川崎ゆきお

漫画家

川崎ゆきお

漫画家

記事一覧

落城

 岩見城は本城のすぐに近くにある。他にもそういう城がある。これは地形的なもので、本城は小高い山の峰にある山城。段々畑のように二の丸三の丸が並んでいる。本丸は峰の…

川崎ゆきお
13時間前
2

失敗を招く

「全ての準備は整った。あとは細かな変更はあるやもしれんが、これは上手く行く」 「下地ができていますからね。準備万端。備えあれば憂いなし」 「これ以上備えるものはな…

1

蜘蛛の糸

 たまには放置してみるのもいい。その気はなくても忘れていたり、必要ではなかったり、その用事や気持ちにならないことがあり、勝手に放置されてしまう。  中には気にな…

2

座主

 その大寺の座主は修行を積んだ人ではなく、さる高家から来た人。仏道にあかるいわけではない。それまでは身分が高いだけの人なので最初から高貴だが。  そのため大寺の…

5

探さないのに見つかる

 かなり以前からそこにあったのだが、高橋は知らなかった。探していなかったため。  目の前にサッと現れても気付かなかったかもしれない。意識を向けていないため。そう…

4

名聞

「なかなか思うようにはなりませんなあ」 「上手く行かぬから滅多にないこととして値打ちがある」 「この様子では沖田家は寝返る見込みはないかと」 「あの出城が欲しい。…

1

落ち着く

 禅僧だが、今は退き、縁者の商家にいる。坊主から商人に衣替えしたわけではないが、僧衣は着ていない。百姓家の年取った親父に見えるが、顔の割りにはまだ若い。  禅寺…

1

お大事に

「魔物の多くいる村ですか?」 「探しております」 「はて、魔物とは何を差すのでしょうか」 「妖しいもの」 「怪しいものならどの村にもいますが」 「ただの怪しさではな…

2

感覚

 田中は狩りをすることの方が楽しくなり、食べきれないほどになる。しかしその狩り、鳥や獣でなく保存が利く。  いくら狩っても置き場に困ることがないほど小さい。だか…

1

無事帰還

 島之内家の軍師はただの占い師で、戦いの前に家臣達も一緒に祈願する。そして即答で、勝利と出る。願いは叶うと。負けいくさなどいう罫はない。その中間も。全て必勝。空…

1

ノイズ

 最新テクノロリーでいろいろなことが分かってきたのだが、計測できるものは分かるが、そうでないものは間接的な計測になるらしい。  そのものは測れないが、それに影響…

川崎ゆきお
10日前
2

冴えない日ほど

 今日は天気も悪いし冴えない日なので、高田は大人しく、静かにしておこうと思った。  いつも、はしゃいでいるわけではないが、こんな日は動いてもろくなことはない。気…

川崎ゆきお
11日前
4

地味

「最近は地味好みですかな」 「ああ、そういうわけではありませんが、地味なものは落ち着けます」 「それは貴殿の好み、やりたいこととは違うような気がしますが、如何です…

川崎ゆきお
12日前
1

姫の人形

「筋者ならできると申すのじゃな」 「という噂でございます」 「姫の人形に呪いがかかっておるらしい。憑きもの落としに頼んだが、さっぱりじゃ。抜けん」 「三人ほどです…

川崎ゆきお
13日前
2

変化

 普段とは少し違うことがあると、その後の展開が変わってくるわけではないが、少しは変化する。ある変化がある変化をもたらすようなもの。  しかし、一寸した変化なら、…

川崎ゆきお
2週間前
2

冴えない日

 何となく冴えない天気の日だった。  曇っているためだろう。昨日までの暖かさがなくなり、少し肌寒い。昨日は暑いほどだったので過ごしやすい春の中頃。このまま初夏に…

川崎ゆきお
2週間前
2
落城

落城

 岩見城は本城のすぐに近くにある。他にもそういう城がある。これは地形的なもので、本城は小高い山の峰にある山城。段々畑のように二の丸三の丸が並んでいる。本丸は峰の端だが、さらに別の峰が細いながら続いており、そこから本丸などが全部見えてしまう。
 そのため、その峰にも城がある。これは砦のようなものだが、それなりに人数を詰めることができる。
 この城、敵の侵攻を受け、本拠地の城近くまで迫られた。籠城しか

