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北朝鮮は新型無人機をどう使うのか?

 朝鮮戦争休戦協定締結から70周年を迎えた7月28日に、北朝鮮では記念行事として軍事パレードが行われました。
 この軍事パレードで初めて公開された兵器に二種類の無人機がありました。
 トレーラーに乗せられて登場したのはMQ-9リッパーにそっくりな機体と、会場上空を飛行したRQ-4グローバルホークのそっくりな機体

 どれも北朝鮮では、リッパーに似ている機体は「明星-9」でグルーバルホークに似ている機体は「明星ー4」と呼んでいるようだ。

北朝鮮無人機にイランの影?


イランのシャヘド129

 リッパーに似ている無人機は他にもあり、イランの「シャヘド129」があります。
 イランはリッパーだけではなく、2011年にアメリカ軍のRQ-170センチネルを鹵獲して複製しました。
 イランは複製型の「シームルグ」から武装が可能な型である「サエーゲ」を開発して実戦に投入、2018年にはイスラエルの領空でイスラエル軍の戦闘ヘリAH-64によって撃墜されている。

センチネルをイランが複製して作った「シームルグ」

 新たな技術を要する機体を、解体するなど調査してから丸ごとコピーするやり方はリバースエンジニアリングと呼ばれる方法だ。
 第二次世界大戦後に作られたソ連のTuー4爆撃機がある。
 このTuー4はアメリカのB-29をコピーした機体だ。戦争中に日本への爆撃をした米軍のB-29がソ連領内に着陸したのを接収して調査したのである。
 弾道ミサイルの始祖であるドイツのV-2をソ連は占領したドイツからV-2の実物と技術者を連れて行き、V-2を複製したR-1を開発します。
 これら他国の技術を吸収したソ連は、戦略爆撃機と弾道ミサイルを独自に作る技術を獲得してアメリカに対抗できる力を得ました。
 現代に話を戻すと、イランは最先端技術を含む無人機を鹵獲で実物を調査したり、諜報活動などの情報収集、独自の技術開発で作り続けています。
 これは敵対するアメリカやイスラエルへ対抗する為だ。
 実用では2019年にはサウジアラビアの石油関連施設の攻撃に無人機を使用し、これが現在のロシア軍のウクライナ侵攻でロシア軍がイラン製無人機を使用し続ける実績に繋がっている。
 イランは北朝鮮と友好的な関係にある。「明星ー4」と「明星ー9」の開発にイランの助力があっても不思議では無い。

北朝鮮無人機と韓国軍の戦い

2012年の軍事パレードに登場した北朝鮮軍の無人機

 北朝鮮の無人機は2012年の軍事パレードから姿を見せている。
 その姿はロケットに尾翼や主翼を付けたようなものだった。
 既にアメリカのMQ-1プレデターが活躍していたのもあり、北朝鮮も追いつこうとしていたのだろうと思っていました。

韓国の当局によって公開された北朝鮮の無人機

 2014年から北朝鮮の無人機が韓国で墜落しているのが目撃され、当局よって回収されている。
 ラジコン飛行機のような形で、日本製のカメラを搭載して韓国各地を撮影し基地へ戻ってからカメラを回収して撮影画像を確認する運用をしていたようだ。
 そんな北朝鮮無人機ではあるものの、ソウルの上空に侵入して大統領府の上空まで到達している。技術は高いとはいえないが高い脅威になった。
 2022年12月北朝鮮の無人機5機が韓国に侵入した際に、韓国軍は戦闘機と攻撃ヘリコプターを出撃させた。しかし撃墜はできなかった。
 この事件を受けて、今年の9月に韓国軍は無人機を運用する司令部が創設される。

北朝鮮軍は新型無人機をどう使うか?


グローバルホークに似た形状をしている「明星ー9」


 韓国への侵入作戦に無人機を北朝鮮軍は投入していました。
 市販のカメラを搭載しての偵察任務で無人機を使っていた北朝鮮軍は「明星ー4」と「明星ー9」で変化をもたらすかもしれません。
 グローバルホークに似ている「明星9」は本家と同じく、高解像の撮影ができるカメラに各種センサーが装備されているのかは不明だ。
 それでもあえて偵察に特化した機体であるグローバルホークを模倣したのはより高度な偵察をしたい意欲が北朝鮮にはあるのかもしれない。
 グルーバルホークの特徴である高高度の偵察任務を可能とする機体は、軍事境界線や在韓米軍基地など常に偵察をして情報を得たい北朝鮮にとっては持っておきたい偵察機でしょう。

軍事パレードに登場した「明星ー4」


 「明星ー4」のモデルと思われるリッパーはアフガニスタンなどでミサイルを装備しての対地攻撃に投入されている。
 軍事パレードでは「明星ー4」はミサイルかロケット弾を主翼に搭載した姿で登場しました。
 北朝鮮の公開した動画でも、飛行しながらミサイルかロケット弾を発射する「明星ー4」の姿が流れている。
 北朝鮮は「明星ー4」を攻撃機として運用するつもりなのかもしれない。
 もしも南北で戦争が再開された場合、韓国軍や在韓米軍の空軍基地を先制で叩く攻撃機としての運用や、空軍機の更新が進んでいない北朝鮮空軍で攻撃機や戦闘ヘリの代わりに使う可能性もある。
 韓国軍にとっては、攻撃任務も可能になった「明星ー4」の存在は脅威度が高い機体と言えます。
 こうした北朝鮮の無人機に一つの疑問がある。
 無人機運用の大きなネックは通信機能だ。
 機体の遠隔操作に、撮影した画像や動画をリアルタイムで送信できる、そうした事を可能とする衛星を介した通信網がなければ無人機は運用できない。
 北朝鮮に独自の衛星通信ネットワークは無い、もしかすると中国やロシアの通信網を利用するのかもしれない。それか事前に位置情報のデータを入力する方法や地形照合をしながら飛ぶのか、北朝鮮の無人機運用に謎がある。
 とはいえ北朝鮮が外へ手を伸ばす新たな装備を得て、グレーゾーンな戦いを仕掛ける可能性もある脅威と言える。


 
 
 

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