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増える自衛隊員の「殉死」と命の「対価」

日本は潜水艦大国に囲まれている。ロシアの65隻、2位は米国の64隻だが、3位の中国は61隻と米国に迫り、4位の北朝鮮も35隻を保有する。日本は5位で23隻であり、周辺を潜水艦大国に囲まれている。
 
そのため、日本はロシア、中国、北朝鮮を対象として、海自と米国、オーストラリア、フィリピン軍は4月7日、南シナ海で初の本格的な海上演習を、11〜12日には海自と米国、韓国の両海軍が東シナ海で共同訓練を実施した。
 
その最中、今回の空自の事故が起きた。伊豆諸島の鳥島東方海域で計8人が乗った海上自衛隊のSH60K哨戒ヘリコプター2機が墜落、1人が死亡した。2機は潜水艦を探知する夜間訓練を実施中に異常接近、衝突した可能性が高いとされる。SH60K哨戒ヘリは、機体からつり下げたソナーを海中に投入し、音波を出して潜水艦の位置を探る。護衛艦と連携して複数機を展開させる。近接したヘリは互いに目視で位置を確認するが、夜間は機体に取り付けられたライトでしか判別できず、見えにくくなる。
 
海自ではこれまでに同型機の事故が夜間に2度起きた。一度目は、平成29年8月、青森県・竜飛崎沖で発着艦訓練中の哨戒ヘリ1機が墜落、2人が死亡、1人が行方不明になった。計器修正中の人為ミスが原因とされた。二度目は、令和3年7月に鹿児島県・奄美大島沖で哨戒ヘリ2機が訓練中に接触。乗員8人は無事だった。3度目は令和5年4月6日に沖縄県の宮古島周辺で、隊員10人を乗せて飛行していた陸上自衛隊の多用途ヘリコプター「UH60JA」が行方不明となった。
 
陸自の多用途ヘリコプター「UH60JA」には、陸自第8師団長ら10人が搭乗していた。第8師団は熊本市北区の北熊本駐屯地に司令部を置き、熊本、宮崎と鹿児島(奄美群島を含む)の南九州3県の防衛警備、災害派遣の任務に就いている。現在の所属は約5000人。特に、死亡した坂本陸将は陸上自衛隊師団トップだった。同ヘリコプターには第8師団の最高幹部5人が搭乗していた。第8師団は台湾有事の際、南西諸島で軍事活動を展開する機動師団だ。つまり、中国にとって目の敵のような第8師団の指揮部が同時に死亡したということだ。ちょうど事故の前日、中国の空母が南西諸島を通過していた。
 
いずれも、訓練とはいえ目の前に敵をみすえたものであり、常に死とは裏腹にある。「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえることを誓います。」と全ての自衛隊員は、こう宣誓して、職務に就く。
 
自衛官が公務中に死亡した場合、「賞じゅつ金」と呼ばれる弔慰金が支払われる。防衛省の「賞じゅつ金に関する訓令」によると、その支給額は最低額で490万円、最高額で2520万円だ。
かなりの幅があるが、最高額の賞じゅつ金を支給されるのは「特に抜群の功労があり一般の模範となると認められたもの」だけで、これは滅多に認められるものではない。現状では災害派遣時、通常の勤務時を問わず、1000万円程度の支給が一般的だとされる。
 
日本の自衛官の命の値段は約1000万円ということだが韓国では曹長の「戦死」の場合は3億3000万ウォン(日本円で約3470万円)、災害派遣を含む通常勤務時に命を落とす「殉職」の場合だと約2億4000万ウォン(約2500万円)の支給とされ、。殉職だけで見ても日本の自衛官と韓国軍の軍人とでは日本円にして約1500万円もの開きがある。
 
今後、自衛隊の任務はますます危険度が増す。このあたりも我が国は充分な手当を考えるべきであろう。

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