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繊細な僕らが傷つかないための方法 #メンターだけどなにか質問ある?

僕が所属している若者のオンラインコミュニティ「 やさしいかくめいラボ」には、人生の先輩ともいうべき、素敵な「メンター」の方々がたくさん参加されています。

ラボで利用しているチャットアプリ「Discord」では、定期的にメンターの方々にラボのメンバーが質問することのできるイベントを開催しています。

それが3/20に第二回を開催した『メンターだけど、なにか質問ある?』です。

僕はこのイベントの運営チームの一人として、今回メンターの出演依頼などを行う幹事をさせていただきました。

今回、僕が出演をお願いしたメンターは、オンラインカウンセリングサービス「cotree」や起業家のメンタルサポートサービス「escort」を運営されている株式会社cotreeの代表である櫻本真理さんです。

今回のイベントでは、本当にたくさんのことを櫻本さんに学ばせていただきました。

この記事では、僕が今回櫻本さんから学ばせていただいたことを、ラボ外にも共有したいと思います。


僕が櫻本さんに出演依頼をした理由

やさしいかくめいラボには、多感で、繊細で、傷つきやすい若者が多いように見えます。

櫻本さんは、京都大学で進化心理学を学ばれ、現在はメンタルヘルスケア事業に取り組んでおられる、専門知識と実践の双方に通じたメンタルの専門家です。

だから今回の質問イベントを通じて、ラボのメンバーの傷や生きづらさに、櫻本さんの豊富な専門知識と経験に裏付けられた『答え』や『指針』を提供できれば有意義な時間になると思い、僕は今回、櫻本さんに出演を依頼したのでした。

......いや...すみません...。
正直に白状すると、僕自身が、傷つきやすい若者の一人として、櫻本さんから専門性に裏付けられた『答え』や『指針』をいただきたかった。

やさしいかくめいラボというコミュニティの力を借りて、櫻本さんに自分の悩みをご相談したかった、というのが本音だったのかもしれません。

被害妄想にどう対処するか?

僕の質問を引用します。

最近、「被害妄想」に悩まされることが多いです。
無名の起業家だからかもしれませんが、なんというか僕は過剰防衛的な熱っぽい言動をとってしまいがちです。
熱に浮かされている時は気にはならないのですが、熱が落ちつきシラフに戻ると、「相手に嫌われてしまったのではないか」とやたらと落ち込みます。
行動量を増やした最近は、わりと頻繁に落ち込みます。
櫻本さんは、「相手の心を考えて勝手に落ち込むこと」はありますか?
そんなときは、どのように自分のメンタルに対応していますか?

僕は、とくに自分の事業について話すとき、熱っぽくなり、我を忘れてしまいがちです。

早口になり、相手の話を遮ってまで自分の話をしてしまうこともあります(失礼なので、本当に治したい...)。

僕には熱が入ると、「そうそうそうそうそうそう!!」という妙な口癖があらわれるそうです。

この間、ベンチャーキャピタルの方に事業説明を行なっている時に指摘されて、初めて気づきました。
以前出演したPodCastを確認してみると、確かに熱が高まったときに、「そう」を連発していました。

「友達に話しているような印象を与えるから、治したほうがいいかもしれない」
やんわりと、そう諭されました。

まったくその通りだと思います。

熱に浮かれているときは、アドレナリンのおかげか、僕はこうした自分の『無能さ』に対する痛覚は麻痺しています。
反論できるだけの無神経さえ、持ち合わせています。

しかし、そんな化学的な魔法も、いつかは解けるときがきます。
ふとした瞬間に、熱が落ち着きシラフにかえると、自分の無能さが『恥』としてフラッシュバックして苦しめられるのです。

起業してから、人に関係する行動量は圧倒的に多くなりました。
そのおかげで、僕は自分のダメさを思い知らされることが多くなり、突如としてフラッシュバックする恥に傷つくことが多くなりました。

素人の雑な分類かもしれませんが、僕は、恥は『被害妄想』だと考えています。
無人島に自分しかいないのであれば、何をしても、僕らは恥を感じることはありません。
恥を感じるとき、僕らは必ず、『自分を評価する他者』を妄想します。

僕は、メンタルヘルスの専門家であると同時に起業家でもある櫻本さんは、こうした『恥』に対してどう対処してきたのか、僕はそれを知りたかったし、それによって自分が抱えている傷から救われたかったのでした。

意識の矛先はどこに向いているか?

