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若手農家のホープに聞く!川俣の農業って、ホントのところどうなんですか⁉︎

  冬も深まり寒さ厳しい日々が続きますが、皆さま風邪などひいていませんでしょうか?私はといえば、スマホの天気予報で東京と川俣の気温差を眺めながら、「冬の川俣でシャモ鍋食べたいなあ」なんて想いを馳せる今日この頃です。
 さて、以前の記事で川俣シャモ生産者の佐藤卓也さんにお話しを伺った際に、川俣にはバラエティ豊かな農業を営む農家の方がいらっしゃることがわかりました。
 そこで今回は、川俣農業の未来を担う若手農業家の佐藤改さんと佐藤弘樹さんに、川俣の農業をとりまく課題やそれを解決するためのアイデアについて聞かせていただきました!
 結論、めちゃくちゃためになるトークを聞かせてもらえました…。全くの農業シロウトな私ですが、おふたりの話にのめり込んでしまいましたよ。
  いやあ、農業って、奥が深いんですね…。あと、川俣って「佐藤」姓が多いんですね…。こっちも理由が気になりますが、まずは川俣農業の未来についての話をどうぞ!

現役農家のおふたりに聞いてみた

 ―― おふたりはどんな農作物を生産されているんですか?
 
改さん 私は繁殖牛を飼育しながらニンニク栽培をしています。ニンニクは4年前から母方の祖父が始めて、今は私と父が引き継いでいる状況です。相馬野馬追に参加するための馬も飼育している関係もあり、騎馬のイメージと馬の排泄物を利用して循環型の栽培を行っているという特徴から、隣の浪江町では「サムライガーリック」という名前で販売しています。
 

佐藤 改さん


弘樹さん 私は去年からミニトマト農家として就農しました。もともと祖父が山木屋でミニトマト農家と養鶏を営んでいたのですが、東日本大震災の影響で廃業せざるを得なくなってしまいました。震災から12年経った去年、それを私が受け継いだ形です。この冬からは、ほうれん草も始めるつもりで準備しています。山木屋は避難指示解除後も人が戻りきっていない状況なので、農業を通した地域活性化という面でも役に立ちたいと思っています。
 

佐藤 弘樹さん


 ―― おふたりは11月4日に開催された「川俣ハーベスト」の実行委員でもあるんですよね。
 
弘樹さん はい。川俣で作られた農作物はほとんどがJAに出荷されて、私たち生産者と川俣町の人たちとの接点は直売所くらいしかないんです。これからも川俣ハーベストのようなイベントを続けていって、「このミニトマトはこういう人がつくっているのか」と町の皆さんに知ってもらえる機会にしていければと思っています。

分業と販売ルート開拓で収益の確保と新たな雇用を創出?

 ―― めちゃくちゃ基本的なところかもしれませんが、農作物ってJAを通して出荷されているんですね。
 
改さん そうですね。ただ、JAを通して市場に卸すと、3〜4割程度の農協手数料と市場手数料を払う必要があるんですよ。
 
 ―― え、そんなに!直接卸すのはダメなんですか?
 
改さん 必ずしもそうではありません。実は、うちのニンニクはスーパーマーケットに直接卸していて、JAは通していないんです。ただ、これは川俣に限った話ではないのですが、ほとんどの農家は兼業もしくは退職後に専業になる場合が多いので、年齢層も高いし、規模を広げていきたいという人は少ないんですよね。だから、多少手数料が引かれるとしても、JAに卸して手間なく安定収入が入るのであればそれでいいという考え方が主流になりがちです。直卸しがなかなか普及しないのは、そういった側面もあると思います。
 
 ―― なるほど。でも見方を変えると、流通の経路を変えれば収入も増えるし、規模も広げやすくなるってことですよね?
 
改さん そうですね。例えばほうれん草を出荷するには、葉の長さを揃えてパッケージ詰めする必要があります。実はその作業は収穫より手間がかかるので、規模を拡大しようとすると人手が必要になり、経費が単価に見合わなくなってしまうんです。
私は、その課題を解決するためには、分業がポイントになると思っています。農家は収穫だけして、パック詰めを外注するような形ですね。多少手取りは減りますが、その分空いた手を増産に回せばいい。そして、その外注先を川俣市内につくって、さらにその輪に他の農作物を育てている農家にも参加してもらえば、パック詰めを一年中発注できるようになります。つまり、安定的な雇用創出という副次的な効果も見込めるんです。そしてさらにその売り先を開拓できれば、JAに頼らなくても川俣町内だけで生産から流通までのサイクルを回せるようになるんじゃないかと思うんです。
 
 ―― すごい!そのプラン、すぐにでも実行に移せそうですね。
 
改さん それがなかなかそうもいかないんですよね…。

世代交代と環境の変化。農家が抱える課題とは

 ―― え、それはどうしてですか?
 
