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ざっくりわかるオンラインコミュニティの重要性〜WE ARE LONELY BUT NOT ALONEを読んで〜

最近、『オンラインコミュニティ』や『オンラインサロン』という言葉をよく聞きませんか?

聞きますよね。

しかし、それらがどういった組織で、何を目指した組織なのか、おそらく多くの人たちがよくわかっていないのではないでしょうか。

あなたは、『オンラインコミュニティ』が一体どのような組織なのか、説明できますか?

ちなみに、僕は説明できませんでした。

ファンクラブなのか?
セミナーなのか?
宗教ではないか?という人もいます。

僕自身、「入江開発室」というエンジニアやデザイナーの集まるオンラインサロンでお世話になっています。
しかし、内部にいる人間だからといって、その環境をうまく言語化できるとは限りません。

くわえて入江開発室は、今年4月から始まったばかりの若いオンラインサロンで、現在は文化的にも過渡期にあるように感じます。
日々変化し成長しているとも言えますが、だからこそ、「自分たちのコミュニティはどこに向かうべきなのか?そもそもコミュニティはどうあるべきなのか?」に疑問を抱くこともありました。

最近、そんな僕の疑問を解決してくれる本に出会いました。

その本こそ、佐渡島庸平さんが書き、箕輪厚介さんが編集された『WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 現代の孤独と持続可能な経済圏』です。

...タイトルが長いッ!!!

ここはエンジニアっぽく、今後はこの本を『LBNA』と呼びましょう。

え〜っと...そう!
LBNAは、僕がオンラインコミュニティに対して抱いていた疑問を解決してくれる良書でした。

佐渡島庸平さんと言えば、『宇宙兄弟』や『ドラゴン桜』『働きマン』と言った大ヒット漫画を世に送り出した敏腕編集者で、現在は独立し、株式会社コルクを営む経営者です。

佐渡島さんは、2017年から『コルクラボ』というオンラインコミュニティを立ち上げています。

LBNAには、なぜ編集者である自分がオンラインコミュニティを立ち上げたのかや、またオンラインコミュニティを運営する中で得られた知見がまとめられています。

『オンラインコミュニティの解説本』としては、LBNAは今現在手に入る本の中で、もっとも良くまとまっている本なのではないでしょうか。

さて、学んだことは共有しようということで、今回の記事では、この本の中で解説されていた

なぜ今、オンラインコミュニティが重要なのか?

について、まとめていきます。

・オンラインコミュニティーに不信感を抱いている人
・オンラインコミュニティーを運営している人、しようと考えている人
・広大なネットの海で生きるクリエイター

に、ぜひ読んでいただきたいです。


なぜ今、オンラインコミュニティが重要なのか?

そもそもなぜ今、オンラインコミュニティーが必要とされているのか?

LBNAで語られたオンラインコミュニティのメリットには、ざっくり以下の三つがあります。

1,安心・安全の確保
2,情報のキュレーション
3,バズの最初の火を起こす

これらを一つずつ解説していきます。


安心・安全の確保

21世紀は、自由な時代です。

20世紀に比べて、個人の自由は格段に向上しました。

しかし、この世のすべての物事は『トレードオフ』です。

自由の美名の下に、犠牲になったものもあります。

それが、『安心・安全』です。

自由とは、イギリスの哲学者トマス・ホッブスの言葉を借りれば、『万人の万人に対する闘争』でもあります。

言論の自由・表現の自由は、ときに人を傷つけます。
SNSのタイムラインを見れば、炎上やクソリプという形でその具体例に触れることができます。

TwitterのようなオープンなSNSは、自由によって『安心・安全』が脅かされる好例であると本書では述べられています。

であればこそ、オープンなSNSの欠陥を埋める存在として、『クローズドなオンラインコミュニティー』は必要とされるのではないか、というのが著者である佐渡島庸平さんの仮説です。

そして佐渡島さんが希望を見出しているのは、『趣味でつながるクローズドなオンラインコミュニティ』です。

趣味で集まるクローズドなオンラインコミュニティならば、自由によって傷つけられず、心理的な安全を確保できるのではないか。

これはとても鋭い指摘ではないかと思います。

ハーバード大学が75年間に渡って行った調査によると、人間の幸福と健康にもっとも関係があるのは、家族や友人や『コミュニティ』との良好な関係だそうです。

従来のオープンすぎるSNSでは、コミュニティと呼べるほどの『帰属感』を得ることはできません。

しかし、佐渡島さんが提案する『趣味でつながるクローズドなオンラインコミュニティ』ならどうでしょうか?