もっとみる
失敗を招く

失敗を招く

「全ての準備は整った。あとは細かな変更はあるやもしれんが、これは上手く行く」
「下地ができていますからね。準備万端。備えあれば憂いなし」
「これ以上備えるものはないはず。打つべき手はずは全部打っておる。多少抜けていることもあるが、今までに比べれば完璧。しかし、アリの穴で土手が崩れることもある。まあ、そこまで考えることはないがな。万が一もある」
「まだ、心配なのですか」
「できすぎた用意のためじゃ。

もっとみる
蜘蛛の糸

蜘蛛の糸

 たまには放置してみるのもいい。その気はなくても忘れていたり、必要ではなかったり、その用事や気持ちにならないことがあり、勝手に放置されてしまう。
 中には気になりながらも、そのままになっていることも多い。
 しかし、急に思い出したように放置していたものにアクセスすると、変化していたりする。これはそのものも多少は変化するが、ほとんど放置していたときと変わらない状態。
 しかし触れる側の変化が加わるの

もっとみる
座主

座主

 その大寺の座主は修行を積んだ人ではなく、さる高家から来た人。仏道にあかるいわけではない。それまでは身分が高いだけの人なので最初から高貴だが。
 そのため大寺の座主に座っても堂々としたもの。これはお飾りの座主で、実際には大寺の運営にはあたっていない。
 そのため、暇で仕方がないというわけではなく、いろいろな行事の時は座っていないといけない。座っているだけ。
 だから座る人だと言われている。これは他

もっとみる
探さないのに見つかる

探さないのに見つかる

 かなり以前からそこにあったのだが、高橋は知らなかった。探していなかったため。
 目の前にサッと現れても気付かなかったかもしれない。意識を向けていないため。そういうものがあること自体知らない。知っているのは以前の知識で、非常に印象深かったので今でも覚えているのだが、思い返す機会は滅多にない。だから封印していたわけではないが、その後の流れで過去へ過去へすっこんでしまい記憶の彼方。
 そんな高橋だが、

もっとみる
名聞

名聞

「なかなか思うようにはなりませんなあ」
「上手く行かぬから滅多にないこととして値打ちがある」
「この様子では沖田家は寝返る見込みはないかと」
「あの出城が欲しい。沖田の城が手に入れば、あとは楽々。沖田の城がくさびじゃ。敵方が打ち込んだくさび。これは上手いところに出城を作ったものだと感心する。出城とはいえ難攻不落。落とせぬ訳ではないが、犠牲が多く出るだろう。無理攻めでしか落とせぬのでな」
「分かって

もっとみる
落ち着く

落ち着く

 禅僧だが、今は退き、縁者の商家にいる。坊主から商人に衣替えしたわけではないが、僧衣は着ていない。百姓家の年取った親父に見えるが、顔の割りにはまだ若い。
 禅寺では高僧に入った。それがある日、スッと辞めたのだ。上人になれる人が商人になったことになるが、商売をしているわけではない。母方の兄弟が店の主。その人はもう亡くなったので、その息子があとを継いでいる。
 この元禅僧、ただの居候だが、客人扱い。遊

もっとみる
お大事に

お大事に

「魔物の多くいる村ですか?」
「探しております」
「はて、魔物とは何を差すのでしょうか」
「妖しいもの」
「怪しいものならどの村にもいますが」
「ただの怪しさではない。人とは違うような在りよう」
「じゃ、獣の多い村ですかな。いくらでもそんな村はありますよ。まあ、村内にはいないでしょうが、裏山に入れば、それなりにいるかと」
「魔獣です」
「ただの獣ではないと」
「探しています」
「とんと噂は聞きませ

