通勤路1年目

ホームの端と端を繋ぐようにして
横の道路の人らを見下ろしながら
並走してさ
それだけで
かっこいい社会人ですかね
ですかね
そんなかっこわるい語尾じゃ
だめなんですかね

バスの時間までをこうやって
かっこつけたように勘違いして
かっこよさが約束されたような垢の他人が作ったありきたりな曲を
ただただ耳に

当てるだけ

歩くだけ

大人になっていた
なんにもない大人になっていた
なんでもない日々になっていた

都会で可憐に古着屋巡りをしていたはずのオシャレな女はここにはいなかった
どっかに旅してる女もここにはいなかった

どんどんお金だけが増えて
それ以外が腐ってって
叶えたつもりになっているこの理想も
きっとしょうもないんだ

歩くだけの大人になっていた
なんにもない大人がいた

働いているからこそ
自由があるんだよ
そんな馬鹿でも言えるような決まり文句を
自分が言うことになるとはな…
無理矢理ポジティブをなぞる

時間の端と端を繋ぐようにして
潰すだけの世界になっていた
目の前の月に包まれなくなったのも
きっと奪われた時間が狂おしく影響していて

どんどん汚くなっていく
浅はかになっていく
馬鹿になっていく
何かを経験して
失って
成って
成長していく

ほしくないほしくないほしくない

ほんとにほしいのは自由だったのに
縛り付けれる存在だったのに
でもみんなが働くから働くの
かっこわるいを遠ざけるために働くの

結局、
無意味に時間を犠牲にして待っていたそのバスには乗らずに歩いて帰ろ
中途半端な雨はそう諭す

傘すら持ってきてなかったとしても


2021/4/12

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?