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探究学習の先進校・郁文館高校へ訪問。そこで感じた探究の “リアル” と “これから”

こんにちは!カタリバnote編集担当のもりはるです。
カタリバは、10代の子どもたちがどんな環境に生まれ育っても、未来はつくれると信じられる社会を目指し、2001年から活動する教育NPOです。様々な活動の中で、今回はカタリバが実施している、文京区にある私立郁文館高校の社会探究伴走支援事業についてご紹介します。

2022年4月からすべての高校で必修授業となった「総合的な探究の時間」。探究学習の時間では、生徒一人ひとりの興味関心に沿って、生徒が主体となってテーマを立てて探究を進めていきます。

いろんな学校が、探究学習の進め方について模索している中、郁文館高校は探究学習の先進校的存在。平成19年から社会探究という授業がスタートし、しばらくしてカタリバもサポートに入っています。また、昨年度からメンターによる生徒の探究活動への個別伴走に力を入れており、11月と3月には校内にて発表会を行っています。

この度、2023年3月17日に行われた「最終発表会」にゲストとして参加させていただいたので、生徒たちの発表の様子や、私が得た気づきなどを紹介します。探究活動に取り組んでいる高校生や伴走している先生方に読んでいただけると嬉しいです。

探究テーマは「株」「薬物依存」「ジブリ」など多種多様

最終発表会当日。自分が学生だったときを除いて学校現場へ訪問する機会はなかなかないので、少しそわそわした気持ちで校内へ。すれ違う生徒みんなが「こんにちは!」と挨拶をしてくれたので緊張がほぐれました。

オープニングでは1つの教室に先生、生徒、カタリバスタッフが集い、発表会の目的について共有がありました。

▼発表会の目的

本発表会は、プロジェクトを通して得た「学び」を、参加者全員が共有するための場です。本発表会を通して、これまでの探究についての学びや気づきを言語化し、これからの生徒の日常に活かしてほしいと考えています。

生徒たちはこれから発表が始まるので、緊張のため少し顔がこわばっている子もいれば、十分に準備ができているのか堂々としている子もいました。

探究学習のテーマは、生徒一人ひとりの興味関心に沿って設定するので多種多様。
郁文館高校の生徒の探究テーマも、「政治」や「株」、「ファッション・コスメ」、「薬物依存」、「貧困」、「ジブリ」など、多岐に渡ります。

当日は31つのプロジェクトを3〜4つにグループ分けし、8つのブースに分かれて発表を行いました。1つのブースにファシリテーター1人と、ゲスト1人がつき、発表後にコメントをします。私はブース①のゲスト担当として参加しました。

生徒同士で問いかけることで、学びの質は上がる

発表会の様子

私が担当したグループでは、「薬物依存」「子どもの貧困解決」「若者の政治参加」「多文化理解」の4つの探究テーマ発表がありました。

どの発表でも、発表後にファシリテーターやゲストだけでなく、発表を聞いていた他の生徒からも学びを深める問いかけが。

テーマ:薬物依存をフックとした社会病理学の要因と解決法について

発表後の問いかけ:
「小中学校で薬物防止の授業があったけど、眠かったのを覚えている。授業をもっと面白くして、薬物依存の怖さを伝えられれば良いけど……」
「じゃあ、授業を劇にするのはどうかな?」
「去年カナダ留学したときに、実際に薬物を使っているところを見たし、匂いもした。なぜカナダでは良くて、日本ではダメなのか知りたい」

テーマ:衣服に着目した子どもの貧困へのアクション

発表後の問いかけ:
「 “服”にこだわり続けたのはなぜ?」
「フィリピンへ留学したとき、スラムにいた子たちがスマホを持っていた。イメージと違ってびっくりしたし、日本と海外の当たり前は違うんだなあと思った」

テーマ:若者にも政治を身近に感じてもらう

発表後の問いかけ:
「若者の投票率に興味をもったきっかけは?」
「投票率が上がると、どんないいことがある?」

テーマ:高校生×留学生 多文化交流会

発表後の問いかけ:
「多様性から感じるギャップや居心地の悪さはとても大事だと思う。プロジェクトを進める中で、ギャップを感じた瞬間はあった?」
「多様性という言葉を多用することで、問題が隠されていることがあるかもしれない」

ファシリテーターやゲストなど、外部から来た大人のアドバイスが役に立つこともあるかもしれませんが、それ以上に、生徒同士で問いかけ合うことで、より学びは深まるように感じました。

例えば「若者の政治参加」の発表後には、どうやったら選挙率が上がるんだろうという問いかけから、「投票したらお金を配る、イベントのチケット配るなどやっている企業はある」「それでも投票率が上がらないのはなぜなんだろう」と、より質の高い悩みに転換している様子が見て取れました。

このように、生徒同士でアドバイスしあうことで、探究に必要な様々な観点を学べるということは発見でした。

一人ひとりの探究プロジェクトに優劣はない

生徒が記入したリフレクションシート

最終発表会に参加した生徒からは、こんな声が。

  • 探究学習を通じて、発表やプレゼンテーション能力が上がった

  • 自分主体で探究しているため、自分が主体となって企画から実施までする力がついた

  • メールの送り方や、企業へのアプローチ方法を学べた

  • 世の中のニュースに目を向けるようになった

  • 今回の探究テーマは、今後必ず自分に関係してくるので、これからも頑張りたい

  • 探究活動を進める中で、もっと海外の文化や価値観を学びたいという想いが強くなった。将来は外国を訪れ、新しい発見や経験を積み重ねていきたいと思った

  • 自己肯定感が上がり、自分の魅力にも気づけた

探究活動では何かしらのスキルが身についたり、能力が上がったりすることもあれば、新たな夢が見つかるなど将来につながったりすることもあるというのは、私自身勉強になりました。

発表会にゲストという立場で参加させていただき実感したのは、一人ひとりプロジェクトの進み具合や学びの深度に違いはあれど、探究テーマ・プロジェクト内容に優劣はないということ。

何より、純粋な興味によって探究学習を始めた子もいれば、総合型選抜のために始めた子もいる中で、他の授業や部活動などと並行して最後までやり遂げたことは、素晴らしいと思いました。

そして探究活動に関わることで、生徒だけでなく大人にも学びがあるので、先生方だけでなく、外部の大人のリソースをどんどん活用していくことはとても大事だと感じた一日となりました。

文:森田 晴香

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