【実は難しくない】「ドラえもん」で考える「メディアリテラシー」3つの要素
訪問いただきありがとうございます、教育探求家・ビデオグラファーの加藤聡です(元・日本テレビアナウンサー/報道キャスター)。
今回のテーマは「メディアリテラシー」です。
私たちが対話を通じて社会を形作っていくためには、1人1人が主体的にものごとを判断する基盤として、情報の利活用は必須です。
私はこれまで、テレビ報道での経験を背景に、小・中・高校での出張授業や通年ゼミ、PTA関係者むけセミナーなどの様々な機会で、メディアリテラシーについてお話ししてきました。
専門家の方々の発信されている情報も参考にしながら、私なりの考えを整理したものです。一つの見方として、ご参考になれば嬉しいです。
「メディア」=情報を伝達する中間的存在
まず、メディアリテラシーの「メディア」色んな言葉に使われています。
例えば「マスメディア」
テレビ・新聞・ラジオなどを指す言葉ですね。
次に「ソーシャルメディア」
X(旧ツイッター)やfacebook、Instagramなど様々なSNSが普及しています。
他にも「記録メディア」
ハードディスクドライブやSDカード、SSDといった、データを記録する媒体のことですね。
これら全てに含まれる「メディア」語源は「MEDIUM=中間」ですよね。
私は、「情報を伝達する中間的な存在」がメディアであると捉えています。
「メディアリテラシー」を構成する3つの要素
この「メディア」に「リテラシー(読み書く能力/利活用する力)」を合わせた「メディアリテラシー」とは、何でしょうか。
情報が届くまでには、大きく3つの要素があると思います。
まず、出来事。情報そのものです。
そして、私たち一人一人。情報を受け取る主体です。
これをつなぐ部分に、「メディア」が介在していることになります。
情報伝達を担うのが、マスメディアの場合もあれば、最近では個人のSNSも含めてメディアのあり方は様々です。
メディアのあり方が多様化する中で、それを読み解く「メディアリテラシー」は、難しいことのように感じるかもしれません。
「ドラえもん」で考えれば、実は難しくない!
でも、安心してください。メディアリテラシーの素養は、多くの人々が自然と身につけていると思っています。
国民的アニメ「ドラえもん」を題材に、考えてみます。
想像してください、あなたはのび太くんです。
ある時、ジャイアンがあなた(のび太)にこう言いました。
「おい、のび太。一緒に勉強しようぜ」
これは、のび太にとってどんな意味を持つでしょうか。
日常生活の中で、のび太はジャイアンから嫌な思いをさせられたことも多いので、ネガティブな感情が少なからず芽生えると思うんですね。
一方で、しずかちゃんから「のび太さん、一緒に勉強しましょう」と声をかけられた場面を想像してほしいんです。
好意を寄せているしずかちゃんから誘われて、のび太くんは嬉しい気持ちになると思います。
いずれも「クラスメートから勉強に誘われた」という点では、“同じ出来事”と言えるかもしれません。
しかし、その意味合いは、かなり異なります。過去の経験の積み重ね・人間関係などを背景に、当事者にとって、その出来事の意味・印象は自ずと異なってくるということです。
では、続いて別のケースです。
今度はスネ夫がこう言いました。
「おい、のび太。しずかちゃんが一緒に勉強しようって言ってたぞ」
これは、本当だったらうれしい出来事だと思うんですよね。
でも、そのニュースをのび太に伝えてきたのはスネ夫です。ひょっとしたらイタズラかもしれない、警戒した方が良いかもしれませんね。
一方で、同じニュースをドラえもんが伝えてきた場合はどうでしょうか。
ドラえもんがのび太くんを意図的にだますことはほとんど想定されないため、言葉通りに受け止めて良さそうですね。
この2つの対比で感じ取れるのは、同じ情報であっても、それを伝える主体(メディア)によって、情報を受け取る当事者にとっての意味・印象は異なるということです。
ここまで見てきた2つのケースについて、多くの方が「うんうん、そうだよね」と感じられたと思います。すなわち、メディアリテラシーの素養は、皆さんに既に備わっているのです。
3つの要素が分かれば、面白いほどよくわかる!
私たちに情報が届くまでの3つの要素と照らして、ケーススタディーを整理します。
「ステップ1・出来事」
勉強に誘ってきた当事者がジャイアンなのか、しずかちゃんなのか。
それはのび太にとって、ポジティブなのかネガティブなのか。
「ステップ2・メディア」
その情報を届けたメディアは、スネ夫なのか、ドラえもんなのか。
それはのび太にとって、信頼していいのか、警戒すべきなのか。
「ステップ3・あなた」
自分自身、今回でいえばのび太は、上述のステップ1とステップ2について、理解しているか。
「ドラえもん」においては、キャラクター同士の人間関係、お決まりのパターン、文脈の共通認識があるため、今回のケーススタディーを解像度高く理解できるわけです。
日々のニュースは「連続ドラマを途中から視聴する」感覚
では、同じことが、世の中の様々な情報を受け取った時にもできているか。
それが実社会におけるメディアリテラシーだと思っています。
例えば、よくニュースに出てくる、アメリカや中国、ロシア、韓国、北朝鮮といった諸外国(ある意味“登場人物”)の「キャラクター」日本との関係性、歴史的な経緯、現在抱えている課題などの前提を把握しているか。
その理解があれば、ニュースの意味や印象、次の展開の予測などが自然とわかります。
しかし、そのハードルは高いのも現実です。
なぜなら、ニュースはその名の通り「新しい」部分に基本的にフォーカスするので、前提となる情報をいちいち丁寧に解説はしてくれないからです。
日々のニュースから受け取れる情報は断片的になりがちで、体系的な情報としてインプットする機会が充実していないのです。
これって、連続ドラマを途中から見させられているような感覚と近いのではないでしょうか。
登場人物やこれまでの主な出来事といった前提が欠落している状態で、連続ドラマの最新の話ばっかり飛び込んできても、それを受け止めるのは難しいですね。
ニュースをわかりやすく解説するコンテンツ、例えば池上彰さんの番組がゴールデンタイムに放送されているのも、こうした背景がニーズにつながっていると思います。
では、個人としては、どうすればよいのでしょうか。
情報を利活用するスキルを身につけ、日々の生活の中で実践していく。
フェイクニュースやフィルターバブル、SNSの危険性といった課題を理解した上で、インターネット社会のメリットを最大化する情報環境を整えていくことが重要だと思っています。
(自分自身ができているわけでもないと自覚していますが、自戒も込めて)
次回以降は、情報を利活用する具体的・実践的なポイントについて記していきたいと思います。
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