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これは小説ですか?

川口市出身の自称読書家 川口竜也です!

先日読書会を主催している知り合いのお話。その会では小説限定と明記しているにも関わらず、「それって小説?」のような自己啓発系の本を持ってくる人もいるらしい。

具体例を出すならば、水野敬也さんの「夢をかなえるゾウ」や喜多川秦さんの「運転者」とか、登場人物が何かしらのきっかけや出会いを通じて、成長していく物語。

もちろん、その本自体が悪いのではない。実際に読んだことがある身としては、確かに人に勧めたいとも思えるような作品ではある。

でも、小説みたいにスラスラ読める本を、あたかも小説のごとく持っていくのはいかがなものか。

そこまでして自己啓発系の本を紹介したいというメンタルは凄いと思うけれども、他の参加者とズレている感は否めない気もする。

でも、物語仕立てだから小説だと言い張るのは流石にアバウト過ぎると思うが、そもそも小説って何なのだろうか。

しょう-せつ 【小説】  筋の展開や登場人物の心理・考えなどをとおして社会や人間の姿などを表現した散文体の文学。近代文学の一形式。

大修館書店|明鏡国語辞典より抜粋

この定義に沿えば、「夢をかなえるゾウ」も「運転者」なんかも、ある意味にこの社会で生きる人々の考えとかを表現しているわけで、小説といえば小説である。

でもそれってあからさまに自己啓発系の本じゃん、だって自己啓発本コーナーにあるのだからと言ったら、それもそうではある。

じゃあ例えば、ミヒャエル・エンデの「モモ」やサンテグジュペリの「星の王子さま」はどうか。

人によっては純粋な物語として楽しむ人もいるけれども、小説でありながら自己啓発や哲学的な側面がないとも言い難い。

ましてや「モモ」や「星の王子さま」は、海外文学の棚にあるし、出版社によっては絵本コーナーにもある。

それに、自己啓発とか関係なしに、小説を読めば何かしら学ぶべき点がある。それが著者の意図することではないにしてもだ。

学ぶことが一つもない、娯楽のだけの本を小説と呼称するのならば、少なくとも私が思い浮かべられるのは、森見登美彦さんの「恋文の技術」くらいしか思いつかない(あれは作中でそう語っているからという意味で)。

結局のところ、その本をどのように捉えているかは、その人の考え方に寄るってこと。

一概にこれは小説、これは小説じゃないと言い切ることはできない。

ただ個人的な苦言を呈することになるが、自己啓発やビジネス書以外にも小説とか読むよとか言って、いざどんな本?と聞いたら、「夢をかなえるゾウ」と返された時は、流石におぉ…ってなったね。

私自身も、無意識に線引きしていたんだろうなって話。それではまた次回!

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