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コミュニティのコンディション測定にNPSを導入してみた話【連載第13回】

※2019/7/7追記。コミュニティ連載としては第13回なので回数カウントを修正しました。

みなさんこんにちは。コミュニティ運営をしてきた6ヵ月間の気づきをまとめていく連載第3回です。(コミュニティ連載としては13回目になります)

今回はコミュニティのコンディションを測定するという話ですが、いきなり手法の話をしてもよくわからないと思うので、まずは最近のオンラインサロンやコミュニティが生まれている背景や状況、コンディション測定の必要性のところから自分なりにですが簡単に整理してみたいと思います。

■企業における情報の届け先とコミュニティ

ここ数年、オンラインサロンやコミュニティの流れがきておりまして、個人はもちろん企業も商品のファンクラブをコミュニティ化させて濃いファンの育成をするという動きがみられますよね。

以前であれば情報や商品を届けるためには広告という手段を使い、消費者とのタッチポイントに情報を置くということをしてきました。TV・新聞・雑誌・ラジオ・交通広告はその代表例だと思います。

しかし、スマホができてからというもの、消費者を取り巻く情報量が爆発的に増えました。口コミの量とか最近すごいですよね。ステマなんて言葉もあったりして、どの情報を信じて良いものかわからないという人もいるかもしれません。そんな状況で広告を打とうとしても、ターゲットに対してどんなタッチポイントでどう情報を届けていいものか読みきれず、頭を悩ませている広告担当者の方もいるかもしれません。

では消費者はどのように情報を受け取っているかというと、仲のいい友人からのアナログの情報だったり、信用できるコミュニティから受け取るようになってきていると思います。前者は以前からもありましたが、後者はSNSの普及によって特に加速している動きだと思います。そして、消費もこの流れの中で生まれているものは単価も高くなる傾向があると言われています。

そこでコミュニティというのがマーケティング観点で注目されているのだと思います。コミュニティを通して情報を届け、消費につなげたいんですね。

■みんな居場所を求めてコミュニティに所属する

一方で、消費者も情報爆発時代や、働き方改革の空気の中で、家庭でも会社でもない別のコミュニティを求めるようになってきています。ネットやSNSの進化によって、好きな人とオンラインでつながれるようになってきたので、無理して嫌いな人といる必要がなくなってきているということもありますよね。居場所を求めて、あるいは特定の趣味の仲間を求めて、など様々な理由で会社の外に出ていきます。僕も職場の人といる機会は以前よりも減ってきています。

■コミュニティのコンディションを把握する

そんな中、コミュニティの運営を計画的に行いたいという人たちが増えてきているように思います。周りでも『コミュニティのコンディションをどう把握しているか』という話題が出ることが多くなってきました。それはコミュニティをつくり持続させていくためのカギが『居心地の良いコミュニティであること』『活動の成果を定量で示して社内の継続投資を受けること』にあるからだと思います。

前置きが長~くなってしまいましたが、今日はこのコンディション把握の部分について考えていきたいと思います。

■コミュニティにおける満足度と推奨度

僕が所属しているコルクラボでは、『あなたが好きなあなたになる』という理念を持っているのですが、運営としては『大切なひとを連れてきたくなる場所に。』というミッションを持って場つくりをしています。

じぶんにとって居心地の良い場所はきっと仲間を連れてきてもいい場所になってくれるのではという思いがあるんです。それに、いい人の仲間はきっといい人ですよね。コルクラボに所属している仲間は味のあるメンバーが多いのですが、みんないいやつばかりで、雰囲気もいいのでこのままの雰囲気を維持したまま大きくしていこう思ったら、内部のメンバーが仲間を連れてきてくれたり、紹介してくれる形が一番間違いないと思うんですね。

そして、もともと仲のいい2人の大切な人同士が仲良くなってくれたら、絆はさらに深まる。それって超すごいことですよね。そんな場をつくれたらいいなということでミッションを立ててメッセージしてきました。

さて、ミッションを立てたら実際にどんな指標を見ていけばいいのかなという話になります。そこで普通ならアンケートを取って満足度を指標にしようといきたいところなのですが、ここでちょっと待ってと議論が起こります。

満足度というと、そのとき個人が感じている極めてプライベートな感情をはかるものです。『大切な人をつれてきたくなる場所に』と言っているのに満足度は1人称なので違うのではとなりました。そこで出てきたのが推奨度(ロイヤルティ)です。

推奨度というのは、他人に勧める可能性があるかどうかをはかるものです。つまり、個人的な満足と合わせて人にオススメする振る舞いまで現れるかどうかという指標としてみるのに適しています。『大切な人をつれてきたくなる場所に』に合っているのではと思います。

■推奨度をNPSで計測する

では推奨度をどうやって計測するかという話ですが、NPS(Net promoter score)を使うことにしました。NPSは世界中の企業で注目されていて導入が進んでいます。コミュニティと企業をNPSで比べるのは難しいかもしれませんが、モノサシとして魅力的だと判断して使うことにしました。(N数はもっと欲しいのですが…)

ちなみに具体的な手法ですが、

①定型文の質問「あなたは〇〇を親しい友人や家族に勧める可能性はどのくらいありますか」に0~10の11段階で答えてもらう。同時にそのスコアを付けた理由をきく
②全体回答数のうち、(9・10を答えた人数の%)-(6以下を答えた人数の%)を計算しNPSスコアとする