櫻本さんの答えはシンプルでした。

被害妄想に悩まされるときは、矛先が目指す社会やビジョンではなく自分に向いてるとき。
本当は何を実現したい?っていうところにフォーカスを戻せるといいです
あるいは、「自分に矛先を向けてあげたい自分」にやさしくしてあげる

月並みな表現かもしれませんが、目からウロコでした。

言われてみれば、本当にその通りでしかないのだけれど、僕はその通りに気づくことができなかったし、その通りでしかないと腹落ちさせる櫻本さんの表現が、また見事です。

確かに僕は、自分の事業を語っているときに、恥を感じたことはありません。
目の前のことに意識の矛先が向いているとき、僕は恥に対して鈍感になっています。

恥に苦しめられるのは、恥をかいたそのときよりも、恥を振り返り、自分について考え、自分を評価しているときでした。
自分の意識の矛先が、自分自身に向いているときでした。

言い換えれば、僕が恥に苦しめられるときというのは、自分について考えられるだけの余裕があるときだけでした。
恥というのは、考え方によっては、余裕のある(言ってしまえば暇な)、幸せな悩みなのかもしれません。

だとすれば、恥から逃れるための方法も単純です。

自分の意識の矛先を、『恥を考えない状態に戻すこと』です。
僕の例で言えば、恥の苦しみから逃れる方法は、櫻本さんがいうように『自分が目指す社会やビジョン』や『自分が実現したいこと』に意識の矛先を向けることでした。

出版不況の現代に、読者に新しい価値を提供できる形で、作家が生き残るためのライフラインを実現する。
もし自分がそのまま漫画家を目指していとしても、生き残れる社会を実現する。
Ifの自分を救える世界をつくる。

それが僕のビジョンであり、目指したい社会であり、その社会を実現するための装置が僕であるとするなら、僕は恥に苦しむ必要はないはずです。

恥をかいても、それは僕の目指す社会に何も影響しないなら、傷に悩む必要はありません。

むしろ、自分が恥をかくことが、目指す社会に必要なことならば、積極的に恥をかいていくべきであるとさえ言えます。

企業には明確なビジョンとミッションが必要であると、よく言われます。
これは一般に経営の視点から語られることの多い主張ですが、
恥をかくことが多い経営者のメンタルヘルスの観点からも、ビジョナリーであることは重要なのではないでしょうか。

(...とはいえ、『ゆっくり落ち着いて話す』『相手の話の途中で口を挟まず、最後まで聞く』『失礼な口癖を治す』というのは、僕の2019年の抱負としていきたいですね...)

自分志向と外部志向

「意識の矛先をコントロールする」というのは、恥だけでなく、『緊張』の解消にも役に立ちます。

あるラボのメンバーの『人前や試験の前日に緊張して本来の力が半分も出せない事が多々あるのですが、どうすれば解消されますか?』という質問に、櫻本さんはこう答えました。

人前、緊張する!
わたし、社会人になって初めての社内プレゼンのとき、緊張しすぎて泣いた
でも最近は人前で喋るの楽しい
なぜかというと、「これ伝えたい!」と思ってるから、人が聴いてくれるのがとっても嬉しい
緊張するのは、
「伝えたい」よりも「失敗したくない・かっこいい自分でいたい」が勝ってるときです
試験もそうかもね「失敗こわい、優秀であらねば」
それよりも、ゲーム感覚で、「これ解けたらたのしいな!解けなくてもしょうがないけど!」でのぞむほうが人生いーじーである

すごく優しい回答です...。
とても学びが深い。

櫻本さんの回答だけでもとても学びが多いのですが、僕も少しだけ解釈を加えて、自分なりの学びを深めたいと思います。

思うに、私たちが何かに傷つくときというのは、意識の矛先が自分自身に向いているときなのではないでしょうか?