たとえそれが『オンライン』であっても、安心や幸福をもたらす帰属感を得られるのではないでしょうか。

『SNS疲れのない、安心を感じることのできるクローズドなSNS』。

それが佐渡島さんの提案しているオンラインコミュニティの姿であるように、僕には読めました。

ちなみに実体験としても、確かに僕も「サービス開発」という共通の趣味でつながる入江開発室では安心を感じてもいるので、佐渡島さんはうまく言語化されたなと思います。

情報のキュレーション

現代は、情報社会です。

私たちは、20世紀とは比べものにならないほど大量の情報に触れなくてはならなくなりました。
そしてこの傾向は、これからどんどん加速していくでしょう。

総務省のデータによると、2020年までにインターネット全体の情報量は、2002年の6千倍にまで膨れ上がるそうです。
ちょっと想像がつかない規模ですね・・・・。

このような時代では、もはや情報は集めるよりも、受けとる情報をキュレーション(ふるい分け)し、減らしていくことが重要となっていきます。

そしてこの「情報のキュレーション(ふるい分け)」こそ、オンラインコミュニティのメリットであると、僕はこの本から学びました。

佐渡島さんが提案するオンラインコミュニティーは、『趣味など共通の価値観』に基づいてつながっています。

そして、そのコミュニティメンバーが『オススメ』する情報は、このコミュニティの中心にある価値観によってキュレーションされた情報です。

たとえば、僕の所属する入江開発室では、メンバーが見つけた『サービス開発に役立つ書籍や記事やツール』が頻繁に紹介されます。
また、メンバーの見つけたユニークなwebサービスなども頻繁に紹介されます。
(こうした情報を専門に取り扱うSlackチャンネルがあるのです。)

こうした情報は、僕一人では絶対にたどり着けない情報です。
つまり、入江開発室は、日々爆発的に増え続ける情報の海から、『サービス開発』という共通の趣味によって情報をキュレーションし、メンバーに提供しているのです。

LBNAで佐渡島さんは、『オンラインコミュニティは、個人の意思決定の数を減らす役割がある』と述べています。

あなたが大量の情報に触れるということは、その情報を信頼するかどうかあなたは大量に意思決定をしなくてはならないということです。
しかし、オンラインコミュニティが情報をキュレーションしてくれるなら、あなたはコミュニティを信頼することによって意思決定の数を減らすことができます。

「個人の意思決定の数を減らす?けしからん!!」と、個の信奉者の方々には怒られてしまうかもしれません。

しかし、ここまで膨大な情報に囲まれている現代では、情報をふるい分けして意思決定の数を減らし、いかに自分にとって本当に大事なことに集中するかは、極めて重要であると僕は思います。

Googleの経営者エリック・シュミットも『経営者は意思決定の数を減らすべきであり、自分が決定すべき問題と部下に決定を任せるべき問題の切り分けを行え』と述べています。

個人の経営でいうなら、現代では、『コミュニティにある程度の決定を任せながら、本当に自分が決定すべき問題と向き合うべき』なのだろうと、僕は思います。

オンラインコミュニティはそれを助ける『キュレーションメディア』になる。というわけですね。

バズの最初の火を起こす

さて、ここまでオンラインコミュニティのメリットとして、『安心・安全』『情報のキュレーション』という二つのメリットをご紹介しました。

しかし、オンラインコミュニティには、もう一つ、ビジネスサイドでのメリットもあります。

それは、『バズの最初の火を起こす』というものです。

情報が溢れるインターネット上では、良いコンテンツであるからといって、必ずしも広まるわけではありません。
以前下の記事でも紹介したように、バズを起こすためには、『コンテンツの質』と同じくらい、『流通経路の質』が深くかかわってきます。

このバズを引き起こす『流通経路』について、以前は曖昧な理解でしたが、この本を読んではっきりしたことがあります。

それは、流通経路の単位は『コミュニティ』であるということです。

LBNAの第4章では、オンラインコミュニティについて、佐渡島庸平さんと箕輪厚介さんの対談が載っています。

これがめちゃくちゃ面白い。

箕輪厚介さんといえば、『多動力』や『お金2.0』『人生の勝算』など数々のヒット作を編集した今もっとも勢いのある編集者で、自身も『箕輪編集室』というオンラインコミュニティを立ち上げています。

この対談の面白いところは、二人とも同じ編集者でありながら、まったく異なる哲学で自らオンラインコミュニティを立ち上げているところが一つ。

そしてもう一つは、バズに対してまったく同じ原理を見出しているというところです。

これについては、僕の説明を読むよりもまず、二人の掛け合いを読んでもらいたいです。マジ興奮しました。

佐渡島:
昔は本そのものを、日本人1億2000万人のコミュニティに投げ込んで、議論を起こせていました。小沢一郎氏の『日本改造計画』のような本はその典型です。しかし今では、国民的な議論を一冊の本で起こすのは難しくなった。だから、落合陽一さんの『日本再興戦略』を、一回NewsPicksアカデミアという小さなコミュニティに投げた後に、そこから徐々に広げていって、最後は日本全体に問いかけるという風に、なめらかに投げていくことが求められています。