もっとみる
感覚

感覚

 田中は狩りをすることの方が楽しくなり、食べきれないほどになる。しかしその狩り、鳥や獣でなく保存が利く。
 いくら狩っても置き場に困ることがないほど小さい。だからいくら狩っても大丈夫なのだが、それを整理するのが大変。何処に何を置いたのか分かりにくい。ただ狩った順に並んでいるので、奥の方にあるのは以前狩ったもの。もう何を狩ったのかは忘れているのもある。
 それで奥の方を調べていくと、興味深いものが結

もっとみる
無事帰還

無事帰還

 島之内家の軍師はただの占い師で、戦いの前に家臣達も一緒に祈願する。そして即答で、勝利と出る。願いは叶うと。負けいくさなどいう罫はない。その中間も。全て必勝。空くじなし。必ず勝つと出る。
 これは景気づけのようなもので、鼓舞用。
 しかし勝つも負けるも戦ってみないと分からない。ただ、負ける戦はしないだろう。最初から。
 だから勝てると踏んだいくさだけをする。だからまず勝つ。勝つ確率の方が高い。敵も

もっとみる
ノイズ

ノイズ

 最新テクノロリーでいろいろなことが分かってきたのだが、計測できるものは分かるが、そうでないものは間接的な計測になるらしい。
 そのものは測れないが、それに影響されたものの動きなどは測れる。そういう動きが、あるかないかだけでも、測れないままよりも一歩進んだことになる。
 しかし、そのもの自体は謎のまま。他に与えている影響で調べるしかない。
 では昔の人はそんなことは知らなかったのかというとそうでも

もっとみる
冴えない日ほど

冴えない日ほど

 今日は天気も悪いし冴えない日なので、高田は大人しく、静かにしておこうと思った。
 いつも、はしゃいでいるわけではないが、こんな日は動いてもろくなことはない。気持ちも落ちているし、低気圧で頭も痛い。まさにろくな日ではない。
 では七の日があるわけではないが、ラッキーナンバーの七が来るかもしれない。しかし、ろくな日ではないので、その期待もない。
 仕事も上手くいっておらず、何とかならないものかと日々

もっとみる
地味

地味

「最近は地味好みですかな」
「ああ、そういうわけではありませんが、地味なものは落ち着けます」
「それは貴殿の好み、やりたいこととは違うような気がしますが、如何ですか」
「やりたいこと、好み過ぎたものは疲れます」
「でも、本当はそれを選びたいのではありませんか」
「そうなんですがね。気合いが入りすぎて疲れるのです」
「その疲労感が良いのではありませんか」
「程よい疲労感、疲れならいいのですが、それが

もっとみる
姫の人形

姫の人形

「筋者ならできると申すのじゃな」
「という噂でございます」
「姫の人形に呪いがかかっておるらしい。憑きもの落としに頼んだが、さっぱりじゃ。抜けん」
「三人ほどですか」
「ああ、三回やってもらったが、抜けん。やはり筋者でないと無理なのか」
「そのように伺っております」
「探し出して、来てもらえ」
「それがどこにいるのか、誰がそうなのかも分かりません」
「では、その方はどうして知っておる」
「我が領内

もっとみる
変化

変化

 普段とは少し違うことがあると、その後の展開が変わってくるわけではないが、少しは変化する。ある変化がある変化をもたらすようなもの。
 しかし、一寸した変化なら、しばらくすると普段通りになる。普段からやっていることの続きへ。
 しかし、ある変化により、普段見えなかった断面のようなものが見えたりする。それは常にあったのだが、その方角から見ていなかったり、または気付かなかっり。
 これも大したことではな

もっとみる
冴えない日

冴えない日

 何となく冴えない天気の日だった。
 曇っているためだろう。昨日までの暖かさがなくなり、少し肌寒い。昨日は暑いほどだったので過ごしやすい春の中頃。このまま初夏になり、暑くなるはずだが、今朝は気温の上昇は一休みで、逆に涼しい。
 それはいいのだが、竹田も冴えない。いつも冴えているわけではないので、そんなものだろう。晴れておれば空元気も出るのだが、今日は大人しいというよりこれで平常のよう。
 本来の竹

もっとみる