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アメリカ転職 スタートダッシュ戦略 ズルいが一目置かれるインプット

僕はアメリカの製薬会社で働く日本人研究者。アメリカに渡って20年目となる今年2023年に5度目の転職をした。12月に新たな会社での仕事をスタートさせたばかり。新たな会社では情報の洪水が押し寄せる。新たな上司、同僚、組織、仕事のプロセス、プロジェクト。。。インプットの量は膨大だ。新入社員のための一般研修、社内ウェブサイト、仕事の関連資料など指示されたインプットを、真面目に全てこなそうとしたら、とんでもない時間とエネルギーを要する。しかも、ここはアメリカ、英語を読むのは、アメリカ人よりずっと遅い。ズルい戦略が必要だ。5度の転職を経験し、そこから蓄えたズルい知恵で、一目置かれるインプットを実践中。


1.一般研修は成績よりもスピード

僕は今回、小さなスタートアップ会社から大企業へ転職した。大企業ほど新入社員が受ける一般研修は充実している。会社のポリシー、コンプライアンス、コンピュータシステム、組織・部署のワークインストラクションなど受ける研修は多義に渡り、その量は膨大だ。それぞれのトレーニングを作られた研修担当には、申し訳ないが、これらを全て真面目にこなそうとしたら、膨大な時間とエネルギーを消費する。しかも、僕のような人間はたとえ真剣に時間をかけて受けても、ほとんど残らない。だから、すっ飛ばし戦略をとる。

オンライン上で行うトレーニングが、たくさん整備されている場合、以下の戦略をとる。

  • もし、ただ文書を読むだけ、あるいは、ビデオを見るだけで、確認のテストもなく完了できるのなら、やったことにして完了としてしまう。

  • トレーニングの後に確認のテストがあるものは、トレーニングはすっ飛ばしてテストだけ受ける。1回で合格できなくても、何度かテストを繰り返して合格にたどり着く。それでも初めからトレーニングをまともにやるよりはずっと早く完了できる。

  • 自分にとって必要なことでも、一般研修なら躊躇なく、すっ飛ばし戦略をとる。大切なことでも、1回のトレーニングで習得する集中力も能力も自分には持ち合わせていないことを知っている。本当に必要なものは、実際の仕事でトライアンドエラーを繰り返しながら覚えるのが自分だと自覚している。

  • 実際に100以上あったオンライン研修(期限が来年までのものまで含めて)すべてを2週間で終わらせた。と言うか、すっ飛ばした。

研修担当がこれを聞いたら怒るだろう。でも、最も大切な評価を下す人間は、研修担当ではない。直属上司や自分の仕事に関わるキーパーソンだ。彼らは、これらの一般研修については、成績ではなく、スピードで評価する。いくら時間をかけて真面目にやって、トレーニング後の確認テストの成績が良くても、それを評価することはない。それより、どれだけ早く完了して、自分本来の仕事を開始できるかの方が重要だ。

速攻で完了させるもう一つのメリットは、自分が精神的に楽になることだ。転職は大きな変化だ。新たな職場で新たな同僚と新たな仕事をスタートさせる。目に見えない、自分でも気づいていない様々なストレスがかかっている。慣れないことばかりだ。それに加えてたくさんの研修が未完了のままで長く残っていることは、精神衛生上よい訳がない。すべての一般研修課題をなるべく早くすべて完了にし、心に余裕を持っておくことが、自分の精神状態をとても楽にする。


2.上司からの「これに目を通しておいてくれ」の指示

一方、自分にとってのキーステークホルダー、すなわち直属上司やその他の自分の仕事に直接関わる重要人物からのインプットの指示は、一般研修とは全然重みが違う。
上司から直々に「これに目を通しておいてくれ」と言われたら、それは自分だけへのオーダーメイドのインプットだ。極上の情報が得られるインプットかもしれない。ただ、ここでも指示された資料を片っ端からすべて読んでいけば、自分のキャパシティは簡単に飽和してしまう。再度、ズルい選択と集中の戦略が必要だ。

ゴミか宝か?

いくら上司からの指示とはいえ、重要度は状況によって異なる。軽い気持ちでシェアしてくれただけで大して重要でないかもしれない。すでに知っている内容かもしれない。逆に、超重要な情報の場合もある。インプット材料の目次、要約、結論など、ピンポイントで判断できる部分を確認し、「ゴミ」か、重要な情報や知識が得られる「宝」かを見極める。この見極め力は、経験を重ねて磨き上げるしかない。

自分はすでに知っている情報で、新たに得られることはない「ゴミ」と判断できれば、時間をかけずに終わらせる。ただし、新たな上司との良い人間関係の構築は転職直後には超重要だから、「宝」を「ゴミ」と見間違えないようには注意した方がよい。自分は十分知っている情報でも、上司が自分に何かアウトプットを期待しているのであれば、それは上司との信頼関係を一気に高める「宝」だ。

上司は自分に何を期待しているか?

