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読書感想「ChatGPTは世界をどう変えるのか」

はじめに

今回は読書感想文になります。
これからの生成AIを考える上で、たいへん勉強になる本でした。

以下に紙の本のリンクを貼っておきますが、kindle版もあります。

この本については、以下の記事でも紹介されていますので、
こちらも参考にしてみてください。

ここではどのような内容だったのか、
自分の視点から簡単に紹介できればと思います。

私のnoteを読んでくださったことのある方向けに、
この本を端的に説明しますと、
以下のnoteの、超パワーアップ版です。

私の場合はどうしても仕事の合間に書いている程度なのですが、
私より専門が近い技術畑の学者の方が、
メリット・デメリットとして考えられるものを、
より多角的に考察して下さる内容となっています。

ただ注意点として。
私の場合は、何らかのキッカケである程度、
生成AIに疑問を持った段階の方に向けた文言で書いていますが、
この本は「これからは生成AIの時代だ」、
と考える方に向けた文言で書かれています。

また、執筆時点は半年以上前になります。

そのため、既に問題に対峙してきた方が読む場合は、
強い肯定的な意見に見えてしまうポイントはありますので、
その辺りの補足もしていければと思います。


1章から2章  仕組み~応用

問題を熟知している方の場合、
1~2章が、一番読んでいて苦しくなる内容かもしれません。

1章では、ChatGPTの仕組みについて解説されています。
そのため、今までの生成AIと比べてどのような点が優れているのか、
といった話にはなります。
ただとても分かりやすく解説されていますので、
問題に対峙するためにもっと仕組みを理解したい方には、
とても有益な解説になっています。

2章では、想定される応用法の話になります。
なのでやはり、メリットが話の中心になります。
とはいえ、一概に肯定するばかりではなく、
そのメリットとするものの先に現れる問題にも言及されています。

言及が足りないなと感じる部分もありましたが、
本の流れ的にはこの段階で、
あまり否定的な内容を多くはしたくなかったのではないかと思います。
足りないと感じた部分は、最後に補足を書こうと思います。

インターネットを終焉させるのか

3章は、これがテーマになります。
ここに関して、読むまでこの副題にピンと来てはいませんでした。
内容は、自分には無かった視点であり、
大変勉強になりました。

確かに、ChatGPTのメリットに目を向ければ、
今までの検索が、より便利なもの、という側面もあります。

ただ、今まで享受していた無料の情報サービスは、
マネタイズがあったから成り立っているため。
その情報へのアクセスが今後生成AIを経由するならば、
その先には、どんな未来が待っているのだろうか…?

個人的には、本書で最も興味深かった部分でした。
ぜひ読んでみてください。

4章から5章  リスク~法的問題

4章では、リスクと弱点について語られます。
SNS上でよく議論を見る創作における問題は、
ChatGPTの本なのであまり触れられませんが、
セキュリティリスクなど生成AIの抱える他の問題を、
網羅的に言及して下さっています。

5章では、法的問題について書かれています。
「AIと著作権」についても語られており、
著作権法30条の4が、
議論を難しくしている側面についても触れられています。

著作権以外の問題も広く指摘されており、
新技術に対して法整備(ルール)が「先回りは出来ない」としつつも、
ルールが無ければ社会は受け入れないだろう、
という事にも言及して下さっています。

6章から7章  身近な影響~国際社会

6章では、社会をどう変えるのかについて、考察されています。
生成AIのある世界では、何がどうなっていくのか、
良い部分と、その落とし穴、
また、責任の所在がどうなっていくのかや、
電力問題にも言及されています。

7章では、国際社会の動きに注目しています。
それに対して日本は、
「規制はイノベーションを阻害する」という思い込みが強いけれど、
本当にそうだろうか、という事と、
その温度差が生み出す問題に言及して下さっています。

