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ひとにもモノにも歴史あり。


プロフィール画像を黒猫に変更しました。
6月いっぱいはこれでいきます(来月からまた元に戻します)

この子は一時期、お財布の内ポケットに入れてお守りがわりに持っていたこともある、陶器の小さな猫の置物です。

ボールペンと並べてサイズを比較した画像がこちら。

原寸は、プロフ画像とほぼ同じサイズです(でなきゃ到底サイフには入りません)

これは【豆猫(まめねこ)】の商品名で、5匹セットでパッケージされていたミニミニサイズの猫の置物のうちの1体です。 
5匹セットといっても、現在わたしの手元にはクロと茶トラしかいませんけどね。

検索してみたら、メルカリに出品していたひとがいて、その写真のおかげで、残りの3匹はミケ猫だったことが判明しました。
そのメルカリ出品写真のコピーです。

そういえばこんな取り合わせだったなぁと、写真を見てようやく思いだしました。

この【豆猫】は20年くらい前に、九州旅行のおみやげでもらったものです。
九州みやげにしては、ずいぶん風変わりなチョイスですが、観光地のみやげものにありがちといえばありがちな記念の置物の類いです。
わたしが知らないだけで、猫の置物(招き猫)が九州の名産品だったりする可能性もありますしね。
招き猫“発祥の地”には複数の説があるらしく、九州との関連まではわかりませんが。


当時のわたしは、招き猫にはなんの興味もありませんでしたが、それまでおばあちゃんちに行かないとクロには会えなかったので、このおみやげの小さな黒猫に大喜びしたことはよく覚えています。
「小さなクロ」は、このときからわたしの宝物になりました。

「ひとに歴史あり」というならば、「モノ(豆猫)にだって歴史があるはず」だと、わたしは思います。 
誰かに大切にされたものなら特に。

5匹セットの小さな招き猫は、このサイズにしてはなかなかデザインも凝っているし、製作秘話なんかもありそうじゃないですか?
20年も前の商品だと、企画とデザインは日本、つくっていたのは中国の工場だったかもしれません。

【豆猫】をつくっていた会社の名前はおろか、所在地やルーツも定かではありませんが、とりあえず購入した時期と場所だけは判明しました。

おみやげ購入者当人の記憶もかなり怪しかったのですが、どこのホテルだったかは忘れたけれど、【豆猫】は宿泊したホテルのみやげ物売り場で購入したはずだとのことでした。

① ホテルのすぐ近くに野球場があった(客室から見下ろせた?)
② 野球観戦とセットの宿泊プランがあった。
③ 新しくてかなり大きな高級ホテルだった。
④ 場所はたぶん博多

という主張をもとに調べたところ、【豆猫】を取り扱っていたのは、どうやら“ヒルトン福岡シーホーク”らしいとわかりました。
20年前ならホテルはまだ十分に新しく、ヒルトンクラスの大型ホテルも限られていたようだし、おそらくそこで間違いないでしょう。
この場合、シーホークが独自に販売していたと考えるよりも、【豆猫】の会社か、みやげ物の業者がホテルの売り場に商品をおろしていたと考えるのが妥当です。
これ以上のことを調べるには、ホテルに迷惑な問い合わせの電話をかけたりすることになるので、この辺りでやめておきます。


わたしの側の歴史というか記憶では、猫がぜんぶで5匹だったのは覚えていたけれど、メルカリの写真を見るまでは、残りの3匹のことはまったく記憶に残っていませんでした。
いかにもな招き猫してるミケ猫たちも、今ならばそれぞれに可愛いじゃないのと思うのですが、当時のわたしの眼中にはなかったようです。
わりと早い時期にミケ猫たちは誰かにあげちゃった、そんなおぼろげな記憶が蘇ってきましたが、勢揃いした写真を見ることがなければ、ミケ猫たちの存在はすっかり忘れてしまってました。

白ベースのミケ猫3体に、顔も色も招き猫とはちょっと違う2体の組み合わせは、よく見ると、極小だけどかたちはみんな招き猫を模しています。
クロはもちろん別格だったにしろ、茶トラが手元に残っていた理由も、5匹並んだメルカリの写真を見て納得がいきました。
この2匹だけが、デザインもカラーリングも招き猫らしからぬ特別仕様で、茶トラだけが唯一クロのお友達だと思っていたからでしょうね。

ミケ猫たちの存在をきれいに忘れてしまっていたのは、クロには茶トラがいれば十分だったからでしょう。
ご覧のとおり、ミケ猫がいないと、招き猫っぽさは消え失せてしまいます。
購入者の証言によれば、パッケージで茶トラは“金運”、クロは“魔よけ”などの意味づけなどがされていたようですが、これもわたしは全くおぼえていません。

お土産にもらった当時は“ちっちゃいクロ”をガラスケースに大切に飾り、クロが死んだ後は、この小さなクロを茶トラと一緒に財布のポケットに入れて持ち歩き、時々とりだして眺めるという感傷的なことをしていました。
そして、あるとき気づいたのです。
こんなことをしていると、豆猫は財布の中で擦れて傷だらけになるか、そのうち割れるか欠けるかするんじゃないのと。
早い段階でそれに気がついたおかげで、クロも茶トラも無傷ではないものの、あんまりひどい有様になることなく今に至っています。

おとなになった今の目で見ると、ミニミニサイズの置物の猫は、「絵付けと仕上げは職人がひとつひとつ手作業でおこないました」的な品物っぽく映ります。
日本製ならそういうこともありそうだし、量産品にしては丁寧な仕上げですしね。

5匹のうちの2匹だけデザインや雰囲気を変えているあたりにも、製作者のこだわりを感じます。
小さな招き猫のバリエーションならよく見かけるし、わりとありがちですが、タイプの異なる2種類の猫を取り合わせたところに、他とは違う感があります。
これが【豆猫】のおもしろさで、コンピュータ制御で大量生産されているのだろう昨今の製品にはない、手作り感を演出もしているようです。

それに、クロと茶トラにミケ猫3体でなく、クロたちと同じタッチのシャムとアメショーとロシアンブルーなんかの取り合わせだったとしたらどうでしょうか。
マニア受けや、コレクション感はアップするだろうけど、逆に製作者サイドのセンスやこだわりは今ほど感じさせなかったのではないでしょうか。

【豆猫】はどんな会社の、どのようなデザイナーの手による、どんな想いがこめられた作品だったのか‥‥わたしにはわかりません。
20年も遡れば、さまざまなことがあったはずです。
いろんな事情で今は別のものをつくっていたり、ひょっとすると廃業している可能性もあるでしょう。

人間だって20年もあれば、その頃に生まれたばかりの赤ちゃんだって成人しているし、当時の小学生は、もういいおとなになっています。

ずっと昔におみやげにもらった小さな猫の置物は、クロの思い出と一緒に、今のわたしにはそんなことを考えさせてくれるのです。

さらに20年先には、どういう視点でこの猫を眺める自分になっているのか、今からすこし楽しみです。


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