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第69回 重要刀剣指定展を見て

開催から1ヶ月程経ちましたがようやく見に行く事が出来ました。
第69回重要刀剣等新指定品展。4/14まで両国の刀剣博物館にて行われています。

この展示会は撮影不可なので個人的に好みだった作品をいくつか思い出しながら書いてみます。(順番は目録順です)


・刀剣の部

1.刀 無銘 五条国永

無銘ながらぱっと見で五条国永と見える作品。
何と言っても匂口が深い中直刃調の刃の中には小乱れや小丁子を交えながら金筋が無数に入り、足や葉(たしか)も沢山入っている。
研ぎも抜群に上手いのだろうが、素材も抜群に良いのだろう。
2つが合わさり異彩を放っていた。
地鉄も精美でこのような地刃をした生ぶ太刀を手に入れる事を私の愛刀家としてゴール目標にしたい。(目標が高過ぎる…)

2.太刀 無銘 古京物

目録を見た際に「古京物」という極めはなんだ?流派も極められない作品とはどのような物なのだろうか、と疑問を抱いたが実物を見ると確かに良く分からない。
全体的に小振りで小太刀を少し大きくしたような姿、つまり優美な平安~鎌倉前期頃の太刀のように見える。
直刃調の刃は匂口が締まり、匂出来まではいかず小沸出来というような印象だろうか。
沸映りのようなものが区から切っ先まで綺麗に入っている。
地鉄も精美で板目に杢を交えた肌のようなものが肌立っている。
ぱっと見で思い当たる節が無いが、粟田口の初期頃の作にはこのような手の物がありそうな気もする。
などと考えながら見ていると解説に三条近村に見える、のような事が書いてあり、なるほど近村の作は見た事が無いので分からない、となって終わった。


17.太刀 銘 助包(一文字)

銘も鮮明に残った生ぶ太刀。
これほどの作品がまだ特保のまま眠っていたというのか。
まだまだ世の中には沢山の名刀があるのだなと感じさせてくれた1振。
今回入って一番正面に展示されていました。
という事で今回の新指定展の中でも1番良い物という評価を得たのでしょう。
一文字特有の焼きの高い華やかな丁子が覇気となり見ていると圧倒されます。結構じっくり見ていたのですが、実はあまり記憶に残っていない状況に陥っていまして…。
一江左かさねさんのブログから言葉を借りるなら、やはり「位負け」をしていたのだと思います。


19.太刀 銘 「長」□(長光)

おそらく生ぶ太刀。
ガラス越しに銘の位置がはっきり捉える事が出来なかったものの、焼き落としがあった事からやはり生ぶと思われます。
長光晩年作を彷彿させるような出来で、刃は落ち着いているのですが、乱れ映りが全体に鮮明に出ており幽玄な雰囲気を醸し出しています。
帽子は三作帽子のように見受けられ、こういう所からも長光と見られたのでしょうか。
個人的には備前伝はこういう作が好みです。
まぁネックなのはこうした備前伝の売り物があまりない事なのですが…。


・刀装の部

4. 朱塗陰陽藤花文鞘合口短刀拵

今回の拵で一番好みだったのは黒田家伝来の短刀拵。
藤巴紋と言えば黒田家の家紋ですが、普通御家の拵はこの家紋をあしらったものが多い中で、この拵は縁頭などの金具には藤巴紋を入れつつ、一番目立つ真っ赤な鞘には「藤の花」が垂れているように真っすぐと伸びて描かれています。
藤巴紋を鞘にもあしらっていたとしたら確かに主張し過ぎというかデザインが「これでない」感、というのを感じますが、そこを藤の花を垂らす事で見事に調和の取れた美しい鞘に仕上げているのには感動しました。
黒田家の拵センスには何度も驚かされているのですが、この拵もまたその内の1つでした。


・刀装具の部

3.樋定規図笄 銘 宗乗作 程乗(花押)

真っ黒な深い黒みのある地鉄に表面が摩耗して魚々子が擦れた時代の感じる地板に金の高彫で「定規」をあしらっている。
金の定規には直線で彫が毛彫されているが、角は鋭角になっているのが印象的。
定規という画題は度々見るが当時何か測量する上での重要なものという位置づけだったのだろうか。そして武士が好んだ理由とは…。
悩みが尽きないがちょうど定規の構図で似たような作を持っていたので気になったのかもしれない。(以下は雲が毛彫されていますが、展示品は魚々子の地板で笄)


8.武蔵野透鐔 銘 安親

とにかく真鍮の地鉄の色が良い。
前回の東京都支部の鑑賞会で安親の作品が一同に介しており、解説を頂けていたので透かし彫の断面を見てみたがやはり鏨で打ち抜いたようなワイルドな作りをしている。
しかし耳周りの一部は垂直に切り落とすわけではなく、あえて少し傾斜を付けて彫っている。
この絶妙な具合がまた全体の良いバランスを取っているように感じた。
以下は町彫名品集成に載っているものであるが、展示品と同一のものかは分からない。ただ同じように見える。

安親(画像出典:「町彫名品集成」より)



10.猿猴耳掻に刷子図小柄 銘 安親

これも前回の東京都支部の鑑賞会で拝見した安親の猿猴耳掻小柄の際にわだいとっなったブラシを持った小柄版。恐らく以下のもので間違いないと思う。
見てみると猿の表情が全く同じであった。
なぜ敢えて安親はブラシの有り無しを作ったのだろうか。

安親 猿猴とブラシ図 (画像出典:「奈良三作」より)

https://www.instagram.com/p/Cotl8lmvhZj/?img_index=1



・終わりに

並んでいる刀や刀装具は全てて個人蔵の名品になります。
無銘の指定品が多く気持ち半分くらいで行ったのですが、行ったら行ったらでやはり楽しめました。
ちょっと文章だらけで良く分からなかったとは思いますが、4/14まで両国で行われていますので興味のある方は是非行かれてみては如何でしょうか!


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それでは皆様良き刀ライフを!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

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