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【“視聴率100%”の可能性】元テレビ報道キャスターが公教育にフォーカスする思い

訪問いただきありがとうございます、教育探求家・ビデオグラファーの加藤聡です(元・日本テレビアナウンサー/報道キャスター)。

これまで3回にわたり、日テレでの歩みNPOカタリバでの歩み個人としての取り組み、それぞれを問題意識(=問い)と共に振り返ってきました。

今回は、こうしたキャリアの変遷に通底する私の問題意識、なぜ「教育」が関心テーマなのか?について整理してみたいと思います。


民主主義社会の土台としての教育・福祉

先制国家の横暴な振る舞い、民主主義国家における社会の分断。いま、民主主義がピンチに直面しています・・・と言っても実は、民主主義国家の歴史は浅く、世界において少数派なのが現実でもあります。

出典:Our World in Data

こちらの世界地図、それぞれの国が4つの政治体制で色分けされています(以下の日本語訳:サイトのGoogle翻訳より)。

  • 赤色   :閉鎖的な独裁国家(国民は複数政​​党の選挙を通じて政府の最高責任者や議会を選ぶ権利を持っていない)

  • オレンジ色:選挙独裁国家(結社の自由や表現の自由など、選挙を有意義で自由かつ公正なものにするいくつかの自由が欠けている)

  • 水色   :選挙民主主義国家(国民は、有意義で自由かつ公正な複数政党の選挙に参加する権利を有する)

  • 青色   :自由民主主義国家(国民は、さらに個人的および少数派の権利を有し、法の下で平等であり、政府の行動は立法府・裁判所によって制約される)

引用元ページでは、1789年(フランス革命)から2022年までの変遷をアニメーションで確認でき、たいへん興味深いです。

私の実現したい社会(ビジョン)は、民主主義の実現です。
社会を構成する1人1人が、お互いの自由を尊重しながら、対話を通じて共通了解を見出していく。

しかし、こうした理想はそもそも実現が難しく、時間も労力もかかります。
スピードを重視すれば、強力な権限を特定の団体や個人に委ねる。あるいは、多数決という乱暴な手段に頼ることに帰結しがちです。

少数の意見も尊重しながら、社会を“民主的に”運営していくのは、極めて難しい営みだと思っています。

そもそも、なぜ民主主義を追求したいのか?自分でも正直よく分かりません。個人の利益を追求する方が、よほど生きやすいのかもしれません。
うまく説明できないけれど、湧き上がってくる思いを自覚しているような状態です・・これがロマン、というものでしょうか(笑)

それでも、民主主義を諦めたくないのです。
では、実現に近づくには何が必要なのでしょうか?
私なりに整理すると、教育と福祉が特に重要だと思うのです。

こうした基盤の上に、情報インフラ・権力の監視としてジャーナリズムも不可欠

公教育は“視聴率100%のメディア”

こうしたキーワードを踏まえ、教育プログラムを社会に提供・実践していくのが、公教育に求められる役割だと思うのです。

ここでいう「公教育」は、公立の学校に限らず、私立の学校や社会教育(市民教育・生涯学習)も含め、“公の目的で行われる教育”の総称です。

そして、日本社会においては、大多数が経験する小・中・高校は、特にチャンスです。テレビに例えば、“視聴率100%のコンテンツ”と言えるかもしれません。

もちろん、現実には100%ではありません。
不登校や高校に進学しない子どもたちなど、取り残されているケースに向き合い、100%を達成することが重要です。
また、強制性ゆえに大いなる責任も伴います。視聴「率」だけでなく、視聴「質」を高めていく努力も不可欠です。

しかし、教育現場はいま、当事者たちの悲鳴であふれています。

子どもの悲鳴 不登校が過去最多を更新

まず、子どもたちの悲鳴です。
文科省の調査結果では、全国の小中学校で不登校の児童・生徒は約29万9000人と、過去最多を更新しています。

NHK記事より画像引用

なお、この数字は「年間30日以上の欠席」が集計されたものです。
欠席日数が29日以下だったり、登校していても、教室ではなく保健室で過ごす子どもなどはカウントされていません。
NPOカタリバが実施した独自調査では、不登校“傾向”の子どもは41万人という結果に。より深刻な実態が見えてきます。

学校への行きづらさ、居心地の悪さを感じている子どもたち。
理由はそれぞれでしょうが、日本財団が行った「こども1万人意識調査」から、多くの子どもたちが求めているものが見えてきます。

日本財団「こども1万人意識調査」より

小中学生が望むこと1位は「学校教育の内容や規則の見直し」。こうした声にどう向き合い、学校づくりに結実させていくのか。大人たちの行動と責任が問われています。

この調査結果について、NPOカタリバで「ルールメイキング」事業を担当している古野香織さんの記事がよくまとまっています、是非ご覧ください。

先生の悲鳴 過剰な負担・なり手不足の悪循環

学校に変化を求める子どもたち。
その一方で、先生たちも大きな課題に直面しています。

多種多様な役割を求められ、多忙を極める先生たち。「給特法」により、いくら残業しても収入は増えない。なり手不足も深刻です。
先生たちの働き方を改善することは、喫緊の課題です。

では、どうすればいいのでしょうか。
多岐にわたる先生の業務を見直し、担い手を増やし、適正な形に整えていく。中央教育審議会の答申(2019年1月)で、整理されています。

中央教育審議会の答申(平成31年1月)29ページより抜粋

先生の負担を軽減しながら、同時に、必要な機能を維持・強化していくためには、学校を社会に開いていくことがカギになると思います。
福祉など関連部署との接続、保護者や地域コミュニティーとの連携、専門人材の配置。デジタルツールの利活用も重要になるでしょう。

保護者・地域社会の悲鳴

ここまで、子どもたち、先生たちの目線から現状を考えてきましたが、保護者や地域社会も課題を抱えています。

【保護者の悲鳴】
・家庭の経済力の差が、旅行や習い事など「体験格差」につながってしまう
・「サラリーマン・専業主婦」モデルを“前提”に運営されてきたPTA活動が、共働き世帯の増加やひとり親家庭にそぐわない制度疲労

【社会の悲鳴】
・少子高齢化に加えコロナもきっかけに交流の機会が減り、町の活力がどんどん失われている
・進学や就職をきっかけに、次世代を担う若者が町からいなくなってしまう

こうした課題に対し、素敵な取り組みも生まれています。

例えば、子どもの「体験格差」を解消するプロジェクト。

例えば、地方にある魅力を生かし、学校を核とした地域活性化。

先進事例のPDCAサイクルを回しながら、教育を起点に持続可能な社会のあり方を模索・実践していく。絶望することの多い社会ですが、希望の光を育て、広げていく。そんな営みに参画する一人でありたいと思っています。

当然ながら、マイノリティーの観点も加味する必要があります。
障がい、LGBTQ、ひとり親家庭、外国ルーツ・・・様々な背景を抱える少数者は、今回の記事で主に見てきた「多数者が抱えている課題」に加えて、プラスアルファの難題に苦しんでいるからです。

次回予告 キーワードは「自由の相互承認」

今回の記事で見てきたように、課題が山積みの教育現場。
論点は多岐に渡り、解決アプローチも多種多様でしょう。

その難題に取り組むにあたり、どんな価値観に立脚すれば良いのでしょうか。私は「自由の相互承認」がキーワードになると考えています。

次回の記事で記していきたいと思います。

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