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前を向いて、少しずつ

 22歳になる夏。幼少期に育ったアメリカニュージャージーの地を15年ぶりに踏んだ。

 私は確かにここで暮らしていたんだ。実感すると、苦しくなるほど胸がいっぱいになった。

 またここで暮らして、失った自分を取り戻したい。

 強い思いが湧く。

 心配する両親を説得しなければならない。
 認めてもらおうと、渡航費用のために働いた。
 辛い気持ちを抱えきれない時は、車を20分ほど走らせて空港の展望デッキに立った。仕事でいやな思いをした時。不安でいっぱいの時。失恋した時。飛び立つ飛行機を見て元気をもらう。何度も。


 そして歳月を経てからやってきた、出発の時。

 両親は、空港まで見送りに来てくれた。笑顔で別れ、姿が見えなくなった途端に涙が溢れる。寂しい。だけじゃない。親の思いを感じる程度には大人になったのだろうか。

 自分の気持ちに戸惑いも感じながら、前を向いて搭乗口へ向かった。


#旅する日本語   #途立つ #エッセイ

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。