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過去を受け入れて生きる~幼少期に憧れたものを思い出した「キャプテン・マーベル」~

 開始早々、スタン・リーへの愛と敬意を感じさせられ、もう映画が始まる前から胸がいっぱいになった。
 
 キャプテン・マーベルは、昨年の「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」の最後に呼ばれていた。きっと、この後への希望になるはずだと、当時はワラにもすがる思いで「キャプテン・マーベル!!」と思っていた。
 どうやらキャプテン・マーベルは強いらしいよ。……くらいしか知らなかったけれど。
 
 幼少期、憧れていたものを思い出す。6歳頃の私が何になりたいと思っていたか。

 ワタクシ、野球の審判員になりたかったのです。

 しかも主審です。

 でも、あれは男の人の職業、と聞いて諦めちゃいます。女性がなれるとしても、その後も持ち続けた夢とは思わないけれど、それを「女性だから」と思って諦めるのと、自分でもっと違うものを求めて諦めるのとでは違う、と思う。

 男の人の世界で女の人が活躍していることに憧れがあったけれど、それはきっとニュージャージーに住んでいたって生半可な精神力ではできないだろう。あらゆる屈辱や苦痛、孤独感に耐えてそれをはねのける心と、自分が開拓するんだという気持ちがなくてはならない。それは「男性社会で対等に渡り合える」力を身に着けていなければならないということ。本当は、それぞれの違いを認め合いながら「男性社会」ではなく「男女が共に生きる社会」の中でそれぞれの良さが発揮されていくはずなのに。多様性、LGBTなど言われているけど、私たち女性は、男性から求められるもの、そして上の世代から求められるものに応えて生きてきてしまった。それは自分に降りかかるというよりは、次の世代に降りかかるものとして、今一度よく考え直さなければならない

*以下、ガッツリとネタバレあります。

 「キャプテン・マーベル」は、そんな幼少期に抱いた気持ちを思い出させ、考えさせてもくれる。性を感じさせない、女性である前に人間であるということ。セクシーなシーンもなく爽快。ニック・フューリーとは、とても自然な友情関係を築いている。
 ただ彼女も、女性が故に抑えられてきたところは、その記憶に積み重ねられている。さらには自分を鍛えてくれていると思っていたクリー人の軍人たちも、実は自分を制御すべくコントロールしていた。感情的になることは良くないとされた。女の人はよく言われますよね「感情的過ぎる」ということを。「‘だから’女性はダメ」なんだということを。

 キャプテン・マーベルであるキャロル・ダンバースは、過去の自分を思い出すことが、弱さなのだと言われて暮らしている。記憶にないけれど過去と何かつながるのではという夢を見て眠れないことがあると、薬をのめと言われる。戦闘のトレーニングで、気持ちを少しずつ発散させるようにしている。
 しかし。

 人の心について少しは知識のある人ならわかるだろう。「思い出さないようにすることが自分を強くするのではない」ということ。思い出さない方が良いこと、自分が落ち着けるのであればそうすれば良い。だけど、それにとらわれて苦しいのであれば、過去を受け入れて、時にはわかった上で記憶を塗り替え、乗り越えていかなければならない。 

 彼女は倒れる度に、「女性なのだから」と周りに抑制することを求められた。でも大事なことは「その度に立ち上がってきた」。この心の強さが、記憶と共に蘇るところは、胸が熱くなる。きっと完全ではないが、親友のことも思い出した。

 ところでこれは、1995年くらいの話。
 夫がニュージャージーに住み始めた頃。96年には私がニュージャージーに行って、暮らしを始める。夫との仲を取り持ったパソコンの存在が懐かしい。カリカリカリカリと音を立てて、ゆっくり画面が出てくる。砂時計がくるくる回る。
 時系列で言えば、アベンジャーズはまだ結成されていない。シールドのニック・フューリーに、まだ貫禄はなかった。フィル・コールソンはまだ新人だった。
 ここから、ニック・フューリーがアベンジャーズの必要性を感じて、超人的な人たちを集めようと頑張り始めるのだ。トニー・スタークの言うように、「敵は宇宙からやってくる」ことを、ニック・フューリーはこのころからもう知り、心配していたということだ。

 「インフィニティウォー」の最後で、呼び出されたキャプテン・マーベルは、すぐに来たようで、「エンドゲーム」につながる場面として、ブラック・ウィドウやキャプテン・アメリカたちと対面する。
 ただキャプテンマーベルが、宇宙で敵戦艦を一気にズドーン! なんて強い姿を見せられたら、シールドの皆さんの、なんと原始的な攻撃なのか。ホークアイが弓矢を引いてシュンシュンやっているのなんて、可愛いものではないか。いえ、みんな強いんですけどね!! わかっていますけどね!!! キャプテンマーベルが常軌を逸していて、すご過ぎるんです。あらゆる呪縛から解放されたキャプテン・マーベルは、もうアホみたいに強い。

 彼女が「戦いを終わらせる」のを信念にしている、というようなことを口にするシーンがある。次のMCUでやってくる「エンドゲーム」を思わせる発言で、しっかりと心を掴まれました。


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