箕輪:
そうしないと読者は見つけてくれないですからね。情報がありすぎるから、間違ったところに投げてしまっては、その本自体がなかったことにされる。
佐渡島さんの「なめらか」という言葉を、僕は無意識のうちに「輪っか」で捉えています。何かの本を売ろうと思ったら、たとえば箕輪編集室に広めて、次にHIUに広めて、NewsPicksアカデミアに広めて、コルクラボに広めて、といった具合に、コミュニティごとに輪っかを埋めていく感じです。
それぞれの輪っかには重なっている部分があって、その部分が熱くなっていると、だんだん世間も気づき始めてくる。すると書店さんやマスメディアにも広がり始めるから、さらに別の輪っかを埋めていく感じです。この戦略がない本は、今はどこにも刺さらず、発見されずに終わってしまう。運よくテレビに取り上げられれば、一時的に盛り上がるくらいです。

僕の言葉でまとめると、箕輪さんのいうように

もはや現代のコンテンツは、『質』の勝負に出る前に、『気づいてもらう』という勝負に勝ち抜かなくてはなりません。

そして、この『気づいてもらう』ための戦略として、佐渡島さんのいうように、

コンテンツを、複数のコミュニティになめらかに投げ込んでいくことが重要なのです。

日本全体にコンテンツを広めるよりも、コミュニティにコンテンツを広めるほうがはるかに容易です。

なぜなら、先ほど説明したように、良いコミュニティはそのものの機能として『信頼性の高いキュレーションメディア』であるからです。

例えると、日本全体にいきなりコンテンツを広めようとするのは、アポなしで飛び込み営業するようなものです。
初対面の人間が勧めるモノを、あなたは買いますか?買いませんね。

一方で、コミュニティーを通じてコンテンツを広めることは、趣味の似通った信頼できる友人たちからオススメされることです。
この場合、あなたは友人たちの勧める商品を買う可能性が高い。

科学的根拠が必要ですか?

後者が『友人たち』という複数形であることに気をつけてください。
私たちは、身の回りの複数の人々が『良い』というモノを『良い』と考える無意識の傾向があります。

この傾向は、心理学の専門用語で『社会的証明』と言います。

さらにいえば、社会的証明はある特定の条件下では、とくに大きな効果を発揮することがわかっています。

その条件とは、勧める人間と自分が『似ていること(類似性)』です。
人間は、『自分と似ている人間の意見』にとりわけ大きく影響されるのです。

さて、思い出してください。
佐渡島さんが期待しているオンラインコミュニティーとは、『同じ趣味でつながるオンラインコミュニティ』でした。
同じ趣味とは、明らかな『類似性』です。

そして、類似性のあるメンバーで構成されたオンラインコミュニティー内でコンテンツを広めるのは、心理学的にとても簡単なのです。

佐渡島さんと箕輪さんの理論は、この現象を『複数のコミュニティ』で引き起こすことで、最終的に『社会全体でバズを引き起こす』というモノです。

コミュニティの本質は『人』なので、完全に独立しているわけではなく、複数のコミュニティでまたがっている場合があります。
たとえば、僕の場合、入江開発室というエンジニアのコミュニティのメンバーですが、同時にちょっと前まで漫画家を目指していたこともあって、けんすうさんの主催する漫画サロンにも入っています。

人間の所属するコミュニティは、必ずしも一つではなく、またがっている場合が多いのです。

これが箕輪さんのいう「輪っか」の重なりです。

そしてこのまたがりの部分が増えれば増えるほど、他のコミュニティが巻き込まれ、バズが起こりやすくなる。

そして巻き込まれたコミュニティが多ければ多いほど、社会的証明によって、コミュニティ外にいる人々までが、バズに巻き込まれていく。

コミュニティというのは外部からはそれが存在しているようには見えない場合が多いので、コミュニティの外にいる人にとっては、ただ単に多くの人々が勧めているという現象しか見えないからです。

この辺りは、とても勘違いしやすいところです。

先ほど、僕がこの本を読んで学んだことは、流通経路の単位は『コミュニティ』であることだと言いました。

普通の人は、何かが急速にバズっても、それは『独立した個人たち』が引き起こしたモノだと考えがちです(僕も含めて)。

しかし実際のところ、そのバズは、部外者には見えにくい『コミュニティたち』が引き起こしたものでもあるのです。

そしてある二人の天才編集者は、この仕組みにいち早く気づきました。

編集者は、『作家が書き、自分が編集した本を届けること、バズらせること』が仕事です。

そして、バズという大火事が、『コミュニティ』を単位に延焼して発生するモノなら、最終的に大火事を起こすための『一番最初の火種』として、自身でもコミュニティを持っておいたほうがいい。
だからこそ佐渡島さんと箕輪さんは、本をバズらせる仕組みとして、自身でオンラインコミュニティを立ち上げたのです。

