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センスのない営業と呼ばれて。

今日は金曜日。

19時過ぎ、ちょうど妻と1週間お疲れ様!と言いながら晩御飯(ちょっと奮発して買ってきた近所の美味しい焼肉弁当)をいただきますしようとしたとき、私の携帯電話が鳴った。

こんなタイミングで誰だ?と思いながらディスプレイを見ると、自動車ディーラーの営業さんである。

目の前にはまだ温かい焼肉弁当。
私はしずかに携帯電話を伏せた。


妻「金曜日のこんな時間に連絡してくるなんて、センスないね」
私「金曜日の14時以降は予定とか連絡いれちゃいかんよね」


などと、偉そうに話していたが、私にも苦い想い出がある。


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まだ私が新卒で営業担当をしていたときのこと。
担当していたクライアントの中に、超大手企業のちょっとコワモテな担当さんがいた。ここでは仮にラガーさんと呼ばせて頂く。

ラガーさんは恐らく40代半ばくらいだっただろうか。
もともとは先輩が担当していたクライアントだったのだけれど、私が引き継ぐことになった。先輩曰く、仕事には厳しいけれどとてもいい担当者だという。

私は、ラガーさんのことが正直ちょっと苦手だった。
なんか分からないけれど、圧がすんごいのである。
そもそも顔が怖い、声が野太い、身体がゴツイ。そして関西弁。
私も出身は関西なので、関西弁には慣れっこのはずだけれど、ドスのきいた関西弁は慣れている人にとっても迫力がある。


当時、採用広告の営業をしていた私は、ラガーさん率いる企業の採用をご支援する立場にあった。数週間後からスタートする説明会のための募集広告の原稿を作成し、確認依頼のためにラガーさんにメールを送り、その後に電話をかけた。そう、金曜日の16時過ぎに。

やっと繋がった電話で、ラガーさんに原稿の確認をお願いすると、
マジで言うてんの? 俺もう帰って風呂入ってビール飲むところやで。金曜の午後に連絡してくんなや」と、これまたドスのきいた関西弁でのご返答。

今になって思えば、ラガーさんなりのシニカルなユーモアな返しであることは分かる。いくら金曜だとて、16時に家で風呂入ってビールを飲もうとしている人事なんて、そうそういない。
ただ、それぐらいのテンションのときに、新しいタスクを放り投げてくるなよ!というメッセージなのである。

誰だって金曜日(休み前)は早く帰ってゆっくりしたい。

そんなところにタスクを放り込むのは、どう考えたって配慮が足りない。
ましてや、営業からクライアントへの依頼なら、せめて一言「金曜の午後に申し訳ない」という旨の声掛けくらいはしたってバチは当たらない。


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当時の私は、ラガーさんを怒らせてしまったとビクついていたのだけれど、とてもよい学びになった。

何かを依頼するときに、相手がどういう状況にあるのか。
タイミングが適切か、配慮すべきことはないか。

そんなことを自然と考える意識が持てるようになった。
(もちろん、今から風呂入るところですか?などとは聞かないが)


ちなみに、ビールを飲もうとしていたはずのラガーさんはすぐに内容を確認してくれて「OK!ありがとう!」と返信をくれた。

仕事は早いし、いいクライアントなのである。(おそらく最近ではこういうタイプの社外上司のような人は珍しいのだけれど)


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はてさて、私は自動車ディーラーの営業さんにとってのラガーさんになり得るだろうか、と一瞬だけ逡巡したけれど、すぐに目の前の焼肉弁当に意識が刈り取られました。

金曜日の午後は要注意ですよ。



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