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コインランドリーの思い出

 令和になって一週間が経ちましたね。
 平成最後の日の夜、皆さんはどんな気持ちだったでしょうか。私は「洗濯機―! センタッキガー! こわれたー!!」と、タオルや雑巾や衣類と格闘していました。
 令和最初の朝は、どんな気持ちで迎えましたか。私は目覚めるなり、「ああそうだ。洗濯機が壊れたんだった。修理頼まなくちゃ」と思っていた。
 
 何故、夜に壊れた洗濯機と向き合っていたのか。

 その日は夫も休みで、二度目の「アベンジャーズ / エンドゲーム」に臨むところだった。のんびり起きたものの、映画の時間に間に合わせるために出かけたいから、少々バタバタ。洗濯機の「糸くずフィルター」という文字が点滅していることを知り、「前回掃除してからそんなに経っているっけ?」と思いながら後回しにして、外出するための準備をしていた。糸くずフィルターが点滅している時は、たいていフィルターを掃除したら元通り。
 なのに糸くずフィルターを出そうと思ったら、水がじょぼじょぼとそこから出てくる。慌てて拭いて、水を少しずつ出し、ホースと繋がった床の排水口にある接続部分も取り出し洗う。床の排水口も掃除する。洗濯機の脱水を押す。やはり止まる。水が流れずたまってくる。

 ダメだ。

 時間がない。

「エンドゲーム」に間に合わない。夫も息子も仕度ができて、そわそわ待っている。
 洗濯物がすごく気になるけど帰ってからやり直しだ。もうその時点で遅れ気味だったので、慌てて出かけた。

 何度もここで書いているが、映画館が市内になく、東西南北、どこの映画館に行くにしても山越えが必要だ。その日行く映画館は片道2時間見ておかなくてはならない。ゴールデンウィーク中で混んでいるだろうから、さらに多めに予定時間を組む。食事時間にもかかるからそれもプラス。しかも「エンドゲーム」は3時間。帰宅したら夜になる。

 帰宅後、また洗濯機との格闘が始まった。何度か試してみて、やっぱりその度に水がたまり、水を自分ですくい取っていく。脱水がまったくできず洗濯物はずぶ濡れなので、手で絞り、室内に干す。それを繰り返して疲れ果てて寝た。

 翌朝、修理依頼の電話をしたのだけど、いつ来てくれるかその後に連絡があると言う。修理に来てからも、部品の調達なんかがあって日数かかるかもしれない。洗濯物がたまるかもしれない! 息子が「あー出すの忘れてたー」と、遅れて出した体操着もある。
 心配になってきて、夫とコインランドリーに行くことにした。

***

 夫とコインランドリーに行くのは、実に20数年ぶりのこと。

 ニュージャージーに住んでいた頃、デートの最初は度々コインランドリーだった。私は友人と別の日に行っていたので、夫一人分の洗濯。一人分なら週に一度行くくらいで間に合う。仕事のある夫は、週末しか行く時がないのだ。一緒にコインランドリーに行き、洗っている間に買い物など用事を済ませ、乾燥機に入れたら仕上がるまでそこで待ったり、お茶でも飲みに行ったりする。

 ある日は、洗濯を済ませて衣類を乾燥機に入れる時、夫のパンツを手に取ったら、それがブルーに可愛い白の小花柄。「こんなの履いてるんだー」とニヤニヤしながら横にいる夫にパンツ広げて見せたら。

 隣りにいたのは、知らない男の人だった。

 若い外国人男性は、いきなりアジア系の若い女子がニヤニヤしながらパンツ広げて見せてきたものだから、さぞかし気持ち悪かっただろうと思う。

 彼の真顔は、忘れない。
 
 そう言えば、出張の多い夫はよくホテルのコインランドリーを利用するそうだが、ある日うっかり洗濯物を入れる前に作動させてロックされてしまい、洗濯物をまだ手にしたまま、カラの洗濯機が回っている様子を呆然と眺めていた経験があるらしい。あまり失敗をしない夫なので、その話を聞いてようやく夫が私に追いついてきたようだなと感じ、ニヤニヤが止まらなかったことを思い出す。

***

 「コインランドリーの思い出は色々あるねえ」
 そして、コインランドリーの乾燥機の威力はすごいねーなんて言いながら二人で洗濯物をたたみ車に乗り込むと、業者から電話があり「すぐに行けます」と言う。

 結局、洗濯機から床の排水口につながるホース側がめちゃくちゃ汚れていて詰まっていただけだった。
 ああどうしてそちら側に気が付けなかったのか、私。
 洗濯槽の汚れ落としを、けっこうな長期間、怠けていた。あの掃除は、洗濯槽だけでなく、ホースの洗浄にもなるんですね。

 掃除したら、すぐに水は流れ落ち、無事洗濯ができるようになりました。洗濯機のありがたさをかみしめつつ、コインランドリーで懐かしい思い出に浸り、ちょっぴり楽しい思いもできた。

 そんな令和一日目。
 今日も順調に洗濯機は動いている。

#エッセイ #思い出 #洗濯機 #コインランドリー #平成最後の日 #令和最初の日

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。