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派手さだけじゃない映画「地球防衛軍」

 昔の映画を劇場で公開する「午前十時の映画祭」の公開作品として「地球防衛軍」が公開されました。
 8月13日に広島バルト11で見に行きました。今回はその感想を書いて行きます。

ストーリー



 富士山麓の村で謎の火災、村落丸ごと地盤沈下、川魚の大量死と異常事態が発生する。
 ついにはロボットの怪獣モゲラが現れて村を襲う。
 モゲラは防衛隊によって倒されたが、今度は宇宙人ミステリアンの要塞、巨大ドームが出現する。
 ミステリアンは富士山麓から半径3kmの土地をミステリアンに渡して欲しい事と、地球人の女性との結婚の自由を要求します。
 しかし、それまでミステリアンが火災や地盤沈下・モゲラでの襲撃に女性3人の拉致をした事から、日本政府はミステリアンの要求を拒み、攻撃すると決定する。
 防衛隊は戦車や火砲に戦闘機でミステリアンの要塞ドームを攻撃するものの、ミステリアンの反撃で大損害を受ける。
 それでも日本政府は各国に呼びかけ、全世界でミステリアンに対抗する事となる。
 こうして地球防衛軍が結成されるのだった。

東宝特撮作品初の宇宙人とロボット



 1957年(昭和32年)公開の映画「地球防衛軍」は東宝特撮作品にとっては初のジャンルに挑む作品です。
 宇宙人とロボットを初めて登場させ作品になりました。
 日本映画では1956年(昭和31年)の「宇宙人東京に現る」が宇宙人が登場する最初の作品です。
 円谷プロの「ウルトラシリーズ」第1作となる「ウルトラQ」放送が1966年(昭和41年)で、まさに「地球防衛軍」は宇宙人・ロボット怪獣を日本の特撮作品で登場させた最初期の作品なのです。

日本版宇宙戦争



 映画は村での異変から地球人とミステリンの戦争と言う流れです。
 兆候としての村の異常現象、何かを知っている科学者(平田昭彦演じる白石)からのモゲラ出現と要塞ドームの出現による大展開は王道な流れだ。
 宇宙人が攻めて来るSF作品と言えばH・G・ウェルズの小説「宇宙戦争」がその典型で、映画版は「地球防衛軍」の4年前である1953年にアメリカで製作されて公開されている。
 「宇宙戦争」での宇宙人は地球の病原菌によって倒されたと言う顛末で、地球人の抵抗で勝てたとは言い難い終わり方をしている。
 これに対して「地球防衛軍」は既存の火砲やミサイルが通用しないミステリアンに勝つ為に新兵器を作り反撃に挑む。
 日本では防衛隊の若手の発案で「電子砲」が作られ、外国(アメリカか?)でミステリアンのビームを跳ね返し、自らもビームも放つ「マーカライトファープ」が作られる。
 更には「α号」と「β号」なる空中戦艦も作られる。
 いきなり登場するこれら新兵器、ツッコミどころではあるが野暮である。
(「マブラヴオルタネイティブ」では1974年に人型ロボットの戦術機を開発しているし、創作の世界でのメカを楽しもうではないか)
対してミステリアンは、要塞が完成したら東日本を支配できる力を得ると作中で言います。
お互いが戦力を蓄えて勝つ為の準備を進める。

作品に見えるテーマ



 ミステリアンとの戦いで人類側は核兵器の使用はしないと決める。
 作中で志村喬演じる安達博士は、ミステリアンが核戦争で滅びかけた事を同じ事を繰り返してならないと核兵器の使用に反対する。
 ミステリアンが水爆で反撃すると言っていたのもあり、地球側からの核兵器使用が即座に核戦争へ発展するのは明らかなのもあるが、作品のテーマに沿っていると思われる。
 科学が地球よりも発展したミステリアンだったが、核戦争で滅びかける。 ついには子孫を残す事もままらない。
 発展した科学で得た力は、自らを滅ぼすと言うテーマがあるように思う。
 地球側はマーカライトファープと電磁砲を装備したβ号による総攻撃を開始
 マーカライトファープが20分しか攻撃を続けられないタイムリミットと、β号の電子砲の装備が完了して出撃するまでの、ギリギリ感の演出は最終決戦を盛り上げる演出だ。
 ラストはミステリアンの要塞ドームを破壊、ミステリアンは宇宙ステーションに逃げる。
 ミステリアンを撃退して終わりではあるものの、終盤で倒れているミステリアンの顔を見せ、安達博士が「ミステリアンは流浪の民となった」と言う台詞は敵を倒した高揚ではなく、ミステリアンを哀れむ終わり方になっている。
 米ソ冷戦による核戦争の危機が高まって行く時期に作られた背景がそこにある。
 それが「地球防衛軍」を派手な特撮作品だけに留まらない魅力となっている。

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