改さん 皆が同じ考え方をできればいいのですが、農地や牛は資産ですから、その持ち主の意見が異なれば簡単には動かせません。うちの農地と牛は祖父の持ち物なので、私が事業化しようとしても祖父が賛成してくれない限りはなかなか…。祖父は祖父で、自分たちがこれまで築き上げてきたやり方がありますから、簡単には下の代に譲れないという葛藤があるようなんです。
 
 ―― 世代間の考え方にも違いがあるんですね。
 
弘樹さん 私の場合も、祖父がミニトマトの育て方を教えてくれるのですが、昔ならではのやり方でこれまで育ててきた品種を育ててほしい、という考え方なんですよね。
もちろんそれがすべて悪いということではありません。祖父は私より経験もありますし、私もまだ祖父から学ぶべきことがたくさんあります。ただこれからは、温暖化や農作業の自動化が進むなかで、昔とは違う環境に対応していく必要があると思うんです。

農業を通して川俣の未来を見据えたチャレンジに挑む

 ―― ちなみに川俣町では町外から新規就農者を募集していますが、どうしたら希望者が集まると思いますか?
 
弘樹さん 前から思っていたのですが、収入面のアピールってあまりされていないですよね?たとえばアンスリウムをこの面積の土地で育てたら収入はいくらくらいになりますよ、みたいな事例を示してあげるのは、ひとつの手かもしれません。これからチャレンジしようという人にとっては、収入の安定は大きなポイントだと思うので。
 
改さん 兼業をアピールするのもひとつの方法だと思います。たとえば畜産業の場合は1日のローテーションってほとんど変わらないんですよね。ニンニクも、生鮮野菜と比べると融通が効くというか、明日全部収穫しなければいけないという性質の作物ではないので、作業計画を立てやすいんです。同じ農業でも品目によって特性が違いますから、自分のライフスタイルに合わせて選べると思うんです。町からもそういう情報をもっと出してあげるといいのではないでしょうか。
 
 ―― なるほど!現場からのご意見はとても参考になると思います。他に川俣の農業を盛り上げるアイデアがあればお聞かせください。
 
弘樹さん ご存知の通り川俣は平野が少ないので、大規模農業で単価を下げて収益を上げるといったやり方は難しいと思っています。なにかしらの付加価値の創出、たとえば川俣ならではの品種の生産や、川俣ハーベストのような消費者の方々へのアピールを続けていくことが大切だと思います。

イベントを通じてまちの人たちに生産物を知ってもらいたいと語る二人


改さん その日採れたての作物を詰めた「川俣ベジタブル」みたいなものを日替わりで都会のレストランに送る仕組みをつくってブランド化するのはどうでしょう?収穫スケジュールを管理する人、梱包する人といった形で分業すれば成立すると思うんです。あとは、首都圏で足りなくなる野菜に目星をつけて、増産を計画するみたいな。まとめ役が必要なので難しい部分もあるかもしれませんが、チャレンジする価値はあると思います。
 
 ―― 貴重なお話、ありがとうございました!これからのおふたりのチャレンジに期待しています!
 
おふたりのお話から、川俣の農業には高いポテンシャルがあるけれど、それを引き出すためには解決しなければいけないこともあるということがよく伝わってきました。
 
そんななかで、弘樹さんが、「川俣ハーベストのような生産者と消費者をつなぐイベントもこれから増やしていきたい」と語ってくれたように、川俣の農業も少しずつ変わろうとしています。
 
おふたりのような若い人がチャレンジできて、経験豊富なベテランの知恵が生かされて、私たち消費者も質の高い農作物を身近な場所で食べられる。そんな素敵な川俣農業の未来に、おおいに期待したいと思います!


関連動画YouTube公開のお知らせ

 新規就農希望者を対象に川俣町で実施した就農体験ツアーにご協力をお願いした路地栽培野菜生産者・Gファクトリーの本多さんとハウス栽培トマト生産者・Daiki Farm の遠藤さんに「福島県川俣町で新規就農の未来について聞いてみた」というタイトルで制作したインタビュー動画をアップしました。

今回の佐藤改さんと佐藤弘樹さんとのインタビューも合わせて、是非ともご感想をお寄せください!


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