恥にせよ緊張にせよ、それを感じるときの意識の矛先を観察すると、それらがすべて『自分』に向いていることに気づきました。

逆に、そうした傷を免れるときの意識の矛先は、『目指す社会』であったり、『伝えたい相手』であったり、自分の外部に向けられています。

櫻本さんの話を聞いていると、
僕がプログラミングを学び始めたときのことを思い出しました。

プログラミングは、エラーとの格闘です。
プログラミングを学び始めた頃、僕はエラー画面が表示されるたびに「自分の知能」を嘆き、傷ついていた記憶があります。

しかし今となっては、僕はエラーが表示されても傷つくことはありません。
エラーが出ても、僕の意識の矛先は『自分の知能』には向かず、反射的に『エラーをどう解決するか』に向いてくれるからです。

僕らは傷つきやすい。
しかしそれは、自分にばかり意識が向いている、一種の自己中心性が原因にあるのであって、その意識の矛先を自分の外に向き直すことができれば、僕らは傷つかずに済むのではないか。

自分の意識の矛先を客観的に観察して、矛先が自分に向いていることに気づき、矛先を自分の外に向き直すことができれば、僕らは傷つかずに済むのではないか。

拙学ですが、『意識の矛先の修正』による心理療法効果には、科学的根拠があります。

ノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマンは、『適切に評価されれば、人々の世界に対する理解をもっとも向上させる科学的概念』として『焦点錯誤(Focusing illusion)』という心理学の概念を挙げました。

焦点錯誤とは、私たちが注意を向けているものを過大に重要視する認知バイアスです。
さらにいえば焦点錯誤によって、私たちは、自分が注意を向けていないものを相対的に重要性を低く評価することもわかっています。

『宇宙について考えると、自分の悩みがちっぽけに思えてくる』という表現を見たことがあるひとは多いと思います。

しかしそれは、その人が『宇宙に対して意識の矛先を向けているから』であって、それによって矛先が向いていない自分の悩みが過小評価されているからです。
逆に、自分の悩みに意識の矛先を向けているときは、焦点錯誤によって、宇宙なんてどうでもいい、と考えているはずです。

私たちは『意識の矛先をコントロールする』ことができれば、焦点錯誤によって、恥や緊張といった傷から自分の身を守ることができます。

そして、意識の矛先をコントロールするために必要なのは、『今自分の意識の矛先がどこに向いているか?』を客観的に観察する能力『メタ認知』です。

櫻本さんに曰く、メンタルヘルスでは、この自分の心理状態を客観的に分析するメタ認知がとても重要なのだそうです。

結論として、
恥や緊張に傷ついている人は、メタ認知をつかって自分の意識の矛先を観察し、その矛先が『自分志向』であったときは、『外部志向』に軌道修正する、というのはどうでしょうか。

そうすれば、焦点錯誤によって、あなたの恥や緊張は過小評価され、傷も浅くなるはずです。

意識の志向性を『自分』から『外部』に修正することで、傷つきやすい自分を守ることができるというのは、今回のイベントで櫻本さんから学べた一番の知見でした。

終わりに

櫻本さんの会社cotreeでは、escortという起業家向けのメンタルサポートサービスを行なっています。

このescort、起業家や投資家に大変好評らしいのですが、今回のイベントを通じてその理由がわかった気がします。

cotreeを成長させる上で気をつけていることとして、櫻本さんは「量だけにとらわれず、ちゃんと一人一人の問題を解決する」ことを意識していると答えていました。

その言葉通り、今回のイベントで櫻本さんは、ラボメンバーのすべての悩みに1つ1つ真摯に向き合い、答えられていました。

こうした櫻本さんの一人一人に向き合う姿勢が、人に受け入れられるサービスをつくるのだと、後輩起業家として学ばせていただきました。

櫻本さん、ご多忙の中、本当にありがとうございました!


櫻本さんに興味をもたれた方へ

3/28日、櫻本真理さんが参加されるイベント『居場所の未来』が開催されます。

他の登壇者は、CAMPFIREの家入一真さん、コルクの佐渡島庸平さん、臨床心理学者の東畑開人さんと豪華な面々です。

僭越ながら、わたくしかわんじも、司会として参加させていただきます。

この記事で櫻本真理さんに興味を持たれた方は、ぜひご参加ください!

必ずや楽しいイベントにします!



あなたの貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!