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憎しみは戦争を終わらせない?映画「ヒトラーの忘れもの」

 U-NEXTにて映画「ヒトラーの忘れもの」を見る。
 これはなかなかに良い作品でした。ラストが少し消化不良(見る側に任せていると言う意味で)な感じでもありましたが、重い内容の作品でありながら見て良かったと思える作品です。

敗者へ向けられる憎しみ



 映画「ヒトラーの忘れもの」の舞台は1945年のドイツが降伏した直後のデンマークです。捕虜のドイツ軍少年兵達はデンマーク軍からある仕事をさせられます。
 それはデンマークの海岸にドイツ軍が埋めた地雷の除去です。
 デンマーク軍から一応は地雷の除去について習った後で除去する現場へ送られます。
 そんな少年兵14人を指揮して、地雷の除去を監督する事になったラムスン軍曹はドイツ憎しが強い人物です。冒頭の登場した場面でも目についた捕虜のドイツ兵へ執拗に暴力を振るいます。
 出会った時から少年兵達をイビリ、少年兵への食料が不足していると言っても「勝手に飢えて死ねばいい」とまで言い放ちます。
 第二次世界大戦の初期である1940年からデンマークはナチスドイツの占領下にあり、1945年のデンマークではドイツ憎しは根強い。
 食べ物に困った少年兵達が牧場から家畜の餌を盗んで食べて食中毒になったと聞いた牧場の女主人は笑顔になる程にです。


ラムスン軍曹の心




 祖国を侵略したドイツ人を憎むラムスン軍曹でしたが、少年兵の一人が地雷除去中に地雷を爆発させていしまい重傷を負い、少年兵達が家畜の餌を食べて食中毒になって苦しむ様子を直で見て感情が変わって行きます。
 デンマーク軍の基地からパンなど食料を持ち帰り、少年兵達に与えます。
 それまで就寝時間では小屋へ閉じ込めていたのを止めたり、少年兵達に暴力を振るうデンマーク軍士官達を止めたり、休日は少年兵達と球技をやる程に少年兵達に心を開きます。
 しかし、地雷除去済みの所でラムスンの愛犬が地雷を踏んで死んでしまいます。
 これに怒ったラムスンは再び少年兵達に対して高圧的になり、地雷が本当に除去されているのか調べる為に少年兵達を海岸で歩かせます。
 憎しみから、心を開き、再度憎しむ
 ラムスンの心の動きはこの映画の軸となる部分で、ラストへの展開に関わります。


この映画が見せるモノ



 一応は地雷除去について教えられた少年兵達でしたが、危険でる事に変わりはない。
 信管を抜く瞬間や、信管と繋ぐワイヤーが出て来る瞬間など地雷に触れて作業する彼らの場面は見ていて胃がキリキリしそうなものがあります。
 そんな危険な作業を地雷についての知識と経験が乏しい少年兵にさせる。
 この不条理がまずあります。次いで戦争が終わっても少年兵へ向けられる憎しみをぶつけられる不条理
 当時のデンマーク人からすれば、子供でも侵略したドイツ人に変わりないと言うかもしれません。
 戦争が終わって祖国が取り戻せてもすぐに消えない憎しみ。
 憎しみに心が満ちていても、人として少年兵に寄り添う動きをするラムスン、しかしそれでも憎しみが再びラムスンの心を満たしてしまう。
 この映画は心がテーマな作品だなと思えました。
 本来ある人の心は戦争によって生じた憎しみに押し潰されるのか?
 これは作品を見て確かめて貰いたい。


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