シンプルですよね?回答する側も3分くらいで回答できるアンケートです。しかし、シンプルだからこその難しさもあって、例えばイベント直後に取らないなど配慮が必要です。イベント直後は気持ちが上がっていることが多く、スコアもイベントに対する推奨度になりがちです。場に対するスコアが欲しいと思ったらそのタイミングでは不適切です。木曜日の夕方くらいにふわっとメールで飛んでくるくらいの空気感で実施するのが、コツです。

■NPS計測をしてみてわかったこと

コルクラボでは2ヵ月に1回のペースでNPS計測をしていますが、取ってみると面白い気づきがたくさんありました。例えばある月のデータを一つ紹介してみたいと思います。

こうしてみると、入会してからの期間が長い人のほうが、推奨度のスコアが高くなる傾向が見られます。長く在籍することによって、居心地がよくなってきたり居心地の悪い人は退会していくのでこのような傾向があるのかなと思っています。

また、計測月に行われた合宿に参加している人は推奨度が高く、批判者が低いというデータもでました。合宿はメンバーのコミュニティに対する推奨度を高めるために有効であったと定量で読み取ることが可能になるんですね。もちろん同じ合宿でも内容によっては推奨者が下がることだってあると思います。合宿担当のみんなに感謝です。

ちなみにWEB上には様々な業界・企業のNPSが紹介されています。-25.9のスコアだと大体自動車業界の平均スコアくらいかな…と比べることができます。(自分で選んだ車とコミュニティが同じくらいの推奨度ってなんか納得感ありません??って盛り上がりたいです)

・参考:NTTコミュニケーションズグループ

https://www.nttcoms.com/service/nps/summary/

では次に、スコア×フリーコメントの観点からこちらのデータをもう少し詳しく見ていきたいと思います。

■フリーコメントから見えたコミュニティの特徴

フリーコメントからいくつか抜粋して、具体的なスコアと比べてみてみたいと思います。例えば推奨度の高い人のコメントは以下になります。「楽しい」「幸せ」といった割と短い文章で綴られていることがわかります。また、「居場所」というワードも出てきており、これは運営側としては狙い通りのコメントが多かったです。

一方、スコアが低い側のフリーコメントを見てみましょう。特徴的なのは自分が満足しているからと言って人に勧めたい理由にはならないという意見が多いことがわかります。例えば、人によって合うあわないがあったり、大切な人ほど気軽にオススメしないという声。また、親しい人に普段見せていない自分の姿を見られるのが恥ずかしいという声も多いです。

人というのは所属する組織やコミュニティごとに違う自分を持っていることが多いですよね。家庭では父親、会社では営業マン、コミュニティではゆるキャラみたいな場合、それぞれの場所で相手から見える自分の姿は確かに違うのだと思います。知られていないじぶんの姿を見られるのは恥ずかしいという気持ち、よくわかります。

コミュニティ自体の説明が難しいという声もありました。確かに『コルクラボってなんですか?』と訊かれてもうまく説明ができないというメンバーの声はよく聞きます。ここは運営で相談し、わかりやすくしていこうと現在の活動に反映させています。

実際にフリーコメントまで見ると、推奨度が低いからといってその場が気に入らないというわけではないということがわかりました。これって満足度のアンケートでは見えにくい部分ですよね。そして、上記で紹介した2つのグループを見ていると面白い特徴が見えてきます。

推奨度が低い人たちほど、その理由をじっくり考えてコメントしてくれているということがわかりました。自分にとってコミュニティの存在とは何かというところまで考えて回答している人も多そうですよね。

逆に、高いグループについては細かい理由に触れている回答は少なく、感覚的な回答が多いのが特徴です。これに良し悪しはありませんが、ふと思いました。高い人たちにはディズニーランドの法則が成り立っているのかもと思います。

ディズニーランドに行く人って、アトラクションに1時間とか並ぶであろうことをわかっているし、雨が降ったら並ぶのがかなりしんどいこともわかっている。でもそれを承知で、家を出る時に何があっても楽しむスタンスで出発し会場を目指します。結果、やっぱり1時間並ぶし、雨も降るんだけど満足度は高い。こういう人は推奨度も高いと思います。

推奨度が高い人は、コンテンツがお粗末であっても(運営的にはダメなんだけど)懇親会であまりたくさんの人としゃべれなかったとしてもそれも含めて楽しもうというスタンスで参加してくれているのかもしれません。場に対する推奨度が高いというのはまさにこういうことかと思いました。

こんな形で隔月でNPS計測をしながら、直近の月の課題抽出もできるし、経年変化を追うこともできるようになります。続けていくと、推奨度のUPにつながるコンテンツのパターンを見つけることもできるので形の見えにくい組織コンディションをはかるための1つのモノサシとして使えるのではと思います。

話が長くなってしまいました。興味のある方、コミュニティマネージャーの方がいらっしゃったら細かいデータ活用方法や計測手法についてお話しできますのでよかったらお声がけください。そして、色んなコミュニティの知見が共通のモノサシ上で語られると面白いのではと思っています!

それでは今回はここまでになります。ありがとうございました(続く…)

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今回の記事は約10回の連載になる予定です。

また続きを見ていただけたら嬉しいです。

なお、僕のツイッターは @kawahao です。

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