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人生の節目を祝う-神社での儀式-

お宮参りや七五三など、子どもの健やかな成長を祈る神事の際、祝詞(のりと:神職が神様に申し上げる言葉)では「若竹のすくすくと伸びゆくがごとく~」などの表現を用います。

竹は成長を象徴する植物として知られています。一日のうちに驚くほど背丈を伸ばすこともありますが、その竹が決して忘れないことがひとつあります。それは、その身に「節」を刻むこと。

節があるからこそ、竹も人もまっすぐ、のびのびと成長することができるのかもしれませんね。

今回は、人生の節目ともいえる“人生儀礼”についてのお話です


“人生儀礼”をひもとく

人生儀礼とは、生まれてから死ぬまでの人生のさまざまな節目で行われる通過儀礼のことです。

『神道事典』(國學院大學日本文化研究所 編纂)によれば、「人間の一生には、誕生から命名、成人、結婚、そして死に至るいくつかの節目があり、社会集団内での新しい役割への移行を保護する儀礼」と説明されています。

また、個人の成長や変化に伴う儀式だけでなく、地理的な移動や集団への加入に際しても行われるとされます。

<『神道事典』より引用>
人間の一生には、誕生にはじまって、命名、成人、結婚そして死に至るいくつかの節目があり、そのつど社会集団内での位置づけの変化と新しい役割の取得がある。そこで、節目を通過する際に、新しい地位・身分への移行をおおやけにするとともに、その安全な移行を保護する儀礼が行われる。それが通過儀礼である。具体的には、元服、結婚式、葬式などである。

したがって、狭義には個人の成長過程に伴って行われる人生儀礼を指すが、一つの状態からつぎの状態への移行に際して行われるという意味において、広義には旅行などの地理的移動や集団加入に際して行われる儀礼(イニシエーション)も含む。

國學院大學日本文化研究所『神道事典』弘文堂  平成6年

つながりを体現する場としての人生儀礼

皆さまもご自身やご家族のお宮参り、七五三、結婚式などの記憶がおありかと思います。一つの見方として、これらの儀式は、個人の喜びや悲しみを共有すると同時に、社会的な承認や連帯感を築くものとして捉えられます。

執筆している本日は「戌の日」にあたり、境内には多くの方が安産祈願に訪れています。出産は母親個人の特別な経験であると同時に、家族や社会にとっては「新しい命の誕生」と、「社会の一員が増える」ことを意味しています。

神社における儀式は、個人から家族へ、さらには社会のつながりを体現する場と言えるのではないでしょうか。

春は入学の節目を祝う「ランドセルお祓い式」

現代では、学校生活における入学式や卒業式も、個人の成長と社会への貢献を祝う儀式にあたります。当神社では今の季節、春から小学生になる子供たちを対象にした「ランドセルお祓い式」を行っています。

今日まで健やかに大きくなれたことへの感謝と、新たな環境での成長と安全を神様に見守っていただく儀式です。

神社でゆったり呼吸を

日々忙しく時間に追われがちな現代人は、“今日”、“明日”あるいは“今”という単位で時間を捉えていらっしゃる方が多いのではないでしょうか。一方で、一神社職員の視点から見る神社境内は、歴史ある社殿や木々がゆったりと呼吸する悠久の時間が流れているように感じられます。

人生儀礼は、いつもよりも少し大局的に時間を捉えられるよい機会かもしれません。ご参拝の折には、“人生”という尺度でゆったり呼吸してみませんか。新たな気持ちでご自身と向き合える節目になれば幸いです。

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