「宝」と見極めたら、次に、指示した上司は、自分に何を期待しているか?を考える。
例えば、上司は、与えた資料の内容をしっかり知識として蓄え、今後の仕事に役立ててほしいと期待しているかもしれない。
あるいは、このインプットから得られた情報と自分のこれまでの経験を照らし合わせて相違点を知りたいと期待しているかもしれない。後者なら、期待は、インプットだけでなく、その後のアウトプットまでとなる。

仮説に基づいてゴールを決める

  • 宝だが、緊急のアウトプットは必要ないとなったら、ゴールは、その宝を将来アウトプットで活用できるように自分の中に体系化して持っておくことになる。

  • 上司がアウトプットまで期待していると判断されたら、ゴールは、宝としてインプットするだけでなく、アウトプットするところまでになる。指示された状況から適切なタイムラインも考慮に入れる。アウトプットは、質よりもスピード重視だ。最低でもギリギリ合格ラインの質のアウトプットを、上司が期待しているタイミングで、タイムリーに行うことがゴールとなる。願わくば、期待以上のクォリティで、しかもより迅速にアウトプットできれば、早期に上司や仲間から一目置かれる信頼を勝ち取る貴重な機会となる。

与えられたインプット材料を疑う

いくら上司に目を通せと言われても、ズルい僕はもっと楽な方法を考える。目を通す資料が1ページならいいが、1000ページの英文資料なら、まともに読んでいられない! 与えられたインプット材料が、本当に効率よく情報を収集するために最適のものか疑う。周りの仲間に聞けば、より簡潔な資料を教えてくれたりする。ネット上や会社のシェアフォルダを探すと、簡潔にまとめられたスライドが見つかったりする。より効率的に、楽にインプットできる資料が見つかる可能性は結構高い。Chat GPTで元の資料を要約させたり、より簡潔な資料を探させたりすることもできる。日本人の僕は、その特権を利用して、ネット上で日本人が日本語でまとめた要約スライドなどを探す。英語で読むより、日本語の方が楽なのはもちろんだが、日本人のスライドはビジュアル的にもクォリティが高く、分かりやすい。

指示された資料以外の周辺資料を見渡すことは、効率化・時間の節約だけでなく、おまけの効果もある。上司に渡された資料には書かれていない別の有用な情報が載っているかもしれない。そうしたら、それは重要な付加価値となる。特にアウトプットを求められている場合は、期待されたアウトプットに留まらず、付加価値をつけて圧倒的なアウトプットができるチャンスだ。特に日本語資料のように言語が異なるとロジックが変わるので別の視点から物事が見れる。アメリカ人の同僚ができない僕だけのユニークな切り口のアウトプットができるかもしれない。

そして戦略を完成させ、実行

ゴール、タイムライン、自分に適したインプット材料の全部が明らかとなったら、ゴールとタイムラインから逆算した、自分に最適のインプット戦略を立てる。偉そうに自分が編み出した戦略のように書いているが、実はこれらは、誰もがある程度やっていることだと思う。でも、しっかり言語化して意識して実行するのと、何となくやっているのとでは、大きな差が出る。


3.アウトプットの土台作り

社員は会社に貢献すること、すなわちアウトプットして給料をもらう。だから、すべてのインプットはインパクトのあるアウトプットをするためのものだ。せっかくインプットしたものは、体系化してまとめておき、インパクトのあるアウトプットができる状態にしておかないともったいない。

上司がいくら役に立つインプット材料をくれたとしても、それらは断片的なもの。ひとつひとつのインプットを断片的に完了させてしまうだけなのと、自分に最適化したオーダーメイドの体系化させた情報の蓄積として持っておくのとでは、将来のアウトプットの質にもスピードにも雲泥の差が生まれる。

・組織、人について
・会社の文化、意思決定プロセスについて
・プロジェクトについて
など、それぞれの全体像から細かい点まで、階層をつけて、体系化した情報として持っておけば、アウトプットを求められたときに的確にスピーディーに対応できる。

記録は具体的に、戦略は抽象的に

転職直後は分からないことだらけだ。体系化した情報は、週ごと、月ごとにアップデートしていく必要がある。日々得られた新しい知識・情報は具体的に記録する。逆に戦略は、あえて抽象的にしておく。情報が時間とともにアップデートされるのだから、情報に基づいて立てる戦略を具体的にし過ぎても修正ばかりすることになる。それに具体的にしすぎると戦略がちっぽけなものになりがちだ。抽象的だが壮大な戦略を掲げておき、それに向かって日々の小さな戦略を立てるのだ。


まとめ

簡単に言ってしまえば、超自分勝手に、自分にとって重要なものだけを選択し、それに集中してインプットする。インパクトのあるアウトプットがタイムリーにできるように、自分が使いやすいように体系化した情報として持っておくインプット戦略ということになる。
さあ、これで本当に一目置かれるインプット戦略になるかどうか? 現在実践中!

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