この点は、箕輪さんが具体例を交えてわかりやすく語っているので、引用します。

箕輪:
そこでは、必死に『多動力』を売っていこうとする中で、HIU(堀江貴文イノベーション大学校)のメンバーを巻き込むことを思いつきました。20人くらいに『多動力』のゲラを渡し、「電話をかけてくる人間とは仕事するな」といった、本に出てくるキャッチーなフレーズをスマホで撮影してもらい、ガンガンTwitterにアップしてもらった。
すると、本の発売前からバズを起こせて、発売後に圧倒的な初速で数字が伸びていった。そこで、堀江さんの本が売れるときは、まずは堀江さんを好きな層に火がつき、堀江さんの本は普段買わないけれどビジネス書は読む層に広がり、もっと広い読者層に延焼していく流れに気づいたのです。
そのときに重要なのは、最初の火を起こすところです。
堀江さんのファン層というコミュニティに着火することが肝でした。

だからこそ「僕自身が最初の火を起こすコミュニティを持っていたら最強なんじゃないか」と考え、6月に箕輪編集室を始めたのです。

バズにとって重要なのは、たとえ小さいコミュニティーであっても、そこで熱量高く広めてもらうことです。
コミュニティの熱量が高ければ、きちんと他の層にも延焼していきます。

僕は幸運にも、入江開発室でこの体験させていただきました。

僕の本の出版が決まったのは、上のツイートの記事を拡散いただき、記事に多くの「♡」をつけていただいたからでした。

その裏側には、入江開発室のメンバーの多くの応援と協力がありました。

上のツイートは一例ですが、本当に多くのメンバーに助けていただきました。
記事の拡散ツイートだけでなく、口コミで同じ会社の人に記事をすすめてくれた方までいらっしゃいました。

おかげで下の記事は100個以上の『♡』を獲得し、出版社の企画会議にも通り、晴れて本として出版できることになったのです。

このときは本当に、入江開発室に入って良かったと心底感じました。
そして、ネットは意外に暖かかったんだと思いました。

今は、この暖かさこそ、佐渡島さんのいうクローズドなオンラインコミュニティがもたらす『安心』だったのだと理解できます。

そして同時に、箕輪さんのいう『バズの最初の火』だったのだと理解しました。

オンラインコミュニティの重要性のまとめ

ここまで語ってきたオンラインコミュニティの重要性をまとめましょう。

オンラインコミュニティの重要性とは、以下の三つです。

1, クローズドなコミュニティによる『安心・安全』の確保
2,コミュニティの価値観による『情報のキュレーション』
3,他のコミュニティに延焼させてバズを発生させる『最初の火』を起こせること

どうですか?
オンラインコミュニティの重要性、おわかりいただけましたか?

もちろん、今回ご紹介したのはLBNAの中で、主に佐渡島さんと箕輪さんによって語られていたオンラインコミュニティであって、すべてのオンラインコミュニティを説明するものではないかもしれません。

しかし僕としては、この本で語られていたオンラインコミュニティこそ、これからの時代に重要になっていくものなのではないかと思います。

コミュニティと聞くと僕たちは、町内会のような、旧時代的な地域社会を思い出します。

しかし、この本で語られていたコミュニティは、それとは全く異なります。

・オンライン環境の発展
・オープンなSNSによる安全・安心の喪失
・情報の爆発
・情報過多によるコンテンツ流通の不全

こうした現代の環境に適応して台頭した、まったく新しいコミュニティの形です。

おもしろいっすね。ワクワクしますね。

あなたも、オンラインコミュニティに入ってみませんか?


佐渡島庸平(@sadycork)さんの運営するコミュニティ:

箕輪厚介(@minowanowa)さんの運営するコミュニティ:

入江慎吾(@iritec_jp )さんの運営するコミュニティ:

入江開発室でかわんじ(@kawanji01)が開発しているアプリ:


PS

今回の記事は、LBNAで語られた中の『オンラインコミュニティの重要性』にフォーカスして紹介したものですが、この本の中には、オンラインコミュニティの具体的な運営方法など、まだまだ興味深い情報がたくさん詰まっています。

オンラインコミュニティに興味のあるかたには、本当にオススメです。


この本を読み終わった人へ

本の内容についてテストを作ってあります。
本当に本の内容を理解できているか、確かめてみませんか?


あなたの貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!