AIを真に使える社会へ

8章は、これがテーマとなります。

自分が生成AIには規制が必要だと考えるのも、
健全な技術発展には必要不可欠だと感じるからで、
細部の意見は異なる部分もありますが、
とても共感できる副題となっています。

ただ、規制を議論するときに、
既得権益に都合の良い話に誘導されないよう、
注意も必要と伝えて下さっています。

日本は流行を後追いしがちだけれども、
新しい技術の芽を育てる事の方が重要ではないかという話もあり、
ブームに踊らされるのではなく、
その未来も含めてしっかりと実態を見極めることが、
現代において大切な事だと改めて感じました。

今、技術と社会の未来を考える上で、
多くの考えるべきことを提示してくれる良書です。
問題を熟知している方には引っかかってしまう点もあると思いますが、
気になる方は、是非手に取って読んでみてください。


補足

本の構成上、2章では肯定的な面を多めにするためか、
一部落とし穴や懸念点への言及が不十分に感じたところがあったので、
自分の視点で懸念をここに補っておきたいと思います。

「会話するぬいぐるみ」

それが可能になるかもしれない、
AIと会話して育った子は、AIへの指示が上手くなるかも、
という事だけだったのですが、

・ 会話をぬいぐるみ任せにする親が出てはこないか
  → 時々問題になっている無責任な親の、更なる無責任化

・ 最初に友達を作る時は勇気がいるものだけれども、
  勇気を出すより、ぬいぐるみで良くなってしまわないか。
  → 登校拒否を助長しないか

などが気になりました。
他にも子どもの心の成長にどのような影響があるかなど、
市場に出る前に、議論されるべき懸念点は多い事柄に思います。

メタバースの賑やかし

メタバースは人が減ると過疎化が加速する、
という問題解決に繋がるかもしれない。
また、接続していない時のアバターは、
AIが代行して喋ると良いかも、という思想もある。
という事を紹介する内容でしたが、

・ 知らない間に自分のアバターでAIが代行して、
  何を喋っているのか分からないとか、普通に怖そう
  → 身に覚えのない「あなた、こう言ってましたよね」が生まれそう

・ メタバースという手段は、「他者との会話」が目的であったのに、
  「AIとの会話」を手段にして、メタバースの維持を目的とする…
  → 目的と手段の逆転というか、もう何のためにあるのか分からない

という点が気になりました。

ゲームのモブキャラクター

会話の単調さを改善できる、という話ですね。
よく聞く「生成AIはゲームにはメリットがある」という話ですが、

スカイリムのようにほとんどの村人が、
一定のランダムの内で同じことを喋っているような、
海外の大味な調整のゲームを思い浮かべれば、
もうちょっと何とかして、と感じるのは分かるのですが…

ゲームというのはほとんどの場合、
アクションやストーリーなどのゲーム性を楽しみたいのであって、
「NPCとの会話を楽しむ事を目的にゲームを起動する」
という事は少ないかと思います。

本の中で例に上がっている「どうぶつの森」の場合は、
どうぶつとの会話は楽しむこともゲーム性に含まれるものの、
永遠に会話が変化するとなると、ゲーム性が変わってきてしまいます。

ゲームというのは、ある程度で会話の区切りがあるから、
気兼ねなく次の「生活」、今日のうちに「やりたい事」の工程へ進めます。
そこが変質してしまうと、それはもう、
「どうぶつの森」とは別のゲーム性のものになっています。

会話が変化し続けるゲーム、というのもあって良いとは思いますが、
やはり他者との交流より心地よくなって閉じこもってしまう可能性、
それがもたらす功罪は、事前にしっかり議論されなければ、
新しい社会問題に繋がっていく懸念がある内容だとは、感じました。

かなりゲーム好き、ゲーマー目線での感想になるかもしれませんが…


補足は以上になります。
興味を持った方は是非、本の方も読んでみてください。
長文にも関わらずここまでお読み頂き、ありがとうございました。

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