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NPSをサービス磨きのPDCAに組み込むための考察~後篇|運用課題について~

私の経験を元に、サービス改善のための指標としてのNPSの導入~分析の方向性を前篇にて書いてきました。

後篇については、運用にあたっての課題を中心に、悩ましさ・感じたことを書いていきたいと思います。


運用にまつわる課題感

利用者が少ない状態での活用

NPSは、推奨者割合-批判者割合 ですので、一定の回答母数がないとスコアが安定しません。
では、利用者が少ない場合はどのように活用するとよいのでしょうか?

利用者が少ない場合はPMFやMVPの中での主要ターゲットの仮説検証など模索している状況かと思います。
なのでその場合は、
・サービス全体の品質や推奨度を見に行く というより、
・推奨者見つけ出し、推奨者の利用体験を定性インタビューで深堀りし優良顧客の解像度を高める
といった活用方法が良いのではないかと思います。

取得する接点

取得方法については、
・メールでのアンケート
・ログイン後の告知枠
・Web接客サービス(KARTE等)を活用した獲得 
などがあるかと思います。

最も簡単かつ初手向けなのは1ポチ目かと思います。
ただ、若年層ほどメールは見られにくくなってますし、最大化するならば複数の接点で取得するのが望ましく、安定的に実施したいのであればインセンティブ含めて検討すると良いかと思いました。

個人的には、KARTEなどを使い、定期的にログイン後にアンケートを表示するような設計にすると運用が楽なのかなと思っています。

また、接点については
・退会導線上で取得
・問い合わせ後の応対満足度アンケート内でNPSを取得
したこともありますが
退会は、サービスを早期に離脱するカスタマーが多く含まれるため低く出がちであり、問い合わせ後は、当該問い合わせが発生してしまう負荷に対しての回答トーンになるため、こちらも低く出がちという結果でした。

なので、それぞれ接点で取得することの改善ポイントは見いだせますが
まずは利用継続中の顧客全般にアプローチし割合分布を把握したほうが全体観が認識できるものと思います。

モニタリング・分析にあたって

NPSは、回答単体としても示唆が得られますが
回答者の解像度を高めていくには
・属性データ
・行動データ
といったサービス内のデータとの連携を行い、スコア差分を見に行く基盤を作っていくことが望ましいと思います。

NPSとサービスデータ連携による分析イメージ

また、回答サンプルですべての利用者の状態を把握することは難しいので、NPS回答者の属性・行動量などを分析することで、未回答者のNPSを推測し、精度を高めていくことも可能です。
(≒SaaSでいうヘルススコアに近い活用イメージです)

NPS回答サンプルから利用者全体の割合を予測

ただし、そういった活用にはデータ取得・分析のための基盤設計をの部署・ケイパビリティが必要になってきます。
なので活用幅は、機能組織の成熟度にも依存することを念頭におくことが大切です。

サービス改善指標としての扱い方

NPSを改善指標として定期的にモニタリングしていく場合、適さないサービス(というより活用に留意が必要なサービス)があることも念頭に入れておくべきです。
私の経験則ですが、担当サービスの領域によって、以下のような、いわば外部要因でスコアが変動してしまうことがありました。
・季節要因:例 卒業、長期休業、定期テスト前後期
・集客要因:例 新規獲得と既存利用者の利用者割合が大きく変化してしまう施策を行っている

こういったノイズに対し比較対象・比較時期を何とするか?はそのサービス固有の課題としてのちのち立ち上がってくるかと思います。

NPSを見ていくことはターゲットを見極めることにつながる

NPSを扱い始めると、高低差について、何がその差を分けているのか?というところに興味が向かいます。

私の感覚にはなるのですが、どんなサービスもリリース当初は、
・ターゲットとなる想定利用者ペルソナ と
・そのペルソナの想定課題
・その課題に沿ったソリューションとしてのサービス
であったはずです。

NPSを見ていくことでその仮説の当てはまり具合が見えてくるのかなと感じています。

どういうことかというと
NPSの高い層は、そのサービスを自分の生活スタイルに適合させて使いこなしています。
反対に、低い層は、利用当初の期待値と差異があったり自分の生活スタイルに適合させられず、「便益<費用」となってしまい低く出ている可能性があるのです。

低い層は、
①想定していたコアターゲットではない層であったか、
(集客上の訴求/チャネルのミスマッチなど)
②サービス側の使いやすさ・機能に不十分性があったか、
③①と②の同時発生
の大きく3択で、このあたりをどう見立てるかがとても重要と感じています。

私の経験した事例の場合、
教育サービスだったのですがオンラインゆえに利用には主体性が求められ
・自立学習できる層からのNPSが高く、
・学習習慣ややり方がわからない層からのNPSが低い

という状況でした。

なので、教育サービスとして、勉強方法や自律的でない層へも価値提供を広げることが利用者の裾野を広げることにも、NPSを上げることにもつながっていくと感じていました。

サービス提供価値と利用者適合度の関係性イメージ

まとめ

2回にわたって、NPSについての考察をまとめてきました。
考察するといっても、抽象化すると実践的にならない大味なものになるし、個別化しすぎると恐らく読み手に伝わりづらい、というジレンマを感じながら書いておりました笑

サービスの推奨度というわかりやすい指標ながら、そのシンプルさゆえにリテラシーや個別事情(下記等)
・その領域特性
・そのサービスの想定利用者
によって、ふさわしい分析・モニタリングの設計は異なってくるのかなと思い至っています。

フレームとしては汎用的ですが
担当サービス・事業にどう活かすかの個別性のところが肝であり、この記事でそれを検討するプロセスを楽しめる方が少しでも増えたり、参考になったらとても幸いです。

またこういう切り口のテーマについても思い立ち次第記事化していこうと思います!!


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