットを着ての参加でした。
つまりインフォーマルもしくはそれに近いスマートカジュアルでの参加が大半でした。
こうした場を硬い、居心地が悪いと感じる人もいるかもしれませんが、私は何だかとても気持ちの良い場に感じました。

「日本刀を鑑賞する際には一礼を」

これは鑑賞マナーで言われる事ですが、刀を作った人、刀を今まで大切に継承してきた人、そして現在大切にしている所有者の方へ、見せて頂く事の感謝や敬意を込めて一礼するもの、と私は聞いてきました。

どんな鑑賞会でも一礼をする人は多いものの、ラフすぎる格好での一礼が本当に敬意を示している事になるのか、形だけ真似しているだけではないかと、そうした意味でラフすぎる格好での刀鑑賞には少し抵抗があります。
しかし仲間同士での鑑賞会などは別にそこまで気にし過ぎなくても良いと思うのです。

この一見矛盾した抵抗感のようなものを自分の中でもう少し掘り下げて考えて見ると(あくまで私自身の中ではありますが)、先日の全国大会や清麿会など、刀の所有者が誰か分からないような場では服装はやはりしっかりした方が良いのではないかという考えを自分自身が持っている事に気が付きました。

仲間同士での鑑賞会、つまり刀の所有者が明確に分かっている人同士でお互いが気にしない場であれば、そこまで服装は気にしなくても良いと思うのです。
これは恐らく私自身が刀そのものへの礼節というよりも、現在の所有者に対しての礼節を重視しているから、なのではないかという結論に至りました。

なかなか目の前にある700年以上前の刀の作者や、今まで継承してきてくれた戦国武将などの人達に対して感謝の気持ちを込めるのはなかなか難しいのです。顔も名前も知らず、想像しづらいので。

一方で現時点の所有者の方への感謝の気持ち(見せてくれてありがとう等)は非常に想像しやすい、そんな感じからでしょうか。
仲間同士での鑑賞会は所有者の人が当然目の前にいるわけですから、感謝の気持ちは直接伝えたりなど、服装以外に伝える手立てがあります。
なので私の場合はそこまで服装は気にならないのかと。

しかし刀の所有者が見えない場では、せめて自分の服装をしっかりする事で感謝や敬意の気持ちを所有者へ伝えるのが礼儀だと思うのです。

これが一見矛盾した抵抗感の答えではないかという考えに至りました。
そしてこれが先の全国大会や清磨会の場が気持ちよく感じた理由ではないかと思うのです。

なので刀の所有者が見えない中で、ラフな姿の人が「刀を鑑賞する際には礼節を持って一礼を」などと語っている場を見ると「おまいう(お前が言う?)」状態で引っ掛かかってしまうのです。

そして不思議とその場に合った刀なり刀装具が並んでいる気がするのです。
是非参加者の服装と品を見比べてみてください。
服装がしっかりした人が多い場では不思議と並ぶ物の質も上がっています。
別にお金持ちが多いから良い品が並ぶわけでも、服装のしっかりした人が多いわけでもありません。
お金持ちの人の中には服装がラフな人も多いです。
大事なのはお金の有る無しではなく、どこまで他者への敬意を払える人が多いのか、だと思うのです。
本来日本人はそうした礼節の文化を大切にしてきた人種だと思います。
故に他者への敬意を払える人が多く集まる場には質の良い物が集まる
そんな気がするのです。
是非参加者の服装と品を見比べてみてください。

尚こんな事を書いてはいますが、自宅で自分の刀を鑑賞する時にいちいちジャケットを着たりはしません。
今は亡き刀の作者や今まで継承して来て下さった方に敬意を込めて一礼はしますが、服装までは流石に面倒なので。
心の中で一瞬感謝し、後は鑑賞を楽しんでいます。
今回の話はあくまで他の方の刀を拝見させて頂く時の話です。


今回も読んで下さりありがとうございました!
面白かった方はいいねを押して頂けると嬉しいです^^
記事更新の励みになります。
それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?