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Nick Drake(ニックドレイク)/Pink Moon(ピンクムーン)ディスクレビュー

「彼が見た光」

この作品はニックドレイク3作目のオリジナルアルバムである
タイトル曲のPink Moonは多くのミュージシャンから愛されカバーもされている
全編ギターとピアノと声でシンプルに構築されているのが特徴的である


まず「Pink Moon」から始まるアルバムだが
このアルバムの象徴となる曲でまさにシンプルな仕上がりとなっている
しかし構造は複雑で直感も理論もすべて詰め込まれているような音作りで
無為に説明するのがバカに思えて頭ではなく心で聞きたい曲である
夜空を仰ぐことの尊さに気付かせてくれて
生きるとはそういうことだと感じさせてくれた

他の曲で印象的だったのが「Which Will」である
ギターのフレーズが印象的でそこにはめ込む歌だけで充分成立している
川の水のようにただ流れているだけで意味があるような曲である

次には「Things Behind The Sun」
この曲は展開が素晴らしくサビに入ると光が差し込むようで救いがある
ただ悲しむことだけではなく顔を上げることを表現してくれているかのようで
アルバムの途中でこういう曲が入ることで最後まで飽きずに聞くことが出来る

後の曲では「Parasite」
この曲はイントロから良くて浮遊してどこまでも行けそうな気分にさせてくれる
今いる場所で凝り固まるのではなくもっともっと視野を広げてくれて
大事なことは違うところにあると気付かせてくれる
自分がしょうもないことになっている時に聞くのがオススメである

そして次に残っている曲が「From The Morning」
アルバムの最後の曲である
綺麗で青い光が降る曲で落ち着きとこれからの希望が満ち満ちている
特別ではないかもしれないけど今こそが何より唯一だと思える
この曲からまた最初のPink Moonに戻る流れが最高である


明るさと暗さが共存していて絶妙な混ざり具合の作品である
決して丁寧ではないけれど演奏の強さに導かれるし
このトゲトゲしさが人間らしくて惹かれてしまう
一つ勿体無いのはメロディーも音作りもポップなのだけど
孤独が強過ぎてオリジナル過ぎるのでなかなか伝わりづらいかもしれない所だ

事実として発売してすぐに認められたアルバムではない
しかしながらそういった姿勢だからこそ見れた世界なので
強くは否定できない所でもある


アルバムは全体的にチャレンジしていて落ち着かないのが素晴らしかった
インストゥルメンタルの曲も入れたりして置きに行かない
真面目に音楽を愛しているからこそ手の届いた場所なのだろう

ビジョンがハッキリしているから一つのストーリーが一枚として仕上がっていて
サクサクと進んで行くので何周も聞くことができる作品だと思う
大袈裟なものが好きな人にはあまり合わないかもしれないが
広がりあるこの時代にこそオススメしたい一枚である


変幻自在のクリエーターユニット「KATANAGARI」です。基本ミュージシャンとライターです。Apple musicなどでカバー音楽、オリジナル音楽を配信しています。 https://itunes.apple.com/jp/artist/katanagari/1288449046