【短編小説】悪夢の回廊
「あー、そのくらいあれば十分かな」
そう言って笑ったのは、俺の後ろに立っている妙齢の女性だった。
ここは街の中心部にある警察署の一室である。
俺と女性は今、テーブルを挟んで向き合っていた。
テーブルの上には一枚の書類が置かれている。
それは俺が書いた「死亡届」だった。
なぜこんなことを書いているのかというと、端的に言ってしまえば俺は死んだからだ。
だからこうして死後処理をしてもらっているというわけである。
もともと死ぬつもりは無かったし、こんな書類にサインをすることだって想像