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日刀保横浜支部20231015

今日は日刀保横浜支部の鑑賞会へ参加してきました。
今日の鑑賞刀は5振。名刀が多く眼福でした。


1号刀:古一文字宗吉(重美)

細身で腰反り高く踏ん張りある姿をしており、平安末期から鎌倉初期にかけての姿に見える。
刀身には地斑映りが鎬筋を超えるほどに出ており、古雅さがある。
地沸が全体に付き、刃文は沈みがちであったものの、これは研ぎによるものと思われる。刃文は小丁子。
古備前か古一文字で悩むものの、優美で美しい姿で地斑映りも見事であったので1札目「古備前友成」と入札。
古備前と古一文字は作風が似ている所があるようで今回は当たりにしてくださいました。
とはいえ家に帰ってから友成の作風を見直していましたが、映りがはっきり出るのはどちらかと言えば古備前正恒の方でしたので、入札するにしても正恒で入れるべきでした。
小丁子が入ると古一文字と入れた方が良いようです。
因みに古一文字宗吉は御番鍛冶。一見して分かるほどの名刀でした。

2号刀:無銘青江(南北朝時代)

大擦り上げ姿。大鋒。重ね厚い。
姿から南北朝時代と見る。板目に杢を交えており、直刃の上には段映りが見える所から1札目「青江(南北朝)」と入札。
この太刀は匂口も柔らかく、地景の出方が上品、映りも鮮やかに出ているなど、見るからに特重クラスの名刀。
日刀保の方に特重ですか?と聞くと「特重と変わらない覇気がありますが無冠なんです」とのこと。
こういう無冠なら是非欲しいと思える1振。
尚、青江の典型作だそうで日刀保の学芸員の勉強会でも良く使われるのだとか。肌も典型的な縮緬肌とのこと。
縮緬肌がまだ良く分かっていなかったので勉強になりました。


3号刀:多々良長幸(大阪石堂)

慶長新刀程に反りがついた姿、丁子刃で乱れ映りのような物が立つ。
地鉄が詰み少し白っぽさがあったので新刀より時代の下がる物、石堂あたりに感じたものの匂口がかなりしまって兼房丁子のように見える箇所があり、石堂是一とは違う印象を受ける。
白け映りなどではなかったものの、以前兼定(ノサダ)の物で乱れ映りのように見えた作を思い出す。
その刀は匂口が少し深く砂流が交じるような作だったのですが、今回の刀は焼き出しも上部の刃文と同じことから古刀の可能性を疑いました。
ノサダなら匂口の締まった作も作っていそうに思い、ノサダの出来の良いものの線を疑い1札目「二代兼定」と入れ、時代違い
時代違いということで2札目「石堂是一」に入れて、イヤ
そこでヒントを頂き、縁ある刀工と言う事で、他の石堂を検討し、感で3札目「多々良長幸(大阪石堂)」に入れ、
多々良長幸は匂口が締まる作風だそうで、今回の刀は精美な詰んだ地鉄に乱れ映りがはっきりと出ていました。
こちらの刀も非常に良い刀でした。
時代違いをしてしまったのは反省点です。
地鉄に感じた「新しさ」の違和感をもっと素直に受け入れるべきでした。

4号刀:津田越前守助広(延宝9年。丸津田銘)

反りのあまり無い姿に、濤乱刃のような刃を焼いている。
しかし濤乱刃というよりはどちらかと言えば互の目が連続したような刃文で、丸い飛び焼きが片面3か所ほどに見られたが、匂口の深さが助広と見るには足りない気がして1札目、弟子の「助直」に入れ、同然
助広の作でした。濤乱刃が完成する直前の作でしょうか。
尚、助直であればもっと砂流が刃中に入るとのこと。
因みに助広の写しを良く作った水心子正秀だと沸がもっと粗くなるとの事。


5号刀:長船清光(天文24年

先反りで鋒の伸びる姿。板目に杢が交じりわずかに肌立つ。
映りは見られないが、棟焼がみられ僅かに皆焼のようになっている。
刃文は複雑に入れ組むような丁子。
体配的に室町期頃と考え、与三左衛門尉祐定を検討するが、そこに入れるには鋒が少し大きく見えたので、1札目「源兵衛尉祐定」に入れ、同然
但しちょっと刃文が華やかすぎる点が引っ掛かっていた。
正解は長船清光で、鋒下に染みたような葉が入っているのが清光独特とのこと。僅かに研ぎ減りはありましたが、かなり健全で重かったです。


・終わりに

という事で今回は採点が優しい印象もありましたが、奇跡的に73点と高得点を出せて嬉しいです。
ただ3号刀の時代違いをしてしまったのは反省点です。
やはり地鉄の色は最優先事項にして見た方が時代を捉える上では確実なのかもしれません。
ただ今回は特に1号刀(古一文字宗吉)と2号刀(青江)が名刀すぎて、大部分の時間をその2振の鑑賞に費やしました。
おかげで脳裏に今でもはっきりと残っており今日は良い夢が見れそうです。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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